エボラウイルス病 - コンゴ民主共和国(更新5)

Disease outbreak news: 更新    2018年11月22日

コンゴ民主共和国における進行中のエボラウイルス病(EVD)のアウトブレイクを封じ込めることは複雑で困難な仕事ですが、WHO(世界保健機関)は、保健省(Ministry of Health)およびパートナーと協力してアウトブレイクをうまく封じ込められることを依然として確信しています。
2018年11月16日に、武装集団は、国連エボラ対応要員の住宅に近い、ベニ(Beni)市のボケネ(Boikene)地区の国際連合コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)の拠点を攻撃しました。ベニにおけるエボラウイルス病に対する取り組みは一時的に中断されましたが、予防接種を含むすべての活動は11月18日に再開されました。 WHOは、エボラウイルス病のアウトブレイクを管理するために続けられている努力に不可欠な平和維持部隊に対する攻撃を非難します。 WHOは、状況と関連するリスクを引き続き評価し、取り組みの従事者と民間人を守るための対策について警戒を続けていきます。
保健センターは疾病の感染源として特定されています。注射による薬剤投与は、感染の顕著な原因でした。現行の取り組みは、清潔にするための水と製品を提供すること、非公認の保健センターにおいて保健医療従事者を訓練すること、注射を必要としない治療の提供を奨励することを含む、感染予防・管理(IPC)対策の改善に焦点を当てています。
報告期間中(11月14日~20日)に、ベニ、ムトワンガ(Mutwanga)、カルングタ(Kalunguta)、ビュトンボ(Butembo)、カトワ(Katwa)、オイチャ(Oicha)から36人の新たなエボラウイルス病確定例が報告されました。一方同時にカルングタから7人のほぼ確実な症例が報告されました。新しい症例のうち7人は新生児および2歳未満の乳幼児であり、6人は2~17歳の子供であり、1人は妊娠した女性でした。ベニとカトワの5人の保健医療従事者が新たに感染しました。 39人の保健医療従事者が現在までに感染しています。 10人の生存者がベニ(6人)とビュトンボ(4人)のエボラ治療センター(ETC)から退院し、地域社会に再統合されました。 113人の患者が現在までに回復しています。
11月20日時点で、219人の死亡者(確定例172人、ほぼ確実例47人)を含む386人(確定例339人、ほぼ確実例47人)のエボラウイルス病感染例が北キブ州の11の保健区域とイトゥリ州の3保健区域から報告されています(図1)。週毎の感染例の全体的な発生傾向は北キブ州の複数の都市と村で感染伝播が続いていることを反映しています(図2)。症例発見と進行中のデータ調整作業において予想される遅延を考えると、とくに最近の週の傾向は慎重に解釈されなければなりません。
コンゴ民主共和国の他の州ならびに近隣諸国にアウトブレイクが拡散するリスクは非常に高いままです。過去1週間をとおして、ウガンダとザンビアでエボラ警報例が報告されましたが、エボラウイルス病はすべての警報について今日までに除外されています。

図1:2018年11月20日時点でのコンゴ民主共和国北キブ州とイトゥリ州の保健区域におけるエボラウイルス病確定例とほぼ確実例(n = 386)



図2:2018年11月20日時点までに発症した週ごとのエボラウイルス確定症例とほぼ確実例のデータ(n = 382)*



*発症年月日は4 例については不明。 ここ数週間のデータは、症例の確定と報告、継続中のデータクリーニングにおける遅延の影響下にあります。この期間中の傾向は慎重に解釈する必要があります。

公衆衛生上の取り組み

保健省は、WHOおよびパートナーの支援を得て、対応策を強化し続けています。 優先課題は、対応の調整、サーベイランス、接触者追跡、検査室の能力、感染予防・管理(IPC)、患者の臨床管理、予防接種、リスクコミュニケーションと地域社会の関与、心理社会的な支援、安全と尊厳のある埋葬(SDB)、近隣の州および国における国境を越えたサーベイランスと準備活動の調整を含みます。 保健省を支援するために、WHOは、近隣諸国を含むエボラウイルス病への対応、研究、緊急準備のために、幅広い多部門および多分野において地域と世界のパートナーおよび利害関係者と集中的に取り組んでいます。
WHOとパートナーによる公衆衛生上の取り組み活動についての詳細な情報については、WHOアフリカ地域事務所によって発行されている最新の状況報告書(situation report)、エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国をご覧下さい。

WHOのリスク評価

エボラウイルス病のこのアウトブレイクは、ウガンダ、ルワンダ、南スーダンとの国境を接するコンゴ民主共和国の北東の州に影響を与えています。エボラウイルス病伝搬の国レベル、地域レベルの潜在的なリスク要因は、影響を受けている地域と同国の他の地域や隣国間の交通、国内避難民、近隣諸国へのコンゴ難民の流出を含みます。同国は、他の流行(例えば、コレラ、ワクチン由来のポリオ、マラリア)、および長期の人道的危機を同時に経験しています。さらに、北キブ州とイトゥリ州の治安状況は、時には対応活動の実施を制限しています。アウトブレイクに対するWHOのリスク評価は、現在、国レベルおよび地域レベルで「非常に高い」になっています。世界的なリスクレベルは低いままです。 WHOは、現在利用可能な情報に基づいて、コンゴ民主共和国へのいかなる旅行の制限や貿易の制限をしないよう引き続き助言しています。

国および地域への拡大のリスクが非常に高いため、近隣の州と国にとってサーベイランスと準備活動を強化することが重要です。国際保健規則(IHR 2005)緊急委員会はこれらの準備活動とサーベイランス活動を強化することに失敗すればより悪化した状況とさらなる拡散をもたらすであろうと助言しました。WHOは、近隣諸国およびパートナーと引き続き協力し、保健当局が警戒状態にあり、エボラウイルス病に対応するように運用上準備されていることを確かなものにします。

WHOからのアドバイス

国際交通:現在利用可能な情報に基づいて、コンゴ民主共和国へのいかなる旅行および貿易の制限に反対するようWHOは助言します。現在、エボラウイルスから人々を守るためのワクチンは認可されていません。したがって、エボラワクチン接種証明書の要件は、国境を越えた移動やコンゴ民主共和国を離れる乗客のためのビザの発給を制限するための合理的な基盤ではありません。 WHOは引き続き厳密に監視し、必要に応じて旅行および貿易措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との間の国際往来を著しく妨げる旅行措置を実施した国はありません。旅行者は旅行前に医師の助言を受け、良好な衛生健康法を実践すべきです。

(註1) 進行中の再分類、後ろ向き調査、検査結果の入手可能性のために症例数が変更されることがあります。

出典

Ebola virus disease - Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news: Update   22 November 2018 [WHO]

参考