エボラウイルス病 - コンゴ民主共和国(更新22)

Disease outbreak news:更新   2019年5月16日

治安状況は予想外の落ち着いた状態へと穏やかに沈静化しつつありますが、エボラウイルス病(EVD)の感染は今週報告された100以上の確定症例と共に北キブ州とイトゥリ州で激化し続けています。

症例の継続的な増加を生じさせている主な要因は、危機的な状況にあるホットスポットエリアへのアクセスの妨げとなる地域社会の貧弱な受け入れと対応活動への参加に対する躊躇、ならびにエボラウイルス病症例の発見の遅れとエボラ治療センター(ETCs)またはトランジットセンター(TCs)への提示の遅れです。

特に懸念されるのは、これらの要因の集大成としての地域社会における死亡です。地域社会における死亡は、エボラ治療センターやトランジットセンターの外で死亡したすべてのエボラウイルス病(確定および高度疑い)症例を意味します。これには、自宅で死亡した場合だけでなく、公立/私立病院やその他の医療施設で死亡した場合も含まれます。平均して、地域社会における死亡は毎週報告された症例の約40%を占めます。この割合は毎週変動し、2月の71%という最高値を記録した後、4月の初めから28%から43%の範囲で変動しています。現在サーベイランスシステムにて記載されている総死亡者数(1147人)のうち、約3分の2(68%)がエボラ治療センター外で発生しています。 エボラ治療センターに到着した患者の多くは、予後不良で重症であることがしばしばで、入院後すぐに死亡します。これらの症例は症候性であり、死亡するときもその後も感染性が高いままですが、地域社会の中でより多くの時間を費やしてきたため、地域社会における死亡もまた重大な感染リスクをもたらします。そして家族や医療従事者などの地域社会の他のメンバーにエボラウイルス病を伝播することになります。

エボラウイルス病の症例が増え続けているにもかかわらず、7つの主要なホットスポットエリアであるカトワ(Katwa)、マバラコ(Mabalako)、マンディマ(Mandima)、ビュトンボ(Butembo)、ミュジャンエーネ(Musienene)、カルングタ(Kalunguta)、およびベニ(Beni)で感染伝播が最も激しいままであることに注意すべきです。まとめると、これらの保健区域は、2019年4月24日から2019年5月14日までの過去21日間に報告された350例の大部分(93%)を占めています(図1および表1)。今週、アリムボンゴ(Alimbongo)の保健区域でもカトワから派生した症例への関連がある新しい症例が報告されました。現在の感染伝播パターンはまた、ホットポットの保健区域から発生し、以前に感染が止まっていた地域にウイルスを再導入した場合に生じる問題も描き出しています。この期間中、これまでに被害を受けた22の保健区域のうち18の区域内の91の保健地域から新たな症例が報告されました(図2)。

5月14日の時点で、合計1739件の確定および高度疑いエボラウイルス病症例が報告されており、そのうち1147人が死亡しました(症例の致死率66%)。性別および年齢が記録された全症例のうち、56%(974人)が女性であり、30%(514人)が18歳未満の子供でした。り患した医療従事者の数は102人に増加しました(全症例の6%)。 エボラ治療センターで治療を受けたエボラウイルス病患者のうち、459人が退院しました。

リスクコミュニケーション及び地域社会を関与させる活動チームは、生存の可能性を高めるために医療施設で早期にケアを求めることの重要性についてのメッセージを広め続けています。これらのメッセージは、り患した個人が症状の発症後、より頻繁かつより迅速にエボラ治療センターに報告してきたベニにおいて特に効果的です。リスクコミュニケーションと地域社会を関与させる活動チームは、平和的な合意を確実に達成するために、地域社会レベルでの躊躇と抵抗の事例を仲裁するのに役立っており、そして予防接種、感染予防と管理(IPC)、安全で尊厳ある埋葬(SDB)のようなエボラ対応の他の柱において、それぞれの対応活動の実行が可能になるうえでも手助けになりました。
大部分の主要な対応活動の再開を考えると、今後数週間の間に症例数の増加がホットスポットエリア内で継続することが予想され、それはより多くの症例の検出につながるでしょう。最近見られた感染率の増加は、エボラウイルス病がコンゴ民主共和国の他の近隣州および周辺国に広がるリスクが高まっていることを示し続けています。

図1:2019年5月14日時点の保健区域別エボラウイルス病症例の週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*

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*ここ数週間のデータは、ケースの確認と報告、および継続的なデータのクリーニングが遅れることがあります。その他の保健区域には、アリムボンゴ(Alimbongo)、ビエナ(Biena)、ブニア(Bunia)、カルングタ(Kalunguta)、カイナ(Kayna)、コマンダ(Komanda)、キョンド(Kyondo)、ルベロ(Lubero)、マングルジパ(Mangurujipa)、マセレカ(Masereka)、ムトワンガ(Mutwanga)ニャンクンデ(Nyankunde)、オイチャ(Oicha)、ルワンパラ(Rwampara)、およびチョミア(Tchomia)が含まれます。

図2:2019年5月14日時点でのコンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州の保健地域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例

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表1:2019年5月14日時点のコンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州における保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、および影響を受けた保健地域の数**


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**過去21日間に発生した症例と地域の合計は、最初の症例警報の日付に基づいており、確定日および保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。
 

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、およびパートナーによる公衆衛生上の取り組み活動に関する詳細情報については、WHOアフリカ地域事務局によって公表された最新の状況報告書を参照してください。
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国

WHOによるリスク評価

WHOは、疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に監視して、対応への支援が進展する状況に適応していることを確実なものにします。直近の評価では、国内および地域のリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論付けられました。 2019年2月下旬以降、毎週新しい患者の増加が続いています。全般的な治安状況の悪化と、政治的緊張と治安不穏によって悪化した地域社会の不信に基づく躊躇や拒絶、そして抵抗を示す孤立地帯(ポケット)が存続しています。特に過去4週間、アウトブレイクの影響を受けている地域において繰り返される一時停止と症例調査および対応活動の遅延により、介入の全体的な有効性が低下しています。しかし、最近の地域社会との対話、アウトリーチ構想、および特定のホットスポットエリアへのアクセスの回復により、地域社会による対応活動および症例調査の取り組みに対する受け入れが改善されました。確定症例のうち報告される地域社会の中で死亡する症例の高い割合、サーベイランス下で接触者が知られている新規症例の割合が比較的低いこと、院内感染に関連する感染伝播連鎖の存在、症例発見とエボラ治療センターにおける隔離の持続的遅延、ならびに高度疑い例に対する適時報告と対応における困難さは、アウトブレイクの影響を受ける地域社会でのさらなる感染連鎖の可能性を高め、コンゴ民主共和国内および近隣諸国へのエボラウイルス病の地理的拡大のリスクを高めるすべての要因となります。アウトブレイクの影響を受けている地域から、コンゴ民主共和国の他の地域へ、そして不安の高まりの間に穴だらけの国境を越えて近隣諸国へと人口移動が頻繁に起こることで、これらのリスクはさらに高まります。現在のアウトブレイクの長期的な発生、対応スタッフの疲労、および限られた資源に対する継続的な負担によって、新たなリスクが生じます。反対に、優先医療施設での医療従事者や現場作業員の予防接種を含む、近隣諸国での実質的な即応体制の整備および準備活動は、症例を迅速に検出して地域への蔓延を軽減する能力を高めている可能性が高いのです。現時点でこれらの努力を拡大し続ける必要があります。

WHOからのアドバイス

WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。現在のところ、エボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動や、コンゴ民主共和国を離れる乗客に対してビザ発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との間の国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生慣習を実践すべきです。

出典

Ebola virus disease - Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news: Update  16 May 2019
https://www.who.int/csr/don/16-may-2019-ebola-drc/en/