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記事番号 20070409-0809
タイトル インフルエンザ-研究:米国軍基礎訓練兵でのインフルエンザワクチン効果、2005年〜2006年シーズン,
記事日付 2007/04/09 重要度 C
国名 研究 感染症名 インフルエンザ
概要 米国軍基礎訓練兵の事実上全員が季節性インフルエンザワクチンの接種を受けている。2005年12月から2006年3月に採集したサーベイランスデータが、6カ所の米国軍基礎訓練センターでのインフルエンザワクチン効果を評価するため解析された。検査によって診断確定されたインフルエンザに対するワクチン効果は92%(95%信頼区間:85%〜96%)であった。
和文
Dispatch:
米国軍基礎訓練兵でのインフルエンザワクチン効果、2005年〜2006年シーズン。

著者:Remi N. Charrel (Universite de la Mediterranee、マルセイユ、フランス)。

要旨:
米国軍基礎訓練兵の事実上全員が季節性インフルエンザワクチンの接種を受けている。2005年12月から2006年3月に採集したサーベイランスデータが、6カ所の米国軍基礎訓練センターでのインフルエンザワクチン効果を評価するため解析された。検査によって診断確定されたインフルエンザに対するワクチン効果は92%(95%信頼区間:85%〜96%)であった。

近い将来大きな被害をもたらすインフルエンザ汎流行可能性に対する公衆衛生上の懸念が広く認識されている。サーベイランス活動が世界中で増しており、こうした汎流行に対する準備に、多大な時間と予算が傾注されている。非軍関係者ではワクチン接種率が非常に異なり、インフルエンザ診断は必ずしも検査によって確定されるわけはないので、検査によって確定された診断結果に基づく季節性のインフルエンザワクチン効果研究は稀である。しかし、局地で感染循環しているインフルエンザウイルス株がワクチンによる免疫をかわすというエビデンスは、早期検知および介入にとって重大であるかもしれない。加えて、軍関係者での汎流行株新興が記録されている。大規模な1918年〜1919年のインフルエンザ汎流行に先立つ1918年春季中、最初に記録されたインフルエンザ感染事例はカンザス州Fort Riley基地の新兵で発生した。1976年には、ユニークなインフルエンザウイルス株(H1N1)が、ニュージャージー州Fort Dixで感染を引き起こし、死亡患者1名が発生したほか、このワクチンに含まれないウイルス株の感染拡大が懸念された。詳細なサーベイランスが可能で、ワクチン接種率が高い軍関係者は、季節性インフルエンザワクチンの効果を評価する有用な対象であり、その調査結果は世界的な汎流行に対する準備に役立つと考えられる。

研究の概要:
国立保健研究センター (NHRC) は、1996年に軍訓練センターでの熱性呼吸器疾患三軍サーベイランス(tri-service surveillance)を開始した。1999年までに、このサーベイランスネットワークは米国内の最も規模の大きい軍基礎訓練センター8カ所に拡大された。サーベイランスには、熱性呼吸器疾患の症例定義(口腔内体温100.5°F [38.0°C]以上および咳嗽または咽頭痛)に合致し(研究参加に)同意した米国軍訓練兵からの咽頭拭い検体や臨床データ(性別、誕生日、症状、インフルエンザワクチン接種状況、接種されたワクチンの種類、ワクチン接種日は必ず含まれる)の計画的な採取が含まれる。検体は、ウイルス培養と分子生物学的解析のためにNHRCにある海軍呼吸器疾患研究所に送付されるまで、各地で-70℃で保管された。サーベイランス参加施設の研究担当者は毎週熱性呼吸器疾患で診療を受けた訓練兵の人数とその施設内の全訓練兵数を報告し、こうした疾患の感染率が計算される。

2003年〜04年のインフルエンザシーズン中、研究チームは、米国軍基礎訓練兵での検査で診断確定されたインフルエンザとさまざまな病因による熱性呼吸器疾患を予防する上でのインフルエンザワクチン効果を評価得するために、この進行中の能動的サーベイランスからのデータを利用できる機会があると考えた。2003年〜04年シーズンのインフルエンザワクチン効果は、ワクチン成分と感染循環株が一致しなかったため、低いのではと懸念されたが、同ワクチンはそのシーズン中に検査で診断確定されたインフルエンザ感染に対して優れた予防効果(94.4%)を示した。季節性インフルエンザワクチンの効果評価は、現在汎流行インフルエンザ株に対して準備を強化している最中であるため、重要である。従って、研究チームは2004年〜05年と2005年〜06年シーズンについても同様の解析を行った。

昨年の秋・冬季中、全ての兵役中軍関係者は季節性インフルエンザワクチン接種を求められ、この施策は訓練センターでの厳密に実施された。到着時に、全ての新任訓練兵は、義務的インフルエンザワクチン接種(注射による3価不活化インフルエンザワクチン(FluZone, Sanofi Pasteur, Lyon, France)か、弱毒化生インフルエンザワクチン(CA-LAIV) (FluMist, MedImmune, Gaithersburg, MD, USA).鼻腔内スプレー)を受ける。

この解析に当たって、ワクチンによる感染予防は接種後14日目に開始されると仮定した。それゆえ、8週間の訓練計画では、免疫が獲得されるまで14日かかると仮定すれば、どの時点でも訓練兵の25%は「ワクチン未接種」と考えられた。同様に、6週間の訓練計画では、どの時点でも訓練兵の33%は「ワクチン未接種」と考えられた。この仮定から、ワクチン効果計算時に「接種」者および「未接種」者・週数(person-weeks)に対する分母データが推定できる。

2006年1月から3月の間、基礎訓練のために到着した全新入訓練兵はインフルエンザワクチンの接種を受けた。在所の訓練兵はすでに接種が完了していた。この解析観察期間は、2006年1月1日〜3月31日とした。しかし、センター2カ所、Naval Service Training Command (海軍訓練部、五大湖)および Marine Corps Recruit Depot (海兵隊新兵部、サンディエゴ) は、2005年12月までにワクチン接種を完了していた。従って、これらの施設については、12月が観察期間に含まれた。観察期間中の新兵訓練での総人数・週数は、各訓練センターから直接入手した。ワクチン効果は、以下のように検査で診断が確定したインフルエンザと様々な病因による熱性呼吸器疾患の両方に対して計算された:
100 × (1 - 相対リスク = 1 - [接種群での感染率]/[未接種群での感染率])。

観察期間中、8カ所サーベイランス施設の内6カ所でインフルエンザ活動性が観察され、この研究の対象に含められた。対象となった479,181 人・週数(person-weeks)の中で、6施設から熱性呼吸器疾患患者4,052例が報告され、患者722例がこのサーベイランス研究に登録された(咽頭拭い検体、症例データおよび同意を含む)。検体70例(9.7%)が、培養または分子生物学的検査で陽性と確認された。

検査で診断確定されたインフルエンザ感染率は、患者が3例しか発生しなかったジョージア州Fort Benningを除く全施設で、未接種訓練兵での方が高値であった。全体で、米国軍訓練兵でのインフルエンザワクチン効果は、2005年〜06年シーズンについては92%(95%信頼区間:85.4%〜95.6%)であった。検査で診断が確定されたインフルエンザに対するワクチン効果は、過去3回のいずれのシーズンにおいても、高かった(範囲:86%〜94%)。検査で診断確定されなかった熱性呼吸器疾患に対するワクチン効果はそれより低く、2005年〜06年シーズンの-10%から2004年〜05年シーズンの52%であった。

結論:
今回の解析から、2005年〜06年インフルエンザワクチンは、検査で診断確定されたインフルエンザ感染から非常に効果的に米国軍訓練兵を感染予防したことが示唆された。さらに、以上のデータから、3価不活化ワクチン注射とCA-LAIV鼻腔内スプレーは同等に有効であることが示唆された。その理由は、サンディエゴにあるMarine Corps Recruit Depot (海兵隊新兵部)は訓練兵ほぼ全員にCA-LAIVでワクチン接種を行い、同施設でのワクチン効果は95%(その他の施設でのワクチン効果は90%)だったからである。

以上の効果推計は、それらの結果を仮説無効に偏向させると予想される(すなわち前提条件をより厳格にした)追加的な解析結果によっても、支持された。例えば、免疫応答まで7日間という仮定で解析が行われたが、同様の結果が得られた。すなわち、ワクチン効果は92%から90%へとわずかに変化したのみであった。研究チームはまた、各時点で訓練兵のワクチン接種率が10%低下したと仮定して解析したが、計算されたワクチン効果は87%に低下しただけであった。

検査で診断が確定されたインフルエンザに対するワクチンの一貫した高い効果とは対照的に、病因不定の熱性呼吸器疾患に対する効果ははるかに低く、シーズン毎に変動した(2003〜04年では13.9%、2004〜05年では 52.1%、2005〜06年では -10%)。この2005〜06年シーズンでワクチン効果が非常に低いのは、対象者の多くがアデノウイルス感染に罹患したためである可能性が高い。また効果を引き下げたもう一つの要因は、アデノウイルス感染が訓練の第2週以降も引き続き発生する傾向があったことである。病因不定の熱性呼吸器疾患に対するワクチン効果が低かったことは、検査によって診断が確定されたインフルエンザに対する高いワクチン効果の推定を裏付けている。もしデータ(測定・採集に)バイアスが存在したなら、両方の推計値が影響されたはずである。

軍関係者、特に基礎訓練兵はワクチン接種率の高い集団として、季節性インフルエンザワクチン組成の有効性に関して重要な情報を提供しうる。ワクチン組成と感染循環するウイルス株の双方が毎年変化するため、インフルエンザワクチン効果はシーズン毎に評価するべきである。インフルエンザ汎流行が差し迫っているとの懸念が高まりつつある中、信頼できる精密なインフルエンザサーベイランスが重要である。現存のサーベイランスネットワークによって、この解析で使用した方法を今後も毎年繰り返して使用できる。そうすれば、一般市民社会に対するインフルエンザワクチン効果への貴重な推計も得ることができるであろう。




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