デング熱

流行地

デング熱は蚊が媒介するウイルス性の熱性・発疹性疾患です。ここ10年で劇的に感染が拡大し、アフリカ、北・中南米、地中海東部、東南・南アジアおよび西太平洋地域の北緯30度から南緯30度にかけての熱帯・亜熱帯地域100か国以上で報告されています。
全世界で年間約1億人が発症、うち約25万人が重篤な症状(デング出血熱)をきたしていると推測されており、最近では特に東南アジア諸国、インド、ブラジル、メキシコ等で患者数が多くなっています。我が国では近年は国内での感染例はなく、毎年数十~百例の輸入感染例が報告される程度でしたが、2010年に244例、2012年には220例が報告されており、うちそれぞれ18例及び20例は当所で確認されています。渡航先の拡大や旅行形態の多様化、ヒトスジシマカ分布北限域の拡大にともない、将来的には国内でも流行する危険性も指摘されています。

感染経路

ネッタイシマカやヒトスジシマカが媒介し、ウイルス保有の蚊に刺されることにより感染成立します。直接的なヒト-ヒト感染はありません。

潜伏期

通常4~7日ですが、ときに2週間後に発症することもあります。

症状

急な発熱、頭痛、全身の筋肉・関節痛、眼窩(とくに眼球後部)痛が出現、3~5日で解熱傾向となり、全身の発疹がみられることもあります。
重篤な症状として、出血症状や胸水、腹水などがあり(デング出血熱)、死亡する場合もあります。とくに15歳以下の小児では多くみられる傾向にありますので、注意が必要です。

治療法

特異的な治療法はなく、対症療法が中心となります。出血傾向を助長するアスピリンの服用は避けてください。

予防等

特に日中は媒介蚊の吸血活動時間帯となりますので、防虫スプレー、蚊取り線香などの使用や服装面での注意など充分な防蚊対策をおこなってください(デング熱は都市部でもみられます)。
ワクチンはありません。デング熱を媒介する蚊は国内にも生息しています。感染拡大予防の観点から、感染が疑われた場合には、発熱後10日間は蚊に刺されないように注意してください。

2013年1月 更新