腸管出血性大腸菌感染症

病原体

大腸菌は、家畜やヒトの腸内にも存在し、そのほとんどは害がありません。
しかし、中にはヒトに下痢などの症状を引き起こす大腸菌があり、病原性大腸菌と呼ばれます。病原性大腸菌は約170種類ありますが、そのうちベロ毒素を産生し、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こすものは‘腸管出血性大腸菌’と呼ばれ、代表的なものはO(オー)157、O26、O111などです。重症化するものの多くはO157です。

流行地

全世界で発生しており、北米・欧州など先進国でも、加熱が不十分な肉からの感染例が報告されています。

感染経路

飲食物を介する経口感染がほとんどで、菌に汚染された飲食物を摂取するか、患者の糞便で汚染されたものを口にすることで感染します。O157は感染力が強く、通常の細菌性食中毒では細菌を100万個単位で摂取しないと感染しないのに対し、わずか100個程度の菌数の摂取で発症するといわれています。

潜伏期

通常の細菌性食中毒の潜伏期間が数時間から3日程度であるのに対して、病原性大腸菌感染症は4~8日と長いのが特徴です。

症状

臨床症状は、無症候性から軽度の下痢、激しい腹痛、頻回の水様便、さらに、著しい血便とともに重篤な合併症を起こし死に至るものまで様々です。多くの場合は、感染して4~8日間の無症状の期間を経て、激しい腹痛をともなう頻回の水様便の後に血便が出現します(出血性大腸炎)。発熱は軽度です。血便の初期には血液の混入は少量ですが、次第に増加し、やがては血液そのものという状態になります。患者の6〜7%では、発症数日後から2週間以内に、溶血性尿毒症症候群、または脳症などの重症な合併症が発症する場合があり、HUS を発症した患者の致死率は1〜5%とされています。

治療法

安静、水分の補給、抗菌薬・乳酸菌製剤の投与などです。

予防等

腸管出血性大腸菌は75℃で1分間加熱すれば死滅します。食品は十分に加熱し、調理後の食品はなるべく早く食べ切りましょう。二次感染予防として、適切な食品衛生管理や、十分な手洗いを心がけましょう。

2014年1月更新