レプトスピラ症(ワイル病)

流行地

レプトスピラ症はレプトスピラ菌による急性熱性疾患です。全世界で発生しており、とくに熱帯・亜熱帯地域に多くみられます。近年、ブラジル、ニカラグアなどの中南米、フィリピン、タイなどの東南アジアなどで流行がみられています。わが国でも、1970 年代前半までは年間50 名以上の死亡例が報告されていましたが、衛生環境の向上などにより患者数(死亡者数)は著しく減少しました。しかし、現在でも沖縄などで散発的な発生が認められています。

感染経路

レプトスピラ菌は保菌しているネズミ、イヌ、家畜などの哺乳動物の尿から排泄され、土壌や水を数週間にわたり汚染します。このため、土壌、水、保菌動物と接触した際に、皮膚や粘膜から体内に菌が侵入することで感染します。大雨や洪水のあとは、汚染水がうっ滞したり、ネズミと接近する機会が増えるなどにより、感染の危険性が高くなるため注意が必要です。まれですが、尿などを介したヒトからヒトへの感染の報告もあります。

潜伏期

通常は5~14日(まれに~3週間)です。

症状

レプトスピラ症は、感冒様症状のみで軽快する軽症型から、黄疸、出血、腎障害を伴う重症型(ワイル病)まで多彩な症状を示します。潜伏期を経て、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、腹痛、結膜充血などが生じ、発症後4~6日目頃に黄疸が出現したり、出血傾向も強まります。特異的な症状がないため初期診断は困難です。軽症型の予後は一般的に良好ですが、ワイル病では早期に適切な治療がなされない場合、死亡率は20~30%です。

治療法

抗菌薬の投与が治療の主体となります。

予防等

レプトスピラ症の流行地域では不用意に水に入らないこと、特に洪水の後には絶対に入らないことが重要です。どうしても水に浸かる必要がある場合は、ゴム長靴やゴム手袋などを着用しましょう。予防ワクチンが開発されていますが、接種可能な施設は限られています。抗菌薬(ドキシサイクリン)の内服も予防効果がありますが、長期間の服用は奨められません。

2014年1月更新