海外感染症情報 (NO.28)
平成22年4月6日
関西空港検疫所
パンデミック・インフルエンザ(H1N1)の流行状況について(3)

201041日――328日までに、213カ国以上の国々や地域でのH1N1新型インフルエンザ確定例(少なくとも17483例の死亡例を含む)が報告された。

新型インフルエンザの感染は、アジアの熱帯地域、アメリカ大陸、アフリカで活発に続いている。北半球および南半球の温帯地域の多くでは、インフルエンザの活動性は低いままである。しかし、新型インフルエンザウイルスは優勢なウイルスとして世界中に蔓延している。B型インフルエンザウイルスは東アジアで優勢なウイルスで、東南アジア、西アジア、東アフリカ、北欧と東欧の一部の地域でも低いレベルではあるが検出されることが多くなってきている。A/H3N2型インフルエンザウイルスは、ごく少数アジアの一部とオーストラリアで検出されている。

東南アジア:タイでは感染は活発に続いているが、ピークは越え、減少傾向に入った。マレーシアでは新型インフルエンザの新規患者報告が続いている。インドネシアでは最近新型インフルエンザ感染の報告はないが、低いレベルながら季節性インフルエンザ(H3N2)やB型インフルエンザウイルスによる感染が検出されている。ミャンマーでは2月からかなり感染は減少してきた。

南アジア:バングラデシュを除き全般に新型インフルエンザの活動性は低いままである。バングラデシュでは2月下旬から地域的に拡大し、同症の新規患者が増加している。インドは西部地域で、低いレベルの流行が続いている。

東アジア:新型インフルエンザの活動性は全般に低いまま、一方で季節性B型インフルエンザウイルス感染が地域全体で増え続けている。中国ではインフルエンザ様疾患の活動性は劇的に減少したが、ここ数週間の呼吸器系検体の約2030%からインフルエンザが陽性となっており、そのうち85%以上はB型インフルエンザウイルスだった。モンゴルではB型インフルエンザウイルスによる感染活動性が減少し続けている。日本と韓国では新型インフルエンザウイルスによる感染が減少し続けるにつれ、インフルエンザ様疾患罹患率が基準値近くまで低下している。季節性B型インフルエンザウイルス感染は、香港、日本、韓国、台湾、フィリピン、タイ、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、オーストラリアなどで低いレベルで流行している。また、少ないながら季節性インフルエンザ(H3N2)ウイルスも東アジア、東南アジア、オセアニア地域、特にインドネシアとオーストラリアで検出されている。

北アフリカと西アジア:新型インフルエンザウイルス感染は低いレベルで持続している。イランでは、最近新型インフルエンザウイルスは検出されていないが、季節性B型インフルエンザウイルスが低いレベルで検出されている。

サハラ以南アフリカ:最も活発なのは西アフリカと東アフリカの一部の地域である。特に東アフリカの中でもルワンダとタンザニアの限られた地域で感染伝播が持続している。新型インフルエンザウイルスは東西アフリカで活動している主なウイルスだが、その他にも季節性インフルエンザ(H3N2)ウイルス、同H1N1ウイルス、季節性B型インフルエンザウイルスも少数ながら検出されている。

アメリカ大陸熱帯地域:インフルエンザの活動性全般は低いままだが、多くの国々の限られた地域で様々な活動性を呈している。グアテマラ、ニカラグア、エルサルバドル、パナマ、ブラジル、ボリビアからは、3月の少なくとも1週間、新型インフルエンザウイルス感染による呼吸器疾患が増加傾向にあると報告された。新型インフルエンザの活動性が限局的に増加したことは、いくつかの国における学校での集団感染と関連している。一方で、他の呼吸器疾患が同時に流行していることにもよる。新型インフルエンザウイルス感染がこの地域でもっとも活動的なのはブラジルである。メキシコではいくつかの州で新型インフルエンザウイルスの感染伝播は3月中限局した地域で続いているが、インフルエンザ全体の活動性は秋のインフルエンザシーズンに見られたピークレベルまでは増加しなかった。

南北アメリカの温帯地域では、新型インフルエンザ感染やウイルス蔓延のレベルは低いままである。アメリカでのインフルエンザ様疾患の活動性は、季節性の基準値を下回っているが、3/10の地域で再びインフルエンザ様症状の活動性は各地の基準値を超えた。最近、最も感染が活発な地域はアメリカ南東部で、特にアラバマ州、ジョージア州、南カリフォルニア州で、州の一部の地域でインフルエンザ感染が拡がっている。重症の新型インフルエンザ確定例と関連した上昇がアメリカ南東部でここ数周間報告されている。カナダでは、インフルエンザ様疾患の活動性は季節性の基準値を下回ったままだが、散発的に新型インフルエンザウイルスは検出されている。

ヨーロッパでは、新型インフルエンザウイルスは特に南ヨーロッパと東ヨーロッパで、低いレベルだが蔓延している。呼吸器疾患患者の検体からインフルエンザ陽性となる割合は4.6%と低いままである。ラトビア、リトアニア、ブルガリアの3国で、呼吸器疾患の活動が上昇している。しかし、この傾向は新型インフルエンザの検出率との相関はない。季節性のB型インフルエンザウイルスが、シベリアとロシア極東で蔓延し始めており、イタリアとスウェーデンでは、低いレベルではあるが、新型インフルエンザウイルスが蔓延している。

(平成22年4月1日 WHO情報)