海外感染症情報 (NO.35)
平成22年4月23日
関西空港検疫所
パンデミック・インフルエンザ(H1N1)の流行状況について(5)

416日現在、世界中214以上の国や地域から17798例以上の死亡例を含む新型インフルエンザの確定症例が報告されています。

現在、インフルエンザが最も流行している地域はアメリカの熱帯地域・西アフリカ・東アジア・東南アジアです。新型インフルエンザの世界的流行は続いていますが、その一方で東アジアでは季節性のB型インフルエンザの拡大が続いており、アジアのその他の地域やヨーロッパでも低いレベルではありますが検出されています。季節性H3N2インフルエンザはアジア・東ヨーロッパ・東アフリカ、とくに最近ではインドネシア・タンザニアからの報告が目立っています。少数の季節性H1N1インフルエンザはロシア・中国北部から先週報告がありました。

東アジアでは新型インフルエンザの活動性は減少し続けており、かなり低いレベルになっています。現在、インフルエンザ様症状に関与しているウイルスは主に中国・モンゴル・韓国で拡大を続けているB型インフルエンザウイルスです。韓国は活動性のある呼吸器疾患においてはB型インフルエンザが主に関連しており、新型インフルエンザの関与は少ないと報告しています。中国ではB型インフルエンザウイルスに関連した急性呼吸器感染症の流行が報告されていますが、いずれも新型H1N1との関連はないとのことです。全体的な呼吸器疾患の流行状況は20072008年および2008-2009年の同時期とほぼ同様です。中国北部では少数の季節性H3N2と散発的な季節性H1N1ウイルスが検出されました。モンゴルではインフルエンザ様疾患の数は減少を続けており、それらはB型インフルエンザ単独でした。

南アジア・東南アジアにおいて、最もインフルエンザが流行している地域はタイとシンガポールです。新型インフルエンザが主流ですが、少数のB型やH3N2インフルエンザも共に流行が見られます。全体的に感染拡大は相対的に低下しています。タイでは呼吸器疾患は先週以降減少してきています。インフルエンザ様疾患患者の4%と肺炎での入院患者の2.6%から新型インフルエンザウイルスが検出されました。マレーシアではジョホール・パハン・マラッカの3州で呼吸器疾患のアウトブレイクが時折報告され続けています。マラッカ州だけは新型インフルエンザの確定症例を報告しており、うち4例は集中治療を要しました。インドではほとんどの州で新型H1N1の発生は少なくなっていますが、西インドでは少数ですが新型H1N1の流行が報告され続けています。

ヨーロッパでは、新型インフルエンザの流行は最近1週間で減少を続けており、全ての国においてかなり低い流行となっています。患者からの検体でインフルエンザ陽性であったのはわずか5.4%に留まっており、B型インフルエンザがA型インフルエンザより多く検出されています。イタリアでは半数の検体(14例中7例)がインフルエンザ陽性でしたが、全て季節性B型インフルエンザウイルスでした。

アメリカ北部の温帯地域では、全体的な新型インフルエンザ流行は少数に留まっており、いくつかの地域ではかなり低い流行レベルとなっています。南半球の温帯地域では、呼吸器疾患自体の流行が少ない状態です。

アメリカの熱帯地域では、局地的にインフルエンザの感染拡大はありますが全体的なインフルエンザの活動性は低くなっています。最新の報告では、キューバでわずかに新型インフルエンザの確定例が増加しています。メキシコでは、メキシコ市周辺において新型インフルエンザの局地的な流行は続いていますが、全国的にはかなり少ないと報告されています。ペルーでは、とくに5歳以下の子供においてここ2週間で肺炎の報告数が増加していますが、原因ウイルスの情報はありません。他の年齢層においてはとくに増加は見られず、インフルエンザ以外の原因の存在を示唆しているかもしれません。この2週間で、とくにブラジル北部においてインフルエンザ様症状の報告が増加しています。

アフリカ北部では呼吸器疾患の流行は少ないとの事です。サハラ以南のアフリカや西アフリカでは新型インフルエンザウイルスの集団感染が見られており、現在のところガーナで主に感染拡大が起こっています(すべての検体中45%が新型インフルエンザ陽性)。少数ですがセネガルやニジェールでも感染が見られています。セネガルでの新型インフルエンザウイルスの感染拡大はおよそ1ヶ月前にピークを迎えたとされていますが、ギニアでは今になって新型H1N1の第一例目が報告されました。東アフリカでは、ルワンダで新型インフルエンザの感染が見られていますが減少傾向にあります。先週、少数の季節性のH3N2型とB型インフルエンザがルワンダ・ケニア・南アフリカで検出されました。とくにタンザニアで季節性インフルエンザH3N2の著しい感染拡大が最近報告されています。南アフリカでは呼吸器疾患や新型インフルエンザの増加は未だ認められていません。

南太平洋のバヌアツやナウルでは、今週になって呼吸器疾患の増加が報告されています。しかし、新型H1N1ウイルスであるとは確定診断されていません。

南半球の他の温帯地域、オーストラリアやニュージーランドではインフルエンザの流行は少ないですが、大部分が新型H1N1か散発的な季節性インフルエンザウイルスです。

(平成22年4月16日 WHO情報)