海外感染症情報 (NO.37)
平成22年4月30日
関西空港検疫所
パンデミック・インフルエンザ(H1N1)の流行状況について(6)

2010423日現在、世界中214以上の国や地域から17853例以上の死亡例を含む新型インフルエンザの確定症例が報告されています。

現在、新型インフルエンザが最も流行している地域はアフリカ西部・中部ですが、東南アジア・中米では今もなお感染が発生し続けています。北・南半球温帯地域では新型インフルエンザの活動性は低いままです。季節性B型インフルエンザは多くの地域でますます検出数が増えており、今では東アジア・中央アフリカ・北ヨーロッパ・東ヨーロッパにおいて主に流行しているインフルエンザウイルスとなっています。中米でも少数ですがB型インフルエンザウイルスが検出されています。季節性H3N2型は南アジア・東南アジア(主にインドネシア)でまだ検出され続けており、西アフリカや東ヨーロッパのいくつかの国々においても散発的に報告されています。

ヨーロッパでは、ほとんどの国において呼吸器疾患の報告数が少なくなっており、検体のわずか6.8%がインフルエンザ陽性です。今週になってB型インフルエンザの検出数がA型インフルエンザを超えました。東ヨーロッパにおいて、季節性H1N1H3N2型の散発的な検出が報告されていたことに注意が必要です。

東アジアでは、新型インフルエンザの検出はかなり少なくなっています。現在、中国・モンゴル・韓国におけるインフルエンザ様疾患は主にB型インフルエンザによるものです。中国では全体的なインフルエンザの報告数は減少しており、今週は新型インフルエンザの報告はありません。モンゴルではB型インフルエンザの流行が続いていますがピークは超えています。韓国では過去数週間、B型インフルエンザの流行に関連した呼吸器疾患の増加が報告されています。少数の季節性H1N1型およびH3N2型のインフルエンザも散発的に報告され続けています。

南アジア・東南アジアにおいては、最も新型インフルエンザが流行している地域はマレーシア・シンガポール・タイです。その地域においては新型インフルエンザが主な流行株ではありますが、シンガポール・タイ・インドネシアにおいてはH3N2型やB型インフルエンザも共に流行が見られています。シンガポールでは先週インフルエンザ様疾患と急性呼吸器感染症が増加しましたが 流行閾値以下に留まっています。インドネシアは他の国々とは対照的に、主な流行インフルエンザウイルスはH3N2型で、B型や新型インフルエンザの検出は少数です。マレーシアでは先週と比べ大多数の州においてインフルエンザ様症状による呼吸器疾患の増加が報告されました。バングラデシュでは少数ですが新型インフルエンザ報告数のわずかな増加が見られ続けています。

アフリカ北部では、呼吸器疾患の流行は少ないとのことです。サハラ以南のアフリカでは、アフリカ西部において新型インフルエンザの集団感染が続いています。セネガルでは感染拡大は2月にピークを迎えましたが、ガーナでは感染は減少していますが活動性は続いています。コートジボアールとニジェールでは呼吸器疾患の増加が報告されていましたが、ウイルス学的データはありませんでした。アフリカ中部では、少数ですがカメルーンで新型インフルエンザの報告が続いています。さらに、アンゴラからは少数の季節性H3N2型のインフルエンザの検出が報告されました。アフリカ東部ではルワンダにおいて新型インフルエンザの検出が続いていますが減少傾向にあります。ルワンダとケニアでは季節性H3N2型のインフルエンザの検出も少数ですが持続しています。アフリカ南部では呼吸器疾患や新型インフルエンザの流行は未だ認められていません。アフリカ中部のいくつかの国においてB型インフルエンザ報告数が増えてきています。

アメリカの熱帯地域、エクアドル・エルサルバドル・グアテマラでは呼吸器疾患の増加が報告されました。グアテマラでは呼吸器疾患での受診者数が先週と比べ80%増加しました。少数の新型インフルエンザウイルスの検出に加えて、RSウイルス・パラインフルエンザウイルス・アデノウイルスなど他の呼吸器疾患ウイルスも流行していることに注意が必要です。メキシコでは20104月初旬は前週と比べインフルエンザ様疾患と重症急性呼吸器疾患の患者数が38.6%減少したとの報告がありました。

南半球の温帯地域では、過去4週にわたってインフルエンザ様疾患の局所的な増加がチリで報告されました。国全体のインフルエンザ様疾患は流行閾値以下に留まっていますが、ロスラゴスやタラパカや南部のいくつかの地域では、インフルエンザ様疾患は流行閾値以上に達しています。最新情報では、サーベイランス検体の6.8%から呼吸器疾患ウイルスが検出されました。それらの52.9%はRSウイルス、23.5%がアデノウイルス、11.8%が新型インフルエンザウイルス陽性でした。オーストラリアやニュージーランドでは、冬季のインフルエンザ流行が始まったという報告はまだありません。オーストラリアでは散発的な新型インフルエンザや、少数の季節性B型インフルエンザの検出が見られています。

(平成22年4月23日 WHO情報)