海外感染症情報 (NO.40)
平成22年5月10日
関西空港検疫所
パンデミック・インフルエンザ(H1N1)の流行状況について(7)

2010425日−430日現在、世界中214以上の国や地域から17919例以上の死亡例を含む新型インフルエンザの確定症例が報告されています。
 現在の流行状況は前回更新以降、大きな変化はありません。新型インフルエンザが最も流行を続けている地域はアフリカ西部・中部ですが、南アジア・東南アジアでも局所的な流行があります。北・南半球温帯地域では新型インフルエンザの活動性は低いままです。季節性B型インフルエンザが流行の主体ではありますが、東アジア・北ヨーロッパ・東ヨーロッパにおいては低いレベルに留まっています。B型インフルエンザはアフリカ中部においても検出されていますが、今週はアフリカ西部でも検出されています。季節性H3N2インフルエンザはアフリカ西部・中部および東ヨーロッパで散発的に検出されているのと同様に、南アジア・東南アジアからも報告が続いています。
 サハラ以南アフリカでは、新型インフルエンザの流行は西部・中西部アフリカにおいて減少してきているとのことです。ガーナでは中等度の新型インフルエンザの報告がありますが(全臨床検体の16%が新型インフルエンザ陽性)、セネガル・ニジェール・カメルーンではより少数の検出となっています。アフリカ東部では、インフルエンザの流行レベルは低くなりました。ルワンダだけが先週少数の新型インフルエンザを検出しています。さらに、少数の季節性H3N2インフルエンザがガーナで見られています。B型インフルエンザはその地域で(とくにガーナとカメルーン)ますます検出が増えています。
 東アジアでは、今では新型インフルエンザの流行は散発的となっています。中国・モンゴル・韓国におけるインフルエンザ様疾患は主に季節性B型インフルエンザによるものです。中国・モンゴルでのインフルエンザ検出数は先週と比較し減少を続けています。韓国では5週連続で呼吸器疾患検体からの季節性B型インフルエンザの検出数が増加していることに関連する呼吸器疾患の流行レベルが上昇していると報告があります。いくつかの国においては少数の新型インフルエンザ、季節性H3N2・H1N1の検出も散発的に続いていることに注意が必要です。
 東南アジアでは、全体的なインフルエンザの流行レベルは低くなりました。今でもなお主な流行株は新型インフルエンザですが、季節性B型インフルエンザも共に流行しており、シンガポール・カンボジア・インドネシア・タイを含むいくつかの国々ではある程度のH3N2の流行もありました。マレーシアでは新型インフルエンザ確定症例と関連した呼吸器疾患の増加が報告されています。メディア情報によると学校閉鎖もあったとのことです。シンガポールではインフルエンザ様疾患の流行はまだ季節性流行閾値以下に留まっていますが、先週に比べると増加しています。
 南アジアでは、バングラデシュにおいて4月初旬以降の新型インフルエンザ確定症例の増加と関連した呼吸器疾患が増えていると報告がありました。インドではマハラシュトラ州と最近になってカルナタカ州で新型インフルエンザの流行が報告されました。両国における呼吸器疾患の流行レベルは、2009年後半に起こった最初の流行に比べるとそれほど強烈なものではありません。この地域では新型インフルエンザが主な流行ウイルスではありますが、イランとバングラデシュでは季節性B型インフルエンザの検出も続いていました。
 アメリカの熱帯地域では、新型インフルエンザの流行は少なくなりましたが、少数の局所的な地域において流行があるとのことです。ジャマイカ・パナマ・グアテマラでは呼吸器疾患が増加傾向にあると報告されました。キューバでは全州で(主にハバナから)最近2週間において急性呼吸器疾患の増加が報告されました。ペルーではリマで5歳以下の子供における肺炎症例が6週連続で増加しており、流行閾値を上回っています。しかし、これらの肺炎症例が新型インフルエンザによるものかは明らかではありません。その地域ではとくにRSウイルスの流行が報告されています。
 北半球の温帯地域では、全体的な新型インフルエンザの流行は少ないままです。アメリカ合衆国では、インフルエンザ様疾患の外来通院患者の割合は全国の基準を下回っていました。北アメリカからはB型インフルエンザの報告はありません。ヨーロッパでは全ての国において新型インフルエンザの流行は非常に少なくなっています。呼吸器検体全てにおいてインフルエンザ陽性検体は4.5%に留まっています。主に東ヨーロッパ・中央シベリア・ロシア極東地域・カザフスタンからのウイルス検体において、今週もB型インフルエンザの検出がA型インフルエンザを超えていました。
 南半球の温帯地域では、インフルエンザ様疾患の流行は少ないままで、前年の同時期程度に留まっています。オーストラリアでは、ここ数週間新型インフルエンザ・季節性B型インフルエンザ・H3N2インフルエンザが少数ですが散発的に報告され続けています。

(平成22年4月30日 WHO情報)