海外感染症情報 (NO.44)
平成22年5月10日
関西空港検疫所
パンデミック・インフルエンザ(H1N1)の流行状況について(8)

201057日――52日現在、世界中の214以上の国や地域から少なくとも18,001人を超える死亡例を含む、新型インフルエンザH1N1の検査確定症例が報告されています。
  新型インフルエンザの感染が最も活発にみられているのは、西アフリカの一部、カリブ海域諸島、東南アジアです。新型インフルエンザの活動性は北半球・南半球の温帯地域では局所的にみられています。一方、季節性のB型インフルエンザは、アジア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ大陸で局所的にみられています。しかし季節性インフルエンザウイルスは東アジア、中央アジア、南ヨーロッパ、中央アフリカで低いレベルですが蔓延しています。
  サハラ砂漠以南のアフリカでは、新型インフルエンザの活発な感染が西アフリカの一部地域で続いています。一方で低いレベルではありますが、季節性のB型インフルエンザウイルスも中央アフリカの一部地域で蔓延しています。ガーナでは、新型インフルエンザの検出は4月初旬にピークを迎えてからは減ってきています。ここ最近の週では、呼吸器疾患の検体のうち14%が新型インフルエンザ陽性でした。カメルーンでは、新型インフルエンザと季節性のB型インフルエンザの両方のウイルスが低いレベルで蔓延していましたが、4月はB型が優性でした。コンゴ民主共和国では、季節性のH3N2型ウイルスが2月から3月中旬に蔓延していましたが、4月には季節性のB型インフルエンザウイルスに置き換わっています。東アフリカの一部地域、特にルワンダ、タンザニアでは、新型インフルエンザウイルスが低いレベルで蔓延し続けています。季節性のH3N2型ウイルスが、東アフリカ、中央アフリカ、西アフリカで散発的に報告されています。
  アメリカ大陸の熱帯地域では、幾つかの国々で新型インフルエンザウイルスの感染がいまだ活発なままです。中央アメリカでは、グアテマラで局地的に拡がった新型インフルエンザウイルスに関連して、呼吸器疾患の活動性が3週連続で上昇し、重症例もでました。キューバでは、新型インフルエンザウイルスの検出数と重症例数が3月末から増加していますが、全体としての新型インフルエンザの活動性は最近ピークを終えました。ペルーでは、首都での5歳以下の子供の肺炎患者数がここ7週で増加しており、新型インフルエンザH1N1ウイルスとその他の呼吸器系ウイルスによると思われますが、わかりません4月のこの地域の全体的な呼吸器疾患の活動性は低〜中程度のままですが、短期間で新型インフルエンザウイルスはキューバとバルバドスで広く蔓延しており、メキシコ、ホンジュラス、ニカラグア、コロンビア、ベネズエラ、ブラジル、エクアドル、ボリビアでは局所的に蔓延しています。
  東南アジアでは、新型インフルエンザウイルスは、幾つかの国や地域で活発に活動しています。しかし、呼吸器疾患の傾向は地域によって不定です。マレーシアでは、重症例も含めた新たな症例報告と、特に4月末から5月初めにかけてのメディアからの学校集団感染の報告により、新型インフルエンザウイルス感染が続いていることがわかります。シンガポールでは、急性呼吸器疾患のレベルが4月初めからだんだん上昇してきており、現在は流行閾値を超えました。ここ最近の週での呼吸器疾患検体の37%はインフルエンザ陽性でした。タイでは、インフルエンザ様疾患の外来患者と、肺炎で入院している患者からの検体で、新型インフルエンザウイルス感染は3月末のピーク時より明らかに減っています。
  南アジアでは、新型インフルエンザウイルス感染が活発に続いているのはバングラデシュです。バングラデシュでは4月中旬から新型インフルエンザウイルスと季節性のB型インフルエンザウイルスの両方が蔓延していることに関連して、呼吸器疾患の報告が続いています。しかし、2月末から低いレベルで両方のウイルスが蔓延していることは判明していました。インドでは、西部と南部の一部地域で新型インフルエンザウイルスの蔓延が低いレベルで確認されています。
  東アジアでは、とても低いレベルで新型インフルエンザウイルスが確認されています。地域での全体的な呼吸器疾患の発生率は低いままですが、最近のいくつかの国々での低いレベルでのインフルエンザ活動は、季節性のB型インフルエンザウイルスの蔓延によるところが大きいです。モンゴル、中国、韓国の3カ国が、通常より早く、冬季の新型インフルエンザウイルス感染よりもより深刻な、季節性インフルエンザB型ウイルスの持続した蔓延を経験しました。中国と韓国は積極的に監視を続けており、季節性のB型インフルエンザウイルスの蔓延は減ってきています。
  南半球の温帯地域では、新型インフルエンザと季節性インフルエンザの活動はともに散発的です。例外はチリで、チリでは重症例の報告を含む、低いレベルでコミュニティレベルでの新型インフルエンザウイルス感染の報告がありました。しかしこれを冬季インフルエンザ流行の始まりのサインと判断するのは早すぎます。チリでのインフルエンザ様疾患の発生率は基準値近くのままですが、少なくとも南部の2地域ではここ4週間、流行閾値を少し上回っています。チリの呼吸器患者の検体検査で6%が呼吸器系ウイルス陽性で、そのうち32%がRSウイルス陽性、27%がインフルエンザウイルス陽性(そのうち半数がH1N1ウイルス)でした。
  ヨーロッパでは、インフルエンザの活動は低いままで、非常に低いレベルで新型インフルエンザウイルスと季節性のB型インフルエンザウイルスがともに蔓延している。呼吸器疾患患者の検体検査の結果、インフルエンザ陽性は約5.3%で変化はありません。季節性のB型インフルエンザウイルスがロシア、カザフスタンで低いレベルですが蔓延していることに関連して、季節性のB型インフルエンザウイルスの検出数はA型インフルエンザウイルス検出数を超えています。

(平成22年5月7日 WHO情報)