海外感染症情報 (NO.59)
平成22年7月1日
関西空港検疫所
パンデミック・インフルエンザ(H1N1)
流行状況について(15)


 6月20日現在、世界中214以上の国や地域から18,209例以上の死亡例を含む新型インフルエンザの確定症例が報告されています。
 新型および季節性インフルエンザの活動性は世界的に低い状態のままです。新型インフルエンザの流行が活発な地域は、熱帯地域の一部、特にカリブ海地域、西アフリカ、南アジア、東南アジアです。新型および季節性インフルエンザウイルスは、現在冬を迎えた南半球の温帯地域において散発的に検出されているのみです。世界的な季節性B型インフルエンザの流行は大幅に減少しており、東アジア、中央アフリカ、中米の一部で低いレベルでの流行が続いています。東アフリカと南米地域で先月、季節性H3N2型インフルエンザウイルスが低いレベルで検出されていました。

 南半球の温帯地域の多くの国々(チリ、アルゼンチン、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド)では、6月最初の2週間に新型および季節性インフルエンザウイルスは散発的に検出されているのみであり、全体的な呼吸器疾患の流行レベルも低い状態です。チリでは、6月の第2週目に呼吸器検体の約1%がインフルエンザ陽性でした(大多数が新型インフルエンザウイルスでした)。アルゼンチンでは、6月初旬に少数のB型インフルエンザウイルスが検出されていました。チリとアルゼンチン両国において、主に流行を続けている呼吸器疾患ウイルスはRSウイルスでした。南アフリカでは、6月初め以降ごく少数の季節性H3N2型およびB型インフルエンザウイルスが検出されていました。オーストラリアとニュージーランドでは、インフルエンザ様疾患は最近の過去の季節的なレベルを下回っており、6月上半期は季節性または新型インフルエンザウイルスの散発的な検出のみでした。

 アジアでは、現時点で新型インフルエンザが最も流行している地域は、インド南部、バングラデシュ、シンガポール、マレーシアです。インドでは、南インドのケララ州で新型インフルエンザの流行拡大が最近報告されており、とくに妊婦での重症例・死亡例も少数ですが含まれています(その地域での病勢は現在調査中です)。バングラデシュでは、6月上旬は新型と季節性B型インフルエンザウイルスが低いレベルで共に流行していました。タイでも、一部の地域で新型と季節性インフルエンザウイルスが低いレベルで共に流行し続けているとのことです。シンガポールでは、6月第3週目に急性呼吸器感染症の流行が警戒レベル以下となり、インフルエンザ様疾患患者の呼吸器検体で新型インフルエンザ陽性であるものは28%から19%に減少しました。マレーシアでは、6月全体を通して新型インフルエンザは低いレベルでの流行が続いていましたが減少しているとのことです。東アジア全体において、新型と季節性インフルエンザの流行は極少なく散発的です。中国と日本では、インフルエンザ様疾患のレベルは夏季の基準値もしくは基準値以下に留まっています。中国の香港特別行政区と台湾では、季節性B型インフルエンザの流行が低いレベルで減少しながら続いています。

 アメリカ大陸の熱帯地域では、キューバとコロンビアを除いて、全体的な新型および季節性インフルエンザの流行はかなり少ない状態です。キューバとコロンビアでは、低いレベルでの新型インフルエンザの流行が続いています(6月上旬において両国では呼吸器検体の約8%が新型インフルエンザ陽性でした)。キューバでは、新型インフルエンザの流行は活動的ですが、4月中旬から5月中旬にピークを迎えて以降は大幅に減少しており、過去4週間は新たな死亡例の報告もありません。コロンビアでは、新型インフルエンザは低いレベルでずっと流行していましたが、5月下旬以降はわずかに増加しています。しかし6月中旬には、呼吸器疾患全体としては低〜中等度のレベルと報告されました。いくつかの国々では、A型(ベネズエラで5月)およびB型(ボリビアでは3月〜5月、エルサルバドルでは5月下旬〜6月上旬)を含む季節性インフルエンザウイルスが最近流行していました。地域全体としては、RSウイルスを含む他の呼吸器疾患ウイルスが変化しながら共に流行を続けていると報告されています。

 サハラ以南アフリカでは、新型および季節性インフルエンザの流行はいくつかの国々に限定されています。西アフリカのガーナでは、4月上旬に全体的なピークを迎えた後も新型インフルエンザは活動的に流行を続けています。6月最初の2週間は、呼吸器検体のうち新型インフルエンザ陽性であったものは16%から23%に増えています。季節性B型インフルエンザは、アフリカ中部および南部で流行を続けていますが、カメルーンで最も顕著です。前回更新時の報告のように、アフリカ全体にわたって少数の季節性H3N2型インフルエンザが検出されていますが、とくに東アフリカで目立ち、6月第2週目においてはガーナ、ケニア、南アフリカで報告されています。この地域での持続的なH3N2型ウイルスの検出は、コミュニティ内でのウイルス感染が継続していることを最もよく表しています。

 北半球温帯地域(北アメリカとヨーロッパ)では、先月の全体的な新型および季節性インフルエンザウイルスの検出は、散発的もしくはかなり低いレベルでした。

(平成22年6月25日 WHO情報)