海外感染症情報 (NO.9)
平成22年2月25日
関西空港検疫所
パンデミック・インフルエンザ(H1N1型)の流行状況について

201027日――2010212日までに、212カ国以上の国々や地域でのH1N1新型インフルエンザ確定例(少なくとも15292例の死亡例を含む)が報告された。

北半球の温暖地域では、ほとんどの国々で新型インフルエンザの活動は減り続けている。感染伝播がもっとも活発な地域は、遅れてピークを迎えた地域で、北アフリカ、南アジアと東アジアである。先月、セネガルでも新型インフルエンザの初発患者が報告され、これで西アフリカでは5つの国で新型インフルエンザ患者が認められたことになった。

北アフリカでは新型インフルエンザの感染伝播は続いているが、先月の間にかなり活動に低下傾向が見られた。モロッコでは、インフルエンザ様疾患のレベルが基準値まで下がり、エジプトでは確定診断例がかなり減少した。

南アジアや東南アジアでは、新型インフルエンザはまだ広く蔓延しているが、全般的に、活動は低下しているか、低いままである。インドでは、特に西部から北部にかけて感染は続いているが、全般に患者数は概ね減少している。タイでは前回の報告期間以来、全般的な活動は低いままか、変化無しだが、タイ中央部と北部ではインフルエンザ様疾患の活動が増加している。

東アジアでは新型インフルエンザ感染は続いているものの、全般の活動は概ね低下傾向を示している。中国では新型と季節性のインフルエンザ感染がともにみられたが、ここ数週間はインフルエンザB型が優勢となっている。日本では、他の地域よりインフルエンザ感染レベルの高かった沖縄も含めて、その活動性はほぼ季節性の基準値まで低下している。韓国ではインフルエンザ様疾患のレベルはほとんど基準値近くまで低下した。

ヨーロッパでは新型インフルエンザウイルスは広範囲に蔓延しているが、特に中央・南・東ヨーロッパでは全体の活動性は冬のピーク時にみられたときよりもかなり低下している。15カ国で20以上の呼吸器検体を検査したが、インフルエンザ陽性となったのは014%だった。スロバキア、スロベニア、ロシアで最近わずかに増加している急性呼吸器感染症は、インフルエンザとは関係なく、他の呼吸器系ウイルスによるものらしい。

サハラ以南地域では、限られた情報から判断するに、新型インフルエンザ感染伝播は特定地域に限局しており、全般にその活動性は低いようである。

アメリカ大陸では、熱帯地域でも北部温暖地域でも、全般に新型インフルエンザの活動は低下もしくは低いままである。中央アメリカやカリブ海地域では感染伝播は続いているが、活動性は低いか、変化無しである。グアテマラで呼吸器疾患の増加傾向があると報告されたが、インフルエンザウイルスによる者ではなく、他の呼吸器系ウイルスによるものらしい。

南半球温暖地域では、散発的な新型インフルエンザ感染が報告されている。新型インフルエンザは、世界で蔓延している主なインフルエンザウイルスに変わりはない。さらに中国でインフルエンザB型ウイルス感染の比率が増加しつつあることに加え、アフリカの一部の地域や東アジア、東南アジアで季節性インフルエンザA(H3N2)B型が低いレベルながら広がっており、一方他の大陸では散発的にしかみられていない。

                                                                      212WHO 情報