海外感染症情報 (NO.114)
平成25年8月16日
関西空港検疫所
環境検体からのポリオウイルスの分離(3)
 2013年8月15日―世界保健機関(WHO)は、イスラエルから報告のあった野生型ポリオウイルス1型(WPV1)の同国からの国際的な拡がりの危険性が、中等度以上に残存していると評価しました。

 WPV1はイスラエルの下水の24箇所から、本年2月3日~8月4日の間に採取された67検体で見つかっています。当初イスラエル南部に限局していましたが、いまや中央部からの検体でも見つかっています。同ウイルス株は進行中の便検査のサーベイにおいて見つかったもので、年齢相応に免疫を獲得している9歳未満の27人の健常な子供と1人の大人から見つかったものです。なお、麻痺性ポリオ(AFP)の発生は報告されていません。公衆衛生担当者は、ルーチン的に実施されているAFPのサーベイランスの対象を全年齢とし、エンテロウイルスのサーベイランスをも拡大しています。また無菌性髄膜炎に対して、ポリオのスクリーニングを実施しています。2価・経口ポリオワクチン(OPV)による補足的・予防接種活動(SIA)が本年の8月5日からイスラエル南部で開始され、8月18日には9歳までの小児に対しての国内全域でのワクチンキャンペーンが計画されています。SIAの目的は、OPV接種が不十分な子供の腸管免疫を強化することにより、ウイルスが循環することを阻止することにあります。

 全ての国々、特にポリオ発生国との旅行や交易が頻繁である国では、新たなポリオウイルスの侵入を発見し迅速な対応が可能とれるよう、AFPの患者についての強化サーベイランスを実施することが大切です。各国は、追加接種実施の指標にし、また結果として新たにウイルスがもたらされるのを最小限にくいとめ、国内における免疫獲得率の地域差を明らかにするため、定期予防接種実施率のデータを分析するべきです。病原体を輸入する可能性の高い地域及び、OPV/DTP(3価OPV、三種混合)の接種率が80%未満の地域は、優先的にワクチン接種が実施されるべきです。

 WHOの「海外旅行と健康」では、ポリオ発生地域を往来する全ての旅行者はポリオに対する十分なワクチン接種を推奨しています。WPVの地域伝搬が継続しているのは、ナイジェリア、パキスタン、アフガニスタンの3か国です。さらに2013年には、アフリカの角と呼ばれる地域でWPV1の発生がありました。


(2013年8月15日 WHO報告)