海外感染症情報 (NO.131)
平成25年9月24日
関西空港検疫所
環境検体からのポリオウイルスの分離(4)
 9月20日現在世界保健機関(WHO)は野生型ポリオウイルス1型(WPV1)がイスラエルから他国へ拡がるさらなる危険性があると判断しています。その根拠はイスラエル国内において同ウイルス分離が地理的に拡がり、時間的にも遷延しているからです。最近パレスチナ自治政府がヨルダン川西岸地区およびガザ地区の下水から採取した検体からWPV1が分離されています。イスラエルやパレスチナ自治政府からの発表では麻痺性ポリオの発生は認めていません。

 イスラエル、パレスチナ自治政府の保健当局者は急性の弛緩性麻痺患者発生(AFP)に関するサーベイランスの強化や環境検体の採取頻度の増加によりWPV1の蔓延による脅威に対応をしてきました。2価経口ポリオワクチン(b-OPV)による補足的予防接種活動は8月のはじめからイスラエルで開始されており、早急にWPV1の蔓延を防止するべく9歳までの小児をターゲットに実施されてきました。現在まで対象となったイスラエルの子供138万人のうち60%はワクチン接種を終えています。パレスチナ自治政府ヨルダン川西岸地区、ガザ地区において3価経口ワクチンを使用した2回の補足的予防接種活動を予定しています。

 全ての国々、特にポリオ発生国との旅行や交易が頻繁である国では、新たなポリオウイルスの侵入を発見し迅速な対応が可能とれるよう、AFPの患者についての強化サーベイランスを実施することが大切です。各国、および地域は、結果として新たにウイルスがもたらされるのを最小限にくい止めるため、国内における定期予防接種の接種率を地域レベルで統一的に高く維持しなければならない。

 WHOの「海外旅行と健康」では、ポリオ発生地域を往来する全ての旅行者はポリオに対する十分なワクチン接種を推奨しています。WPVの地域伝搬が継続しているのは、ナイジェリア、パキスタン、アフガニスタンの3か国です。さらに2013年には、アフリカの角と呼ばれる地域でWPV1の発生がありました。

(2013年9月20日 WHO報告)