海外感染症情報 (NO.148)
平成25年10月30日
関西空港検疫所
シリア・アラブ共和国におけるポリオの報告
 2013年10月29日、シリア・アラブ共和国における10月17日に報告された急性弛緩性麻痺(AFP)の22人の集団発生において、調査により10人から野生株ポリオウイルス1型(WPV1)が検出されました。最終的な遺伝子情報の結果は、検出されたウイルスの起源を決定するために保留されています。1999年以来、シリア・アラブ共和国において野生株ポリオウイルスは検出されていませんでした。

 ほとんどの症例は非常に若く(2歳以下)、免疫があるかないかの状態でした。シリア・アラブ共和国における予防接種率の推定は、2010年の91%から2012年の68%に低下しました。

 この診断確定例が確認される以前より、シリア・アラブ共和国と近隣諸国の保健当局は、包括的な集団発生対策の計画と実施を開始していました。10月24日、シリア・アラブ共和国の160万人の子供にポリオ、麻しん、流行性耳下腺炎、風しんに対する予防接種を実施するために、すでに計画されていた大規模な追加予防接種活動(SIA)が政府管轄地域と紛争地域の両方で実施されました。

 最初の陽性例が報告された時に、デリゾール(Deir Al Zour)県で追加予防接種活動が実施されました。シリア・アラブ共和国と近隣諸国全体にまたがる、大規模な集団発生対応が11月上旬に開始され、疫学に基づいて、地域により少なくとも6ヶ月から8ヶ月継続されると予想されています。

 地域全体の頻繁な人口移動と主要地域における免疫格差があるシリア・アラブ共和国の現在の状況において、この地域の野生型ポリオウイルス1型が国際的に拡散する危険性は高いと考えられます。さらに潜在的な患者を積極的に検出するために、この地域に対して疫学調査に関する警報が発令されました。

 WHOの「国際渡航と健康(International Travel and Health)」は、ポリオの発生地域への全ての渡航者と、発生地域からの全ての渡航者に対して、規定の回数分のポリオワクチンを接種することを推奨しています。
(2013年10月29日 WHO報告)