海外感染症情報 (NO.60)
平成25年5月21日
関西空港検疫所
新型コロナウイルス感染確定例報告(17)
 2013年5月18日、サウジアラビア保健省は、世界保健機構(WHO)に対して、新たに1人の新型コロナウイルス(nCoV)ヒト感染確定例を報告しました。

 その患者は、複数の基礎疾患がある81歳の女性で、4月28日に発症して現在は重篤ですが、容態は安定しています。

 その患者は、今年の4月初めから医療施設で始まった集団感染の調査が進む中で確認されました。その患者は、以前に確認された集団感染の中心であった医療施設に、4月8日から28日まで入院していました。これまで、今回のサウジアラビア東部における集団感染で、9人の死者を含む計22人が報告されています。政府は、この集団感染の調査を継続しています。

 2012年9月から現在まで、WHOには全世界で41人の新型コロナウイルスヒト感染確定例の報告があり、うち20人が死亡しています。中東のヨルダン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)で感染が確認されています。また、欧州のフランス、ドイツ、イギリスの3か国からも患者が報告されています。欧州の患者はいずれも、アラブ首長国連邦への渡航歴がある2人の患者を含めて、中東との直接的又は間接的な関連がありました。フランスとイギリスでは、中東への渡航歴がないものの、最近中東から帰国した旅行者と密に接触したことによる限定的な地域内感染がありました。

 臨床医は、特に免疫不全患者において、下痢などの非定型な徴候や症状であっても、新型コロナウイルスへの感染に留意すべきです。

 これ以上のウイルスの感染伝播を防ぐために、感染曝露を確認するための感染源調査を速やかに実施するべきです。

 WHOは、今回の発生に関して、入国時の特別なスクリーニング及び渡航や交易を制限することを推奨していません。

 WHOは、引き続き状況を注視し、現状を密に監視しています。
(2013年5月18日 WHO報告)