海外感染症情報 (NO.62)
平成25年5月23日
関西空港検疫所
アフリカの角地域における野生株ポリオウイルス
 2013年5月22日付で世界保健機関(WHO)から公表された情報によりますと、アフリカの角地域(ソマリア全域とエチオピアの一部を含む半島)で野生株ポリオウイルス1型(WPV1)の集団感染が発生しています。4月30日にケニアのダダーブで急性弛緩性麻痺(AFP)を発症した4ヶ月の女児が確認され、その濃厚接触者で発症していない2人の子供からWPV1が検出されました。2011年7月以降、ケニアで確認された最初の感染確定例になります。今回の流行に関する調査が続いています。また、5月9日にソマリアのバナディールでWPV1の感染確定例が1人確認されています。

 今回の流行を受けて、ソマリアでは5月14日から44万人の子供に対する予防接種キャンペーンを開始し、5月26日にはケニアの発生地域に関連した予防接種が計画されています。

 アフリカの角地域では大規模な住民移動があり、いくつかの地域では終生免疫に差があるため、近隣諸国へのリスクは非常に高いと予測されています。ダダーブには、アフリカの角地域を越えて移動してきた約50万人を収容した大きな難民キャンプがあります。
 アフリカの角地域の全ての国々に対して、サーベイランスを強化するように警告が出されましたが、ポリオが疑われる患者を積極的に調査する必要性が強調されています。また全ての国々が迅速に地方レベルのサーベイランスの差を特定し、その差を埋めるための措置をとることを推奨しています。

 2005年にポリオは、西アフリカからアフリカ大陸を横断して東部に拡大し、イエメンやアフリカの角地域に拡がって700人以上の患者が報告されています。それ以来、国際的な集団感染への対応がとられ、新しい単価及び2価の経口ポリオワクチンが開発されたことにより、ポリオの重症化と長期的な集団感染を減らすことができました。

 ソマリア(南部-中央部)の一部の地域では、2009年にソマリアで18人の患者が報告されたワクチン由来の循環ポリオウイルス2型(cVDPV2)の影響を受けています。このウイルス株は、2012年にダダーブで拡がり、3人の患者が発生しています。

 WHO「海外旅行と健康」(ITH)は、ポリオ患者が発生している国から海外への渡航者や、患者が発生している国へ入国する渡航者に対し、既定回数のポリオに対する予防接種を受けることを推奨しています。
(2013年5月22日 WHO報告)