海外感染症情報 (NO.67)
平成25年5月30日
関西空港検疫所
中東呼吸器症候群コロナウイルス感染確定例報告 (20)
 2013年5月29日、サウジアラビア保健省は、世界保健機構(WHO)に対して、さらに5人の中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)ヒト感染確定例を報告しました。

 5人の患者はいずれもサウジアラビアの東部から発生していますが、2013年4月に医療機関から始まったアウトブレイクのあったアルアフサではありません。患者は基礎疾患があり、複数の医療機関に通院が必要でした。政府は医療施設と地域の両方で感染源として可能性の高いものを調査しています。

 5人の患者は全員基礎疾患をもち、
  ・最初の患者は56歳の男性で、5月12日に発症し、20日に死亡しました。
  ・2人目は85歳の女性で、17日に発症し、現在危険な状態にあります。
  ・3人目は76歳の女性で、24日に発症し、27日に退院しました。
  ・4人目は77歳の男性で、19日に発症し、26日に死亡しました。
  ・5人目は73歳の男性で、18日に発症し、26日に死亡しました。

 さらに以前アルアフサで報告された81歳の女性は死亡しました。同国政府は国内での流行の調査を続けています。

 フランスでも最近アラブ首長国連邦に渡航歴のあった最初の確定例が死亡しました。
全体として、昨年9月からこれまでに、WHOに報告されたMERSコロナウイルスの確定例は49人で、うち27人が死亡しました。

 WHOは、これまで中東のヨルダン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦から確定例の報告を受けています。フランス、ドイツ、チュニジア、英国からも、中東から治療のために搬送された患者や、中東から帰国した後に発症した患者が報告されています。フランス、チュニジア、英国では、中東への渡航歴がなく、確定例や疑い例との濃厚接触者に限定的な地域内感染がみられています。

 WHOは、この事例に関して入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。

 WHOは引き続き、状況を注視しています。
(2013年5月29日 WHO報告)