海外感染症情報 (NO.68)
平成25年6月3日
関西空港検疫所
中東呼吸器症候群コロナウイルス感染確定例報告 (21)
 2013年5月31日、サウジアラビア保健省は、世界保健機構(WHO)に対して中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)ヒト感染確定例を報告しました。

 患者は基礎疾患を持つ61歳男性で、5月20日に発症したとアルアフサから報告されています。さらに、以前にアルアフサで報告されていた3人の患者が死亡しています。

 政府は国内での流行に関して調査を継続しています。

 世界的に見ると、2012年9月から現在まで、WHOには30人の死亡者を含む計50人のMERS-CoVヒト感染確定例が報告されています。

 WHOは医療従事者に対し、中東地域からの最近帰国した旅行者で重症急性呼吸器感染症(SARI)が発生している場合には注意深く警戒し、MERS-CoVの診断のために患者の下気道からの検体を採取することを推奨しています。また、免疫不全患者では、非典型的な徴候や下痢などの症状があってもMERS-CoV感染を考慮すべきであるとしています。

 又、MERS-CoV感染者や疑い患者を受け入れる医療施設では、感染予防対策の重要性を再確認し、他の患者、医療従事者や訪問者への感染リスクを減らすような対応をとるべきであるとしています。

 WHOは全ての加盟国に対し、MERS-CoVの新たな感染者が発生した際には、考えられる感染源と臨床経過の情報を合わせて、速やかに評価して報告するよう呼びかけています。速やかに感染源から感染経路を同定することで、感染拡大防止が可能です。

 WHOは、この事例に関して入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。
(2013年5月31日 WHO報告)