海外感染症情報 (NO.8)
平成25年2月13日
関西空港検疫所
ニジェールにおけるポリオの発生
212日、本年13日に出されたニジェールにおける野生型ポリオウイルス1型(WPV1)感染症例の報告を受けて、同国ではアウトブレイク対応が継続されています。WPV1患者はタウア州で発見され、昨年1115日に麻痺で発症しています(201112月以降同国での第1例目)。遺伝子配列によりウイルスはニジェールに新しく侵入したもので、ナイジェリア・カドゥナ州で循環しているウイルスに非常に近接していることが確認されました。ニジェール政府は、世界保健総会(World Health Assembly, WHA)が世界保健総会決議において提案した国際アウトブレイク対応ガイドラインに沿って、包括的な対応を引き続き行っています。約200万人の小児に2価経口ポリオワクチン(OPV)を接種するため、115日に追加のワクチン接種活動(supplementary immunization activities: SIAs)が実施されましたが、それに引き続き、225日にかけて500万人以上の小児を対象とした3OPVによる全国的なSIAが行われました。2OPVによる2回目の全国的なSIA325日にかけて予定されています。以前には、2OPVにより昨年1123日に全国的なSIAが行われています。ニジェール政府による調査を支援したり、対応活動の計画を援助したり、麻痺性ポリオの追加症例の積極的調査を支援するために、国内外の疫学および公衆衛生の専門家の協同チームが、世界保健機関(WHO)アフリカ地域事務局から派遣されました。
これは撲滅される対象であるWPVの病原体が現在でも世界的に拡大する危険性があることを裏付ける事態です。昨年5月、世界保健総会決議においてポリオ撲滅の完遂が緊急課題であると宣言されています。過去に、ナイジェリア北部から西アフリカにかけてポリオの世界拡大がみられたことから、WHOはナイジェリアからさらに拡大するリスクは中等度から高度であると評価しています。このリスクは、マリにおいて治安悪化に伴って地域を越えて民族大移動がおこることにより高められています。このリスクを最小限にするため、4月下旬と5月下旬に2価および3価OPVを組み合わせて用い、多国同時期に行うSIAが、西アフリカの13ヶ国において計画されています。西アフリカのいくつかの地域では国内での地域間のサーベイランス格差が続いているため、確認されていないさらなるウイルスの循環が今のところ除外できません。地域のサーべーランス格差をより明確に同定するために、移民、季節労働者、社会的弱者を含めたサーベイランスが行われています。特にハイリスクな住民など、全てのグループや地域を質の高いサーベイランスによって確実に把握できるように、地域におけるサーベイランスを強化するための方法がとられています。WHOの「海外旅行と健康」に推奨事項が記載されているように、ニジェールや他のポリオ汚染国を出入りする旅行者は、ワクチンを十分接種すべきです。全ての国、特にポリオウイルスの感染が起こっている国と頻繁に往来がある国では、新規のポリオウイルス侵入を早期に検出し迅速に対応するために、急性弛緩性麻痺(AFP)のサーベイランスを強化することが大切です。また各国は、追加の予防接種が必要な地域間格差を確認するために、定期の予防接種の接種率も分析すべきです。これによって、新たなウイルスの輸入が最小限になります。ウイルス侵入のリスクの高い地域と、OPV3/DPT3の接種率が80%未満の地域を優先すべきです。
(2013年2月12日WHO報告)