海外感染症情報 (NO.98)
平成25年7月16日
関西空港検疫所
イスラエルで環境からポリオウイルスの分離(2)
 2013年7月15日、イスラエルで10ヶ所のサンプル採取場所で得られた30の下水サンプルから、野生株のⅠ型ポリオウイルス(WPV1)が分離同定されました。サンプルは2月3日から6月30日までに収集されたものです。WPV1陽性のサンプルのほとんどがイスラエル南部から検出されました。ウイルス全てが下水で検出されており、麻痺性ポリオの症例は今のところ報告されておりません。

 イスラエル全土でウイルスが検出されたことが、長時間ウイルスが循環したことによる地理的範囲の増加を示しています。WHOはイスラエルからこのウイルス株が国際間で拡がる可能性は中等度~高度と評価しています。

 イスラエルの保健当局は、 麻痺性ポリオや免疫不全者(ワクチン未接種)の潜在的な症例を積極的に検索するための疫学調査や公衆衛生調査を行い続けています。過去8年間における定期の予防接種率は94%以上と推定されます。環境を監視するためのサンプル採取頻度は増えています。環境の監視するためのサンプル採取は公衆衛生上の重要な疾患の検出をサポートするために、イスラエルを含め、世界各国で使用されます。同様の活動がガザ地区とヨルダン川西岸地区の保健当局によって実施され、WPVは今のところ、これらの地域から検出されていません。

 イスラエル政府は経口ポリオ生ワクチン(OPV)による補助予防接種活動(SIA)を計画しています。これらSIAは、不活化ポリオワクチン(IPV)接種を受けた免疫のない、または不十分な子供たちに対して、2013年6月初めから追加接種が行われています。

 全ての国々、特にポリオ発生国の旅行や、交易が頻繁である国では、新たなポリオウイルスの侵入を発見し迅速な対応が可能とれるよう、急性の弛緩性麻痺の患者についての強化サーベイランスを実施することが大切です。追加接種の指標にするべく、また結果として新たにウイルスがもたらされるのを最小限にくいとめるために、国内における免疫獲得率の地域差を分析把握することが大切です。病原体を輸入する可能性の高い地域及び経口ポリオ3価生ワクチンまたは3価不活化ワクチン/3種混合の接種率が80%未満の地域は優先的に実施されるべきです。

 WHOの海外旅行と健康では、ポリオ発生地域を往来するすべての旅行者はポリオに対する十分なワクチン接種を推奨しています。野生株ポリオの地域流行が継続しているのは、ナイジェリア、パキスタン、アフガニスタンの3か国です。さらに2013年にはアフリカの角と呼ばれる地域で野生株ポリオの発生がありました。

(2013年7月15日 WHO報告)