(No.62)

中東でのポリオの流行 平成26年3月26日更新

 中東ではポリオが集団発生している地域で、集団発生を止めるための対応が続いています。3月20日の時点でシリア・アラブ共和国では野生株ポリオウイルス1型(WPV1型)の感染が37例報告されています。うち25例がシリア・アラブ共和国の保健省から報告され、内戦のある地域(アレッポ、イドリブ、デリゾール)での12例は未だ統計に反映されていません。最近の症例は2013年12月17日にイドリブで麻痺性の症例が報告されています。

 イラクでは2000年以来初となるWPV1の事例が報告され、地域的な感染拡大の更なる証拠が確認されました。
 患者はバグダッドに住むワクチン未接種の6ヶ月の乳児で、今年2月14日に麻痺症状を呈しました。遺伝子解析により、ウイルスはシリアで検出されたウイルスに密接に関連していることが分かりました。この乳児の3歳の姉からもWPV1型が検出されましたが、麻痺症状は呈していません。イラクでは、2013年10月にシリアでポリオが確認されて以来中東の緊急対応の一翼を担ってきたので、この事例を迅速に制御できる見込みがあります。WHOの東地中海地域の加盟国は、共同決議でポリオの根絶が緊急事態であること宣言し、現在、ポリオの予防接種を受けていない子供がうけれるように、交渉の中で支援を呼びかけました。2013年10月以降、イラクでは2回の全国予防接種キャンペーンと3回の地方予防接種キャンペーンが実施されており、良い成果が出ています。

 地域によって変わりますが、それぞれのキャンペーンにより、約95%の子どもが予防接種を受けたと報告されています。WHOと国連児童基金 (UNICEF)は、イラクの定期予防接種の接種率は2012年以降70%と推測しています。バグダッドの定期予防接種の接種率は81%と推測されています。
 集団発生への対応の一部として、特にシリア・アラブ共和国では、感染拡大の程度を確認するために、地域の調査の感度を高くするための取り組みが進められています。特に、ダマスカス、アレッポ、ホムス、ラタキア、クネイトラ、ラッカでは、地域での調査に格差があります。デリゾールを含むシリアの北東部では、調査の質が改善されつつあります。

 現在、地域での集団発生対応計画の第1段階が完了しました。2013年10月以降、この地域では、2,200万人以上の子どもが複数回、予防接種を受けるために、24回の追加予防接種活動(SIAs)が実施されました。実施された追加予防接種活動は、エジプト(全国で2回、地域で1回)、イラク(全国で2回、地域で3回)、ヨルダン(全国で3回)、レバノン(全国で3回)、シリア(全国で5回)、トルコ(地域で3回)、ヨルダン川西岸地区とガザ地区(2回)で行われました。第2段階は4月1日から始まる予定で、全国の予防接種キャンペーンは、エジプト(4月1日から3日)、シリアとイラク(いずれも4月6日から10日)、レバノン(4月)で行われる予定です。5月にもこの地域全体で予防接種キャンペーンが行われる予定です。

 イスラエルでは、環境のサーベイランスからWPV1型陽性の検出が続いています。2013年2月3日以降、186検体が陽性となり、直近では2月16日に検出されました。ヨルダン川西岸地区とガザ地区では、環境のサーベイランスでWPV1型陽性の検体は3検体であり、直近では2013年1月に検出されました。イスラエル、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区では、ポリオの患者は発見されておらず、汚水の検体から分離されたのみです。この地域では、監視は依然として警戒水準にあり、地域内の国はポリオの可能性のある患者を積極的に発見し、経口ポリオワクチンによる推奨された追加予防接種キャンペーンを実施するよう求められています。WHOは、この地域からポリオが国際的に広がるリスク評価は高いままとしています。

 WHOの「国際渡航と健康(International Travel and Health)」では、ポリオの発生地域に行くすべての渡航者と、発生地域から出るすべての渡航者に対し、ポリオワクチンを規定の回数分接種することを推奨しています。