(No.72)

ギニアでのエボラ出血熱の集団発生(6) 平成26年4月2日更新

 2014年4月1日の更新情報です。この更新情報と今後の報告例ではエボラ出血熱を国際疾病分類(ICD-10)に基づき、エボラウイルス病(EVD)に置き換えます。この報告ではギニア、リベリア、シエラレオネでのエボラウイルス病(EVD)の更新情報を提供します。

 3月31日、ギニア保健省は、臨床的にEVDとして矛盾しない事例が122例、うちPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法による診断確定例が24例、可能性例78例、疑い例22例を報告しました。80例の死亡例のうち、13例(16%)がEVDの診断が確定しており、残りの67例は可能性例として考えられています。3月28日以降、19例の新たな症例と14例の死亡例が発生し、30日の時点で20例の患者が隔離されています。可能性例や疑い例に、医療従事者が11人含まれます。症例は、コナクリ県で11例、ゲケドゥ県で77例、マセンタ県で23例、キシドゥーグー県で8例、ダボラ県とダンギレ県で3例が報告されています。

 現在、症例調査と接触者の追跡調査は続いており、400人の接触者が経過観察(健康監視)されています。医療施設での感染予防と管理のさらなる強化は、優先順位の高い対策(介入)です。さらに、手洗いの実施、地域での患者への安全な接し方、潜在的に汚染された可能性のある血液・体液を取り扱う場合や周囲環境の清掃・消毒の際のPPE(個人防護具)の使用、死者の安全な埋葬、等の項目を含む個人防護対策(personal protective measure)が、EVDの伝搬予防上重要であるということを、地域(住民)に啓発する努力が継続されています。

 3月14日から30日の間に、リベリアの保健省は、2例の確定例を含む8例の EVDと臨床的に合致した(矛盾しない)症例を報告しています。確定例の2例は、ロファ郡から報告されています。確定例1例と可能性例1例の2例が死亡しています。接触者の追跡調査が行われています。

 リベリアで行われている対策内容には、保健・社会福祉省と広報省(情報省)による記者会見、EVDの予防・管理ガイドラインの医療従事者への配布、患者を発見するための(医療)従事者の訓練、接触者の追跡調査や経過観察、臨床症例のマネージメント、感染予防や管理、検体採取の取り扱いと輸送、死亡した患者の安全な取り扱い等が含まれます。保健・社会福祉省とWHOの職員が、技術的支援や感染制御活動を調整するためにロファ郡へ入りました。

 疑い例から採取した臨床検体は、ギニアのコナクリ県の研究所に送付され検査されています。集中的な地域啓発活動は、マスメディア、社会活動や対人コミュニケーション、テキストメッセージを送付する電話サービスを通じて、等でも行われています。

 シエラレオネの保健省は、ギニアで死亡して遺体をシエラレオネに送還された家族の中に、EVDの可能性例2人がいたことを受け、高レベルの警戒を続けています。現在までに、積極的な監視活動からは新たな疑い例は特定されず、死亡者の接触者全員の健康状態は良好です。

 状況は急速に変化するため、報告された死亡者数や医療監視下にある接触者数、確定患者数は予備的であり、監視活動の強化や接触者の積極的な追跡調査、研究所における継続中の検査結果により発生数は変化します。

 WHOは、この事例に関して、ギニア、リベリア、シエラレオネへの渡航や貿易を制限することを推奨していません。

 ほとんどのヒト感染は、主に病院における感染患者の体液もしくは分泌液の直接的な接触(院内感染)、汚染された医療器機(注射針や注射器を含む) の不安全な手順による使用や汚染された体液への無防備な曝露により発生しているため、旅行者の感染リスクは非常に低い状況です。旅行者は、感染した患者との接触をすべて避ける必要があります。医療従事者もしくは集団発生の調査に関与している者は、マスク、手袋、ガウン、ゴーグルなどの防護具を着用して、適切な感染予防と管理の対策を実践すべきです。

 エボラウイルス病が最近報告されている地域に滞在したことがある人は、EVDの症状留意し、EVDの最初の徴候が現れたら医師の診察を受ける必要があります。臨床医は、これらの地域の渡航者で適合した症状がある場合は、エボラウイルス病の可能性を検討することを推奨します。マラリア、腸チフス、細菌性赤痢、コレラ、レプトスピラ症、ペスト、リケッチア症、回帰熱、髄膜炎、肝炎および他のウイルス性出血熱は、これらの患者において考慮すべき鑑別診断です。

 旅行の健康リスクと予防に関するさらなる助言は、WHOの国際旅行と健康のウェブサイトで確認することができます。(www.who.int/ith/en/)(外部リンク:英語)

(2014年4月1日WHO報告)