(No.77)

西アフリカでのエボラ出血熱の集団発生(2) 平成26年4月7日更新

(ギニア・リベリア・シエラレオネ・マリ)

 4月5日の更新情報です。4月4日、ギニア保健省は、累計143例の臨床的にエボラウイルス病(EVD)として矛盾しない事例、うちPCR法による診断確定例54例を報告しました。この数には86例の死亡例が含まれます(致死率60%)。新しい症例はコナクリ、ゲケドゥ、マセンタから報告されており、23人の患者が隔離されています。最も新しい診断確定例の発症日は4月3日です。

 現在報告されている地域別の臨床診断例、診断確定例および死亡例は、コナクリ県で18例(うち死亡例5)、ゲケドゥ県で85例(うち死亡例59)、マセンタ県で27例(うち死亡例14)、キシドゥーグー県で9例(うち死亡例5)、ダボラ県とダンギレ県で4例(うち死亡例3)です。コナクリ県の18例は、EVDが検査で確認されています。

 感染を受けた医療従事者(HCW)の人数は、以前報告された14人から増加していませんが、この中に、8人の死亡例と11人の診断確定例が含まれます。86人の死亡者のうち、16人が診断確定例で、65人が可能性例、5人が疑い例に分類されています。

 症例調査と接触者の追跡調査は続いており、623人の接触者が健康監視されています。患者との最終接触からEVDの潜伏期間21日が経過した49人は監視から解放された一方で、4月3日に新たに74人の接触者が加わりました。

 調査のための検査支援は、セネガルのダカールにあるパスツール研究所やゲケドゥの出張研究所から提供されています。研究所の機能は、フランスのリヨンにあるパスツール研究所、ドイツのハンブルグにあるベルンハルト・ノホト熱帯医学研究所、セネガルのダカールにあるパスツール研究所、フランスのリヨンにある国際感染症研究所(CIRI)から提供されています。

 WHOは、地球規模の感染症に対する警戒と対応ネットワーク(GOARN)と連携して、研究所の支援を行い、人類学、疫学、兵站学、患者管理や感染予防・管理の専門家を派遣して、ギニアでの集団発生への対策を支援しています。

 リベリアの保健・社会福祉省(MOHSW)は、18例の疑い例と2例の確定例を報告しています。3月24日以降の7例の死亡例が含まれています(致死率31%)。現在、可能性例の2人が隔離解除となりましたが、7人の患者が隔離されています。4月4日に新たに4例の臨床的にEVDとして矛盾しない事例が報告されました。疑い例の1人は医療従事者で、診断確定例であるロファ郡の姉妹は死亡しました。

 疑い例は、ニンバ郡タピタの病院で治療を受けて隔離施設への搬送後に死亡した狩猟者、ギニアから旅行してきた臨床的に矛盾しない3歳の男児が含まれています。死亡した狩猟者は、リベリアもしくはギニアにおける患者との接触歴がなく、動物からの感染源(ブッシュミート:野生動物の肉)を除外するための調査が行われています。これらの疑い例の検査結果は、どちらも結果は未だ判明していません。MOHSWは、ロファ郡のフォヤからモンセラード郡のモンロビヤとマージビ郡のファイアストーンに旅行していた2例目の診断確定例の接触者を含めた46人の接触者を健康監視下に置きました。研究所で検査を行うために、合計21検体がギニアのコナクリへ送られました。リベリアでEVDが懸念されているのは、ロファ郡、ニンバ郡、マージビ郡とモンセラード郡です。

 対策として、リベリアは、EVDのさらなる拡大を防ぐために活動の質を強化しています。国家チームが対策支援者と日々の調整会議を行っています。世界保健機関(WHO)は、EVDの予防と管理に関する高いレベルでの説明会を議会両院の合同会議で開催し、疫学および感染予防と管理の専門家を派遣して、公衆通信を含めた技術的な専門支援の提供を続けています。リベリアのWHO事務所は、重要な資機材は集団発生の対策に必要となるため、MOHSWと密に連携して地域における調達や供給などの必要性の評価を実施しています。また、WHOは、症例の基礎データ収集のためのさらなるテンプレートの開発や技術支援を追跡するために、MOHSWの医療情報システムチームと協働しています。地域の専門家やGOARNの支援者が追加展開され、調整活動や感染予防・管理、リスクコミュニケーション、社会的動員に対する支援が計画されています。

 MOHSWとWHOの要請により、シエラレオネのケネマにあるメタビオタ研究所は、その他の分析として、ザイールエボラウイルスの特異的リアルタイム-PCR、フィロウイルスPCR、黄熱・マールブルグウイルスPCRを導入する予定です。この技術はメタビオタ研究所から移送されています。また、メタビオタは、リベリアで研究所職員の訓練を行う予定です。

 WHO、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、MSF(国境なき医師団)、セーブ・ザ・チルドレン、その他の支援者により、医療施設のための個人用防護具を含めた医療用品や器機が供給されています。7つの隔離施設が5群に設置されています。MSFは、EVD流行地域の医療従事者に対して、隔離施設の設置を含めた患者管理に関する研修を実施しています。さらに60人の医療従事者が、マージビ郡で訓練を受けています。リベリアでは、メディアや通信分野によって、地域社会の教育と社会的動員活動が強力に支援されています。地元政府関係者、地域社会や宗教の指導者、伝統的治療師が、予防と管理活動においてMOHSWを支援するために要請されていますが、調査や健康増進を拡大させ、学校、宗教的な集会、市場、職場への社会的動員活動を拡大させるためのさらなる財源が必要とされています。戸別訪問のための住民の動員も計画されています。

 マリ保健省は、クリコロ州のシビリボーグにある医療施設に紹介された4人が、ウイルス性出血熱の疑いがあることをWHOに報告しました。疑い例のうち2人は、ギニアへの渡航歴がありました。患者は、疫学調査と検査を行うために隔離されています。接触者の追跡が行われています。検査を行うために、臨床検体が米国アトランタの疾病管理予防センター(CDC)に送付されました。地域における疫学的調査が強化されており、疑い患者の特定や治療を行うための緊急対応チームが動員されています。隔離施設はバマコで準備されており、他の地域にも備え付けられています。情報ホットラインは一般に公開されています。

 ギニアで死亡して遺体をシエラレオネに送還された家族の中に、EVDの可能性例2人がいたというシエラレオネの状況に変化はありません。チーフメディカルオフィサー(CMO)の事務所は、エボラ出血熱の疑い例だけではなく、経過観察の調査に関連したすべての操作を調整しています。強化された疫学調査と公共の教育活動は継続されています。保健衛生省(MOHS)の高官は、現在の予防と対応計画について国境当局を啓発するためにシエラレオネとギニアの間にある国境を訪れ、公衆衛生医官は社会動員活動を支援するために国境の地域住民(コミュニティー)を訪問しています。ケネマのメタビオタ研究所は、MOHS、WHO、シエラレオネの国立事務所と連携して、エボラウイルスの特異的検査に必要な資材一式と、局地的に流行している他の重要なウイルス性出血熱の鑑別診断方を確立しています。検査の詳細については、リベリアにおけるメタビオタの活動としてこの報告で説明されています。

 状況は急速に変化するため、報告された症例数や死亡者数、医療監視下にある接触者数、診断確定症例数は予備的であり、監視活動の強化や接触者の積極的な追跡調査、研究所における継続中の検査結果により発生数は変化します。

 WHOは、この事例に関して、ギニア、リベリア、シエラレオネ、マリへの渡航や貿易を制限することを推奨していません。