(No.85)

西アフリカにおけるエボラ出血熱の集団発生(4)  平成26年4月14日更新

(ギニア・リベリア・マリ・シエラレオネ)
 4月10日の更新情報です。ギニア保健省は、4月9日の時点で、101人の死亡者を含む累計158例の臨床的にエボラウイルス病(EVD)として矛盾しない事例を公式に報告しています。コナクリの研究所調査はダカールのパスツール研究所(IP)で続いており(65検体を検査して38検体でエボラウイルス陽性)、ゲケドゥの研究所調査は欧州合同臨時研究所(EMLab)で続いています(38検体を検査して28検体でエボラウイルス陽性)。臨床的に矛盾しない事例のうち計66例(42%)が診断確定例であり、残りの87例が可能性例、4例が疑い例です。101人の死亡者のうち24人が診断確定例です。ギニアの6地域で患者が報告されており、コナクリ県で20例(すべて診断確定例)、ゲケドゥ県で96例(うち診断確定例32)、マセンタ県で28例(うち診断確定例12)、キシドゥーグー県で9例(うち診断確定例1)、ダボラ県とダンギレ県で5例(うち診断確定例1)です。コナクリとゲケドゥにおける臨床的に疑われる症例の最も新しい発症日は4月8日でした。4月7日以降、1人の医療従事者(HCW)の感染が報告されており、合計15人となっています(診断確定例10、可能性例5)。453人の追跡調査は終了しましたが、488人症例調査が続いています。4月8日以降に新たな接触者は確認されていません。

 ギニア保健省の臨床治療委員会は、コナクリにある主要な病院や他の治療場所における評価と訓練のプログラムに同意しています。世界保健機関(WHO)は、患者管理と感染防御・制御(ICP)における医療従事者の支援を続けています。ICPは、コナクリにあるキペ病院とドンカ病院、ゲケドゥ、マセンタ、キシドゥーグゥーの県立病院で補強されています。感染を受けた地域への医療出張サービスは、ギニア保健省、国境なき医師団、WHOからの臨床医のチームによって提供されています。


 リベリア保健・社会福祉省(MOHSW)は、4月10日の時点で、5例のEVD診断確定例と20例の疑い例を報告しています。最も新しい診断確定例の発症日は4月6日で、現在6人の患者が入院しています。現在までに報告された臨床例の32%をロファ郡が占めており(診断確定例4、疑い例6)、マージビ郡が27%で続いています(診断確定例1、疑い例3)。モンセラード郡とグランドケープマウント郡は、それぞれ1例ずつの疑い例を報告しています。接触者の32%が現在も医療監視下にあります。EVDが起因した死亡者の累積数は12人です(ロファ郡9人、ニンバ郡1人、マージビ郡1人、モンセラード郡1人)。5例の診断確定例はいずれも死亡しており、ロファ郡(4人)とマージビ郡(1人)で確認されています。

 リベリア保健・社会福祉省は、チーフメディカルオフィサーの指揮下で、国家チームによる毎日の会議を開催しています。また、関係者との日々の連携会議は、モンロビア郡、ロファ郡、ボング郡、マージビ郡、ニンバ郡、ケープマウント郡の地方自治体により開催されています。医療従事者の訓練の強化、毎日の記者会見を含めたリスクコミュニケーション、地元の方言に合わせたEVD公共教育メッセージの放映、様々な社会動員活動などの対策活動が続いています。地域の指導者は、宗教指導者や伝統的治療師のネットワークを通して、国民の啓発キャンペーンを実施しています。


 マリ保健省は、4月10日の時点で、2例の疑い例がアトランタのアメリカ疾病予防管理センター(CDC)で検査され、エボラウイルスおよび他のウイルス性出血熱のウイルスに対して陰性が確認された後に、累計6例の疑い例を報告しています。これまでに、すべての疑い例から臨床検体が採取されています。残り6例の疑い例の検体は、検査を実施するために、ダカールのパスツール研究所に送付されています。検査で陰性が確認された患者は医療的な経過観察が解除され、患者家族に対するカウンセリングが提供されています。ラッサ熱を管理するために設計されたバマコの国立センター(CNAM)が、隔離施設としてEVDの疑い患者を受け入れています。マリのクリコロ州にあるKourémaléから2人、Bankoumanaから1人の疑い例も報告されています。マリ保健省は、EVDに関する社会的動員とリスクコミュニケーション、感染予防・制御、接触者の追跡、及び医療従事者のための追加の個人防護具(PPE)や必須医薬品を含めた資源の確保などの対策を関係者と協同で強化しています。


 シエラレオネの疫学的状況は変わっていませんが、保健衛生省(MOHS)は、集中的なEVDの準備活動を指揮し続けています。保健衛生省の所長を含めた、疾病予防・制御の担当者と国民健康教育プログラムの担当者から成る7つのチームが、EVDへの備えや対策、備品の供給などを含めた準備状況を地方自治体と評価するために、リベリアとギニアに国境を接する地区(カンビア地区、ケネマ地区、コインドゥグ地区、カイラフン地区、ボンバリ地区、プシェフン地区、コノ地区)へ派遣されています。計画されている活動には、ケネマ国立病院ラッサ熱ユニットの中堅医師や看護師の訓練や、フリータウンにおける港湾衛生や疫学調査担当者の訓練も含まれています。


 WHOは、地球規模の感染症に対する警戒と対応ネットワーク(GOARN)と協同して、各地の研究所の支援を展開し、感染を受けた全ての地域における対策活動を支援するため、人類学、疫学およびデータ管理、集団発生時の物流、患者の臨床管理と感染予防・制御、社会的動員、リスクコミュニケーション、集団発生の調整などの専門家を特定して派遣する事を継続しています。これまでに、50以上の専門家が配備され、PPEや地域に合わせたEVDの啓発や教育の教材を含めた対策支援が、感染を受けた国と近隣諸国に提供されています

 西アフリカにおけるEVDの状況は急速に変化しており、報告された症例数や死亡者数、医療監視下にある接触者数、診断確定症例数は予備的であり、監視活動の強化や接触者の積極的な追跡調査、研究所における継続中の検査結果により発生数は変化します。

 WHOは、この事例に関して、ギニア、リベリア、マリ、シエラレオネへの渡航や貿易を制限することを推奨していません。