(No.142)

下水からポリオウイルスの検出 平成26年6月27日更新

 6月18日国際保健規則のブラジル連絡窓口からの報告によりますと今年3月、ブラジルのサンパウロ州のカンピーナス市郊外にあるヴィラコッポス国際空港で収集された下水の検体より野生型ポリオウイルスⅠ型(WPV1)が分離されたとのことです。同ウイルスが分離されたのは下水からのみで、その後は同じ場所の下水から分離されておらず、セービン株(ポリオワクチンに使用される株)や非ポリオエンテロウイルスが分離されているのみです。現在まで麻痺性ポリオの報告はあがっていません。今回はルーチン環境検査のための下水検査において分離されたものでWPV1の感染の証拠はありません。

 遺伝子解析では今回のWPV1は赤道ギニアの患者から分離されたWPV1によく合致するものであり、さらなる疫学的調査が進行中です。アメリカ大陸には土着のWPVは1991年以降存在せず、ブラジルでも1989年以降存在していません。

 ブラジルの保健担当部門はワクチン未接種者と共に、麻痺性ポリオの可能性例、WPV1の感染を調査する目的でサーベイランスを強化してきました。サンパウロ州及びカンピーナス市では95%以上ポリオワクチンの定期接種率を示しています。

 最新の国家経口ポリオワクチン(OPV)接種キャンペーンは2013年6月に実施されました。今年の国家レベルでのキャンペーンはOPVを用いて6ヶ月から5歳未満を対象に11月に実施される予定です。ブラジルでは環境調査で実施されている他地域での検体では1994年以降WPVについて陰性が続いています。

 定期予防接種が人口の高率で実施され、定期的にワクチンキャンペーンが実施されているため住民の免疫能は高いことから、これまでWPV1の感染の根拠は無く、対策が実施されていることから、世界保健機関(WHO)はブラジルから国際的に同ウイルスが拡散する可能性は非常に低いとみています。一方赤道ギニアではWPV1の発生が続いており、国民の定期予防接種率が低いこと初発時の対策としてのワクチンキャンペーンに統一性が無いことから、WHOは同国からのウイルスの拡散の可能性は高いとみています。

 WHOによりますとブラジルはWPVの再汚染国では無く、持ち込まれたもの(輸入例)であるとしています。環境サーベイランスシステムは下水検体からポリオウイルスを検出する十分な能力を発揮しており、高い免疫獲得率は感染拡大を予防しているとしています。

 WHOの「International Travel and Health」ではポリオの発生した国地域に出入りする旅行者は十分に免疫を獲得しておくことを推奨しています。ブラジルは持ち込まれたポリオウイルスを発見したのであり、ポリオに汚染されている形跡があるという判断はなされません。