(No.152)

西アフリカにおけるエボラ出血熱の集団発生(27)  平成26年7月4日更新

疫学とサーベイランス

 ギニア、シエラレオネ、リベリアでのエボラウイルス感染症(EVD)の流行の進展は、原発例や続発例のウイルス伝播が都市部と農村部の両方で継続しており、深刻な状況が続いています。現在の傾向と流行の継続的な拡大の潜在的なリスク要因の分析が、行われています。亜地域でのEVDの継続的な伝播に関与する主な要因は、以下の通りです。

 非建設的(効果の無い)な文化的慣習や伝統的な信仰により、推奨される公衆衛生上の予防措置を採用する事に対し、不信や不安、抵抗が生じています。これはEVD患者の隠蔽やEVD患者の在宅管理、遺体の慣習的な処理など、稚拙な保健管理に起因する要求行為(医療が受けれない人々による手探りの行動)を含んでいます。これらは地域社会の中でエボラウイルスの大規模な曝露へと導く、危険度の高い行為です。このため地域での死亡例が報告され続けています。さらに家庭でのEVD患者への潜在的な接触や慣習的な埋葬手順の中での曝露は隅々まで特定されておらず、監視下にも置かれていません。(エボラウイルスが地域での伝播を封じ込むには非常に重要な措置)したがって、これが流行を増幅する主な要因であります。

 国境周囲での人々の大規模な動きが、3ヶ国間での急速な感染拡大を助長しました。国境地域に住む同一の地域社会内内で、国境を越えて病気の親戚を訪問したり、親戚の埋葬儀式に出席するなど、ウイルスの伝播を拡大させるような共通の社会文化的な活動があります。さらに国境を越えるという行為により、何人かの接触者の経過観察ができなくなり、接触者の追跡や経過観察が複雑になってきています。

 現在、効果的に流行防止対策が実施されている範囲は広いわけではありません。3カ国間での今までにないEVDの地理的な拡大により、人的資本、財政、運用、物流の面で莫大かつ強固な対応能力と構造が必要です。今回、西アフリカで初めて大きなEVD流行があり、影響を受けた国々は、特にウイルス性出血熱などの流行への準備と対策に関する能力や基盤が脆弱でした。地域社会の理解が、感染者への接触を制限し、感染拡大防止のための効果的な手段となります。

保健セクターの対応

 エボラウイルスの感染拡大を早期に防ぐ努力として、世界保健機関(WHO)は西アフリカのエボラウイルス感染症の流行についての特別閣僚会議を招集しました。会議は7月2日3日にガーナのアクラで開催され、11のアフリカ諸国(コートジボワール、コンゴ民主共和国、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、リベリア、マリ、セネガル、シエラレオネ、ウガンダ)から保健当局の大臣だけでなく、協力者、EVDの生存者、航空会社や鉱山会社、ドナーコミュニティの代表者が参加しました。会議の目的は、現在および将来においてヒトでのEVD流行による社会的•経済的影響を少なくするために、西アフリカの継続的なエボラウイルスの伝播を止めるための最適な方法について、加盟国や協力者からの合意を得ることでありました。会議は、流行を制御するための総合的な運用対応計画の開発、リスク国によって実施される優先的な準備活動、EVD流行に対応するための国家当局の関与など、ズレや課題を含めた現在の状況や対策における明確な理解を得る事を焦点に当てていました。

 WHO、国際感染症対策ネットワーク(GOARN)の技術的協力者、国連機関、その他協力者は地域社会や医療施設でのEVDの伝播を止めるために必要な技術的支援を保健省に提供し続けています。

 支援は専門家の追加配置、現場の物流の提供、フィールド研究室を含む設備の提供、個人用保護具や医療物資を含む機器の提供という形で提供されています。

 WHOは、この事例に関する現在の情報からは、ギニア、リベリア、シエラレオネへの渡航や貿易を制限することを推奨していません。

統計学的要約

 EVDによる新たな症例や死亡例がギニア、リベリア、シエラレオネの3つの西アフリカ諸国の保健省によって報告され続けています。2014年7月1日と2日の間に、14例の死亡例を含む21例の新たな感染例が3ヶ国から報告されました。詳細は以下の通りです。ギニア(新規症例なし、死亡者2例)、リベリア(新規症例8例、死亡者10例)、シエラレオネ(新規症例13例、死亡者2例)です。この数字は、EVD確定例、可能性例、疑い症例、死亡例を含んでいます。

 2014年7月2日時点で、3ヶ国で481例の死亡者を含むEVD累積患者数は779例です。症例の分布や分類は以下の通りです。ギニアのEVD症例412例(確定例292例、可能性例100例、疑い例20例)、死亡例305例(確定例194例、可能性例94例、疑い例17例)、リベリアのEVD症例115例(確定例54例、可能性例24例、疑い例37例)、死亡例75例(確定例38例、可能性例22例、疑い例15例)、シエラレオネのEVD症例252例(確定例211例、可能性例35例、疑い例6例)、死亡例101例(確定例67例、可能性例29例、疑い例5例)です。統計をまとめた表を最後に添付しています。

新症例 確定例 可能性例 疑い例 総数
ギニア 症例数 0 292 100 20 412
死亡例 2 194 94 17 305
リベリア 症例 8 54 24 37 115
死亡 10 38 22 15 75
シエラレオネ 症例 13 211 35 6 252
死亡例 2 67 29 5 101
総数 症例 21 557 159 63 779
死亡数 14 299 145 37 481