(No.159)

西アフリカにおけるエボラ出血熱の集団発生(30)  平成26年7月16日更新

疫学とサーベイランス

世界保健機関(WHO)は、ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるエボラウイルス疾患(EVD)の流行状況を厳重に監視し続けています。新たな患者と死亡者が多数報告されているシエラレオネとリベリアの現在の流行状況は深刻なままです。2014年7月8日から12日までの間に、リベリアとシエラレオネから新たな患者79人との死亡者65人が報告されました。リベリアからは新たな患者30人との死亡者13人、シエラレオネからは新たな患者49人との死亡者52人が報告されています。これらの人数には、疑い例、可能性例、診断確定例が含まれています。この傾向は、コミュニティでエボラウイルスが高いレベルで伝播し続けていることを示しています。ギニアでは、2014年7月8日から12日までの間に、新たな患者6人との死亡者3人が報告され、流行状況が厳重に監視されています。当該国の保健省は、集団発生の封じ込め政策を強化するために、WHOや関係機関と協働しています。

保健部門の対策

アクラ(ガーナ)で開催された地域担当者の緊急閣僚会議に継続して行われる対策として、WHOのアフリカ地域は、ギニアのコナクリに設置されている小地域調整センターへの上級、技術、支援の職員を再配備することを決定しています。人員の再割り当てには、ディレクター、地域アドバイザー、疫学者、コミュニティの専門家、社会的動員の専門家、データマネージャー、行政官、及びその他の支援スタッフが含まれています。調整センターを設置する準備は完了されており、2014年7月15日にセンターの業務が活発化される予定です。このセンターは、西アフリカ諸国への技術的支援の強化と調和、資源動員を支援するための調整と連携の基盤として機能します。

WHOからの支援を受けている流行3カ国では、現在のEVD国家対策計画の見直しと更新を行う過程を開始しました。この行動は、アクラの保健大臣によって採用された国別の戦略に合わせ、国の運用計画の策定に優先順位をつけることにつながります。運用計画では優先的な介入が明らかに強調され、集団発生の封じ込め対策を効果的に実施するために必要とされる資源(人材、資金、物流)の計画が作成されます。加えて、これらの文書(計画)は、追加資源を動員するために不可欠となります。

WHOは現在、流行国を支援し、最も効果的な大規模感染抑制対策の一つとして、接触者の追跡を強化しています。新しいEVD患者の早期発見と迅速な隔離は、コミュニティにおけるエボラウイルスの二次伝播を遮断するための必要条件です。このため、WHOは、リベリア保健社会福祉省(MOHSW)を支援し、107のコミュニティボランティアと33の監督者を特定して訓練しました。シエラレオネでは、合計296のコミュニティボランティアが訓練されています。訓練を受けたボランティアが、接触者の追跡調査の実施とコミュニティからEVD疑い患者の即時隔離を確保するために、感染地域に展開されています。リベリアMOHSWの要求に応じて、WHOはアメリカ合衆国政府の支援を受けて、医療従事者の安全を確保するために、個人防護具(PPE)と他の医療物資をリベリアに提供しています。この寄付は、臨床治療と埋葬のチーム両方によって適切に使用するためのPPEを含めて、6月26日と7月3日にリベリアMOHSWへ引き渡されました。7月14日には、バイオハザード廃棄物のための廃棄用バッグだけではなく、消毒用のバックパックスプレーやハンドスプレーを含めた追加の資源がリベリアに提供されました。

 WHOは、この事例に関する現在の情報からは、ギニア、リベリア、シエラレオネへの渡航や貿易を制限することを推奨していません。

患者数情報の更新

EVDの新たな患者と死亡者について、西アフリカ3カ国ギニア、リベリア、シエラレオネの保健省から報告が続いています。2014年7月8日から12日の間に、死亡者68人を含むEVDの新たな患者85人が3カ国から報告されました。ギニアでは患者6人と死亡者3人、リベリアでは患者30人と死亡者13人、シエラレオネでは患者49人と死亡者52人です。これら人数には、診断確定例、可能性例、疑い例と死亡例が含まれています。
2014年7月12日までに、3カ国でEVDに感染した患者の累計数は、死亡者603人を含めて964人となりました。患者の分布と分類は以下のとおりです。ギニア:患者406人(確定例297人、可能性例92人、疑い例17人)・死亡者304人(確定例198人、可能性例92人、疑い例14人)、リベリア:患者172人(確定例70人、可能性例41人、疑い例61人)・死亡者105人(確定例48人、可能性例 33人、疑い例24人)、シエラレオネ:患者386人(確定例339人、可能性例37人、疑い例10人)・死亡者194人(確定例151人、可能性例38人、疑い例5人)。統計の概要表は以下のとおりです。

2014年7月12日時点のギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD診断確定例、可能性例、疑い例、死亡例


新症例 確定例 可能性例 疑い例 総数
ギニア 症例数 6 297 92 17 406
死亡例 3 198 92 14 304
リベリア 症例 30 70 41 61 172
死亡 13 48 33 24 105
シエラレオネ 症例 49 339 37 10 386
死亡例 52 151 38 5 194
総数 症例 85 706 170 88 964
死亡者 68 397 163 43 603

※ 新症例は2014年7月8日から12日までに報告された患者

 患者数の総数は、分類変更、後ろ向き調査、患者や検査データの統合、そして強化サーベイランスにより変化します。記載されているデータは、保健省から報告された最も有用性の高い情報に基づいています。