(No.203)

エボラ対応に関するロードマップ2 平成26年10月3日更新

 2014年10月3日、WHO(世界保健機関)は、エボラ対応に関するロードマップを更新しました。
 ロードマップの体系に沿って、国別の報告は2つのカテゴリーに分類されます。1つは、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)、もう1つは、初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国(ナイジェリア、セネガル、アメリカ合衆国)です。今回の更新より、アメリカ合衆国が追加となりました。また、西アフリカにおけるエボラウイルス疾患(EVD)の流行とは関連のない、別のエボラ流行が発生しているコンゴ民主共和国の状況についても示されています(別掲参照)。


1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
 現在、西アフリカ諸国で流行中のEVDにおいて、患者7,470人(確定例、可能性例、疑い例)と死亡者3,431人が、2014年10月1日の終わりにギニア保健省とシエラレオネ保健省から、2014年9月30日の終わりにリベリア保健省から報告されています(表1参照)。

表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数

国名

症例定義

症例数

死亡者数

ギニア

確定

977

562

可能性

177

177

疑い

45

0

国別総数

1,199

739

リベリ

確定

931

934

可能性

1,713

677

疑い

1,190

458

国別総数

3,834

2,069

シエラレオネ

確定

2,179

575

可能性

37

37

疑い

221

11

国別総数

2,437

623

7,470

3,431


※リベリアでは、確定患者が報告される前に確定例の死亡者3人が報告されました。加えて、リベリアの確定例の数は、検査室の許容量の問題により、ギニアやシエラレオネと比較して小さな割合となっています。表1のデータは、2014年10月1日時点でのギニア保健省とシエラレオネ保健省からの報告、9月30日時点でのリベリア保健省からの報告による公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
 
 現在の流行におけるEVDに起因した死亡の多くは、確定例ではなく疑い例で起こっています。検査室で検体に陽性が確認された時のみ確定例となります。検体がEVDに対して陰性の場合は、その対象者はEVDによる死亡とは計上されずに数値は調整されています。しかし、特にリベリアでは、検査室や治療センターの許容範囲を超えているため、可能性例と疑い例の数を確定例と合計すると、症例数をより正確に把握することができるかもしれません。また、将来的に症例数と死亡者数が見直される可能性があり、異なるデータソース間の矛盾を解決するための作業が行われています。
 
 図1は、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国における症例の位置を示しています。それぞれの地域における累積症例数がグレー色の円で示されています。ギニアでは、リベリアとコートジボアールと国境を接するロラでEVDの確定症例が2例報告されました。この地域からEVD症例が報告されたのは今回が初めてです。

図1:広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国におけるEVD症例の分布

※図1のデータは、2014年10月1日の時点でのギニア保健省とシエラレオネ保健省からの報告、9月30日の時点でのリベリア保健省からの報告による公式情報に基づいています。この地図に示された境界線や名前、使用された記号については、いかなる意味においてもWHOの見解を示すものではありません。これはすべての国、領域、都市、地域 の法的立場、またそれぞれの当局の法的立場を考慮してのことです。地図上の点線や破線は、現在完全な合意が得られていない可能性がある部分のおよその境界を示しています。
 医療従事者におけるEVDへの暴露は、今回の流行の警戒すべき特徴として続いています。2014年10月1日の時点で、382人の医療従事者(ギニア69人、リベリア188人、ナイジェリア11人、シエラレオネ114人)がEVDを発症したことが確認されており、216名の医療従事者(ギニア35人、リベリア94人、ナイジェリア5人、シエラレオネ82人)がEVD感染で死亡しました。


2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
 ナイジェリア、セネガル、アメリカ合衆国の3か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国から入国してきた症例が報告されています。ナイジェリアでは、20症例が発生して8症例が死亡しました。セネガルでは、1症例が発生しましたが、死亡例やエボラに起因するとされる新たな疑い例は発生していません(表2)。
 2014年9月30日、WHO傘下のPAHO(汎米保健機関)は、アメリカ合衆国における最初のEVD輸入例を報告しました。患者は西アフリカへの最近の渡航歴がある成人で、9月20日に米国に到着した4日後の9月24日にエボラ様症状を発症しました。患者は9月26日にテキサス州ダラスにあるテキサス・ヘルス・プレスビテリアン病院を受診し、9月28日に隔離入院になりました。検体がジョージア州アトランタにある米国疾病管理予防センター(CDC)とテキサス州の検査室に送付され、エボラウイルス陽性が確認されました。

表2. 2014年9月22日時点のナイジェリア、セネガルにおけるEVD症例数

国名

症例定義

症例数

死亡者数

ナイジェリア

確定

19

7

可能性

1

1

疑い

0

0

国別総数

20

8

セネガル

確定

1

0

可能性

0

0

疑い

0

0

国別総数

1

0

アメリカ合衆国

確定

1

0

可能性

未報告

未報告

疑い

未報告

未報告

国別総数

1

0

22

8

※ 表2のデータは、各国の保健省からの報告による公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
 現在、接触者の追跡調査と健康監視が行われています。ナイジェリアでは、すべての接触者891人(ラゴス362人、ポート・ハーコート529人)が21日間の健康監視を終えました。最後に確定例が隔離されたのは8月31日です。セネガルでは、すべての接触者が現時点で21日間の経過観察を終え、さらなるEVD症例は報告されていません。セネガルにおける唯一の確定例は、8月26日に隔離されました。アメリカ合衆国では、曝露後21日間の健康監視を要する濃厚接触者の特定が進行中です。

別掲. コンゴ民主共和国におけるエボラ流行
 2014年10月1日現在、コンゴ民主共和国(DRC)において、70人のEVD症例(確定例30人、可能性例26人、疑い例14人)が報告されており、このうち8人が医療従事者で発生しています。また、合計43人の死亡者が報告されており、このうち8人が医療従事者でした。
 現在、778人(1,121人のうち)の接触者が21日間の健康監視を終えました。343人の接触者が監視中で、341人(99%)が10月1日(この日がデータの報告があった最終日)に監視を受けました。この流行は、ギニア、リベリア、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネに影響を与えている流行とは関連がありません。最後に確定例が隔離されたのは9月25日です。