(No.209)

エボラ対応のロードマップに関する状況報告(4) 平成26年10月15日更新

 2014年10月15日、WHO(世界保健機関)は、エボラ対応のロードマップに関する状況報告を更新しました。
 10月12日の時点で、エボラウイルス疾患(EVD)が流行している7か国(ギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国)における確定例、可能性例、疑い例の総数は、8,997人で、このうち4,493人が死亡しています。
 疫学第41週目のデータは、リベリアからの10月12日のデータが不足しているため不完全です。これは、広範囲に及ぶ深刻なEVDの感染伝播が発生している国におけるデータ収集の困難な性質を反映しています。これらの課題は特にリベリアで残っており、公式の臨床監視システムを通じて報告される新規症例数と検査室などから報告される新規症例数との間に不整合が存在し続けています。広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国において、データソースを調整して疫学的データ収集のための能力を迅速にスケールアップするための努力が続けられています。
 しかし、ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVDの感染伝播の拡大と持続性が悪化していることは明かです。ギニアにおける新規症例数の増加は、首都コナクリと近隣のコヤ県で確定例と疑い例が上昇しています。リベリアでは、データ収集の課題が最近のデータから確定的な結論を引き出すことを困難にしています。首都モンロビアからは、ほぼ確実に過小報告されています。ロファ郡における症例数の減少は実際のようですが、この地域の症例数減少とEVD排除を維持するための努力が必要です。シエラレオネでは、首都フリータウンや周辺地区で深刻な感染伝播が続いています。
 局所的な感染伝播が発生しているナイジェリアとセネガルでは、現在、可能性例もしくは確定例との最終接触日から42日が経過しようとしています。スペインとアメリカ合衆国では、接触者の監視が続いています。
 今までにないEVDの流行を受けて、史上初めて、エボラ緊急対応のための国連ミッション・国連緊急保健ミッション(UNMEER)が設定されています。その戦略の優先事項は、疾病の拡大を止めること、感染者を治療すること、必要不可欠なサービスを確保すること、安定した環境を維持してEVDが発生していない国への拡大を防止することにあります。WHOは、このミッションの中で健康戦略やアドバイス全体に対して継続して責任を持つ予定です。また、活動の拠点をギアナのコナクリからガーナのアクラにあるUNMEERミッション本部へと移しました。10月15日から4日間、アクラで危機管理と運用計画会議が開かれる予定です。

1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
ギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、上向きの流行傾向が続いています。現在、EVD患者8,973人(確定例、可能性例、疑い例)と死亡者4,484人が、2014年10月12日の終わりにギニア保健省とシエラレオネ保健省から、10月11日の終わりにリベリア保健省から報告されています(表1参照)。

表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数

国名

症例定義

患者数

21日以内の患者数

21日以内の

患者数の割合

死亡者数

ギニア

確定

1,184

289

24

653

可能性

190

19

10

190

疑い

98

89

91

0

総数

1,472

397

27

843

リベリ

確定

950

66

7

未確定

可能性

1,923

468

24

未確定

疑い

1,376

555

40

未確定

総数

4,249

1,089

26

2,458

シエラレオネ

確定

2,849

1,110

39

926

可能性

37

0

0

157

疑い

366

220

60

100

総数

3,252

1,330

41

1,183

8.973

2,816

31

3,857

※ シエラレオネでは、可能性例が報告される前に可能性例の死亡者120人が報告されました。表1のデータは、各国の保健省による公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。

・ギニア
 ギニアでは、深刻な感染伝播が増加している証拠があります。前の週と比較して、首都コナクリから報告された新規確定例の非常にわずかな減少傾向は、10月6日から12日の間に近隣のコヤ県から新規確定例25人が報告されるという急激な増加傾向によって相殺されています。現在、ギニアでは、検査データは臨床サーベイランスと統合されているため、新たに報告された疑い例の多くは、今後数週間で再分類もしくは廃棄される可能性があります。ンゼレコレ県(29人)とKerouane県(14人)は、最近数週間で新規症例の著明な増加を示しています。マセンタ県は、10月6日から12日までの間に51人の新規症例が報告され、深刻な感染伝播が続いています。流行の起源であるゲケドゥ県では、同期間に1人の疑い例が報告されました。東部では、コートジボアールと国境を接するベイラ県とロラ県で新たな症例が報告されており、積極的なサーベイランスの必要性が強調されています。北部では、ギニアビサウと国境を接するボケ県で21日以上経過した後に活発な感染伝播が報告されました。中央部のマムー県において、初めて確定例が報告されました。

・リベリア
リベリアでは、データ収集が課題であり続けています。国や研究所の職員から得られた証言では、リベリアの状況は悪化しており、首都モンロビアの感染伝播は深刻なままであることを示唆しています。過去4週間がそうであったように、10月6日から11日までの間にモンロビアから報告された非常に少ない確定例は、臨床サーベイランスデータと検査結果の照合の継続的な遅れを反映しています。対照的に、同時期にモンロビアから報告された138人の疑い例と可能性例は、その多くが本物のEVDである可能性が高いです。モンロビアの外では、ほとんどの新規症例はボン郡(75人)とマージビ郡(28人)から報告されています。ギニアのゲケドゥと国境を接するロファ郡から報告される新規症例数は減少を続けており、本物の減少であることが示唆されています。しかし、10月6日から11日までの間に13人の新規症例が報告されており、EVD流行との関連で高い数値を示しているため、同地域内のすべての感染伝播を停止するための努力が必要となります。

・シエラレオネ
 シエラレオネでは、10月6日から12日までの間に425人の新規確定例が報告されており、EVD感染伝播が続いています。もっとも被害が大きいのは首都フリータウンの172人で、近隣地区では西部のボンバリ(94人)とポート・ロコ(67)人です。中央部のボー(22人)とトンコリリ(27人)も深刻な感染伝播が発生している地域です。最近、カイラフンとケネマは、感染伝播が穏やかになりつつあるようですが、今週はカイラフンで8人、ケネマで16人と新規症例が増加しています。

・医療従事者の感染
10月12日の終わりの時点で、427人の医療従事者がエボラウイルスに感染し、236人が死亡しています(表2)。WHOは、各ケースにおいて感染の原因を特定するための調査を行っています。初期の徴候は、感染のかなりの割合がエボラ治療の状況外で発生しています。現在、感染予防・制御の質の確認が、深刻な感染伝播が発生している3か国のエボラ治療施設で行われています。同時に、全ての医療従事者の曝露するリスクが最小限で済むように、確実に実行するための訓練の準備および関連するガイドラインに沿って、全てのエボラ治療施設に対する最適の個人用防護具の十分な供給の確保するための徹底的な努力が続けられています。

表2. 医療従事者のEVD症例数

国名

症例定義

症例数

死亡者数

ギニア

確定

68

32

可能性

8

8

疑い

0

0

国別総数

76

40

リベリア

確定

78

64

可能性

96

27

疑い

35

5

国別総数

209

96

シエラレオネ

確定

125

91

可能性

2

2

疑い

2

2

国別総数

129

95

ナイジェリア

確定

11

5

可能性

0

0

疑い

0

0

国別総数

11

5

スペイン

確定

1

0

可能性

未報告

未報告

疑い

未報告

未報告

国別総数

1

0

アメリカ合衆国

確定

1

0

可能性

未報告

未報告

疑い

未報告

未報告

国別総数

1

0

427

236

※ 表2のデータは、各国の保健省による公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。

・地理的分布
 図1は、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国における患者の位置を示しています。ギニアでは、ギニアビサウと国境を接する北部のボケ県で21日以上経過した後に活発な感染伝播が報告され、中央部のマムー県において、初めて確定例が報告されました。

図1:ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例の分布




2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
 表3のとおり、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国の4か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。
 ナイジェリアでは、20症例が発生して8症例が死亡しています。セネガルでは、1症例が発生しましたが、死亡例やエボラに起因するとされる新たな疑い例はありません。アメリカ合衆国では、2症例が発生して1症例が死亡しています。スペインでは、1症例が発生しています。
 ナイジェリアでは、すべての接触者891人(ラゴス362人、ポート・ハーコート529人)が、21日間の健康監視を終了し、新たな患者報告はありません。最後の確定例に実施された2度目のEVD検査も、9月8日に陰性であることが確認されました。セネガルでは、すべての接触者が現時点で21日間の経過観察を終え、新たな患者は報告されていません。最後の確定例に実施された2度目のEVD検査も、9月5日陰性である事が確認されました。米国では、48人の接触者が健康監視されています。
 スペインでは、13人の濃厚接触者を含む72人の接触者が監視されています。アメリカ合衆国では、125人の接触者が監視されています。

表3. ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国におけるEVD症例数

国名

症例定義

症例数

死亡者数

ナイジェリア

確定

19

7

可能性

1

1

疑い

0

0

国別総数

20

8

セネガル

確定

1

0

可能性

0

0

疑い

0

0

国別総数

0

0

スペイン

確定

1

0

可能性

未報告

未報告

疑い

未報告

未報告

国別総数

1

0

アメリカ合衆国

確定

2

1

可能性

未報告

未報告

疑い

未報告

未報告

国別総数

2

1

23

9

※ 表3のデータは、各国の保健省からの報告による公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。

別掲. コンゴ民主共和国におけるエボラ流行
 2014年10月9日の時点で、コンゴ民主共和国において、68人のEVD患者(確定例38人、可能性例28人、疑い例2人)が報告されており、このうち8人が医療従事者で発生しています。また、68人の患者のうち49人の死亡者が報告されており、このうち8人が医療従事者です。
 852人の接触者が21日間の健康監視を終えました。269人の接触者が監視中で、全員が10月9日(この日がデータ報告の最終日)に監視を受けました。この流行は、ギニア、リベリア、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネに影響を与えている流行とは関連がありません。