(No.214)

エボラ対応のロードマップに関する状況報告(5) 平成26年10月22日更新

 2014年10月19日の時点で、合計9,936人のエボラウイルス疾患(EVD)の確定例、可能性例、疑い例が、感染を受けた5か国(ギニア、リベリア、シエラレオネ、スペイン、アメリカ合衆国)と過去に感染を確認した2か国(ナイジェリア、セネガル)から報告されています。死亡者は4,877人です。
セネガルとナイジェリアでは、EVDは2014年10月17日と19日に終息宣言が出されました。
ギニア、リベリア、シエラレオネでは、依然として持続的かつ広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が持続しています。リベリアの1行政区を除く全ての区域とシエラレオネの全区域では、流行開始から、少なくとも1例の確定例や可能性例が報告されています。ギニアにおけるEVD患者発生数は落ち着いていますが、絶対数は依然高いままです。最も影響を受けている3つの国の首都での流行は深刻な状態が続いています。特に、リベリアの首都モンロビアからは過小な症例報告が続いています。局所的な感染伝播が発生しているスペインとアメリカ合衆国では、接触者の監視が継続しています。10月21日、スペイン唯一のEVD患者が2度目のEVD検査で陰性でした。スペインは監視期間中に新たな患者が発生しない限り、2度目のEVD検査陰性から42日間経過した時点で終息宣言が出されることになります。
10月22日、WHOは国際保健規則(2005)を基に第3回エボラ緊急委員会を招集しました。

 
 概要
 エボラ対応ロードマップに関する定期状況報告です。ロードマップの体系に沿って、国別の報告は3つのカテゴリーに分類されます。1つめは、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)、2つめは、初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国(ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国)、3つめは流行が蔓延する地域に隣接する国、または貿易が盛んな国(ベナン、ブルキナファソ、コートジボワール、ギニアビサウ、マリ、セネガル)です。また、西アフリカにおけるEVDの流行とは関連のない、別のEVDの流行が発生しているコンゴ民主共和国の状況についても示されています(別掲2参照)。

1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
現在、EVD患者9,911人(確定例、可能性例、疑い例)と死亡者4,868人が、2014年10月19日にギニア、シエラレオネ保健省から、10月18日にリベリア保健省から報告されています(表1参照)。
現在も、リベリアの1行政区を除く全ての区域とシエラレオネの全区域では、流行開始から少なくとも1例の確定例および可能性例が報告されています。コートジボアールとの国境を有するギニアとリベリアの8区域のうち、ギニアのマンディアナ地区だけは確定例および可能性例が報告されていません。
表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数

国名

症例定義

患者数

7日以内の患者数

7日以内の

患者数の割合

死亡者数

ギニア

確定

1,289

106

8

710

可能性

193

3

2

193

疑い

58

0

0

1

総数

1,540

109

7

904

リベリ

確定

965

17

2

1,241

可能性

2,106

185

9

803

疑い

1,594

211

13

661

総数

4,665

413

9

2,705

シエラレオネ

確定

3,223

374

12

986

可能性

37

0

0

164

疑い

446

80

18

109

総数

3,706

454

12

1,259

9,911

976

10

4,868

※リベリアでは死亡例が確定例を276例上回っています。
※※シエラレオネでは可能性の高い症例おける死亡数が患者数よりも127例多くなっています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。

・ギニア
ギニアでは、深刻な感染伝播が継続しています。しかし、リベリアやシエラレオネとは対照的に、ギニアのいくつかの区域からはEVD症例報告がありますが、7区域では最初の症例やその後の報告から21日以上感染伝播が報告されていません。
ギニアでは、主に4区域から感染伝播しています。今週、首都コナクリから報告された新規確定例は18人で、流行開始から2番目に多い週となっています。ンゼレコレ州では19人、ケルワネでは18人の確定例が発生し、過去2週間で新規症例は持続的増加を認めています。両区域は東にコートジボアール、西には過去10週間の間に強烈な伝播(過去に38人の新規症例)があったマセンタとの国境があります。
コワイヤでは前週の25人に比べ、今週は新規確定例5人が報告されています。現段階で患者減少が続くかどうかを判断するには時期尚早です。流行発生源であるゲゲドゥではほとんど症例報告がされていません(今週、確定例2人)が、伝播は継続しています。
先週、ギニアの2地域で初めてのEVD症例が報告されました。コートジボアールとの国境でマリへの通商路でもあるギニア東部のカンカンで、今までは影響のなかった地域でしたが1人の確定診断例が報告され、国境での活発な監視の必要性が再度強調されました。現在伝播が集中して報告されている地区は南部の国境付近です。今まで報告されなかったファラナ地区で新規の診断確定例一人が報告されました。ファラナは国境を接するシエラレオネのコイナドゥグの南西にあります。先週初めての診断確定例が報告されたマム-地区の周辺地区は一人の新規症例を放棄した後、現在は影響のない地域に分類されています。

・リベリア
今週、リベリアから過去4週間で最も多く、流行開始から4番目に多い444人の確定例、可能性例、疑い例が報告されました。リベリアは最も影響を受けている国の1つです。リベリアの1行政区を除く15区域では今も、流行が始まって以来、少なくとも1例の確定例及び可能性例が報告され、特に今週、首都モンロビアでは最も多い305人の可能性例及び疑い例が報告されています。
444人中15人が確定例として報告されています。臨床監視システムを通じて報告される症例数と検査室などから報告される症例数との間に不整合によるものです。多くの可能性例や疑い例はEVD確定例として診断される可能性があります。
モンロビア以外からの新規症例は、東がコートジボアール、北がギニアに隣接しているボン郡(40症例)、マージビ郡 (22 症例)、 ニンバ郡 (29症例)から報告されています。ギニアのゲゲドゥ地区との国境にあるロファ郡からの新規症例報告は、過去3週の間は下降傾向が続いています(2人の確定例)。この患者数減少は対策の結果と考えます。

・シエラレオネ
 シエラレオネでは、深刻な感染伝播が継続しており、先週325人の新規症例が報告されました。首都フリータウンでは138例の新規確定例が報告され、近隣の西部ボンバリ(確定例53人)、ポートロコ(確定例39人)と続き、最も深刻な伝播が継続しています。
 2番目に影響を受けた区域は、ボー郡(新規確定例23人)と、トンコリリ地区(新規確定例23人)で、東にケネマ(新規確定例23人)が隣接します。現在、ケネマでは長期間流行が鎮静化していたように思われていたが、最近の2週間で新規症例数が増加しています。カイラフンでも鎮静化していたように思われましたが、現在3週連続で新規症例(診断確定例10人)が増えていると報告されました。北部において、ギニアのファラナ地区(新たな影響地区となった)との国境であるコイナドゥグは先週新たに2人のEVD症例が報告されました。シエラレオネの全地域で今回のアウトブレークが始まりから、少なくとも新たに1人の可能性例か確定例が報告されています。

医療従事者の感染について
 10月19日現在、443名の医療従事者がエボラウイルス病に感染し、244名 が死亡しています(表2)。WHOはそれぞれの症例における感染の原因を追跡するために広範囲にわたる調査を実施しています。その最初の指摘は、感染のか なりの割合がエボラの治療と看護の状況以外の場所で発生したということです。感染予防と管理体制の維持と点検は流行が深刻な3国すべてのエボラ治療病棟で 実行され続けています。同時に、全ての医療従事者が暴露リスクを最小限にとどめることを確実に実行するための訓練の準備および関連するガイドラインに沿って、全てのエボラ治療施設に対する最適の個人用防護具の十分な供給の確保するための徹底的な努力が続けられています。

表2. 医療従事者のEVD症例数

国名

症例定義

症例数

死亡者数

ギニア

確定

70

33

可能性

8

8

疑い

0

0

国別総数

78

41

リベリア

確定

78

64

可能性

109

34

疑い

35

5

国別総数

222

103

シエラレオネ

確定

125

91

可能性

2

2

疑い

2

2

国別総数

129

95

ナイジェリア

確定

11

5

可能性

0

0

疑い

0

0

国別総数

11

5

スペイン

確定

1

0

可能性

未報告

未報告

疑い

未報告

未報告

国別総数

1

0

アメリカ合衆国

確定

2

0

可能性

未報告

未報告

疑い

未報告

未報告

国別総数

2

0

443

244

※ 表2のデータは、各国の保健省による公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。

2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国の4か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。
ナイジェリアでは、20症例が発生して8症例が死亡しています。セネガルでは、1症例が発生しましたが、死亡例はありません。適切な対応の結果、10月17日にセネガル、19日にナイジェリアで終息宣言が出されました。最後の患者のEVD検査が陰性と診断されてから42日(EVDの潜伏期間である21日の2倍の日数)が経過しています。

表4.スペイン、アメリカ合衆国におけるEVD症例数

国名

症例定義

症例数

死亡者数

スペイン

確定

1

0

可能性

未報告

未報告

疑い

未報告

未報告

国別総数

1

0

アメリカ合衆国

確定

3

1

可能性

未報告

未報告

疑い

未報告

未報告

国別総数

3

1

4

1

※ 表4のデータは、各国の保健省からの報告による公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。

スペインでは、1人の患者(表4参照)のEVD検査結果が10月19日に陰性、10月21日に実施された2回目も陰性となっています。新たな患者が発生しない限り、42日間の監視終了時点で終息宣言が出されることになります。83人の接触者が監視されています。
 アメリカ合衆国では、EVDが3症例発生し、1症例は死亡しています。172人の接触者のうち、60人が21日間の監視を終了しています。112人はテキサスで監視を受けています。オハイオ州では、3人目の確定患者と同乗(発症前に同乗)していた153人の乗組員と乗客が監視されていますが、感染リスクは低いと考えられています。

3.流行が蔓延する地域に隣接する国、または貿易が盛んな国
ナイジェリアとセネガルにおけるEVD終息は、EVDハイリスク国にとって予防対策の重要性を強調しています。両国のEVD蔓延防止における重要な要因は、強力な政治的対策、早期発見と早期対応、啓発運動、パートナー組織からの協力です。
 エボラ緊急対応のための国連ミッション(UNMEER)90日間計画によると、EVD症例に効果的な対応をするために、すべての国の能力強化が最優先事項となります。つまり、すべての国が疑い症例対応のための隔離病棟や個人防護具などに関するプロトコールを持ち、管理チームは感染予防・制御やコミュニケーション戦略の訓練を受けるべきです。
 流行が蔓延する地域に隣接するすべての国は、アクティブサーベイランスを実施し、患者発生の可能性が高い地域から、毎週患者報告をすべきです。EVD患者輸入例が発生した場合、迅速に、適切な技術指導、シミュレーション、プロトコール試験で支援されます。10月10日にブラザビルで開催されたWHOとパートナー組織との会合では、流行発生時に備えた強化をした上で、EVDの影響を受けていない国を支援することに同意しました。
 チェックリストは必要最小限を定義し、各国がキーコンポーネントを実践するためのガイドライン、トレーニングマニュアル、ガイダンスノートなどの重要な参考書類を強調しています。コンポーネントは、全体的な調整、迅速な対応チーム、国民の意識やコミュニティの関与、感染予防と制御、(2成分に分割:エボラ治療センターで安全な埋葬)ケースマネジメント、疫学的調査、トレース接点、研究室、エントリーのポイントでの容量となっています。
 流行が蔓延する地域に隣接する国、または貿易が盛んな国として挙げられた15か国はWHOの専門家チームからの技術支援を優先されます。これらの国は、ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ共和国、コートジボワール、コンゴ、ガンビア、ガーナ、ギニアビサウ、マリ、モーリタニア、ナイジェリア、セネガル、南スーダン、トーゴ民主共和国となっています。
 WHOチームは、初発のEVD症例への対応能力の差を識別するために、コートジボワールとマリで任務を開始しました。作業内容は、EVD疑い患者検出と応答システムの性能試験のシミュレーションが含まれます。
 10月22日、WHOは国際保健規則(2005)の基にエボラ第3回緊急委員会を招集しました。委員会では、流行の最新動向を確認し、EVDの蔓延を防止する方法について勧告しています。