(No.223)

エボラ対応のロードマップ関する状況報告7 平成26年10月29日更新

概要
 2014年10月27日の時点で、合計13,703人のエボラウイルス疾患(EVD)の確定例、可能性例、疑い例が、感染のあった5か国(ギニア、リベリア、シエラレオネ、スペイン、アメリカ合衆国)と過去に感染を確認した2か国(ナイジェリア、セネガル)から報告されています。死亡者は4,922人です。
 セネガルとナイジェリアでは、EVD流行に対し2014年10月17日と19日に終息宣言が出されました。
 ギニア、リベリア、シエラレオネでは、依然として持続的かつ広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が持続しています。リベリアとシエラレオネの全区域では、流行開始から、少なくとも1例の確定例や可能性例が報告されています。ギニアにおけるEVD患者発生数は落ち着いていますが、絶対数は依然非常に高いままです。最も影響を受けている3つの国の首都での流行は深刻な状態が続いています。最も感染が深刻な3カ国の首都では、感染伝搬は依然として強いままで、症例や死亡例は過少報告され続けています。
 限局した感染があったマリ、スペイン、アメリカ合衆国では潜在的接触者の監視が続いています。マリでは祖母と共にギニアに渡航した2歳の女児が10月24日にEVDで死亡しました。これによりマリは、西アフリカ諸国での6番目のEVD感染国になりました。
 スペインでは10月21日に二回目のEVDの検査結果が陰性でした。もし新たな発生がでなければ、二回目の検査から42日後に終息が宣言されます。米国では2人の医療従事者がEVDの2回目の検査結果が陰性で、退院しました。もう一人の医療従事者はまだ隔離されたまま、治療を受けています。
 今回でエボラ対応に関するロードマップ1から数えて10番目の報告になります。この報告書には、保健省によって報告された公式情報に基づく疫学的状況の検証と、入手可能な中核的なROAD MAP指標に基づき取られた対応に対する評価が含まれています。


1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
 現在、EVD患者13,676人(確定例、可能性例、疑い例)と死亡者4,910人が、2014年、10月27日にギニア保健省とシエラレオネ保健省から、10月25日にリベリア保健省から報告されています(表1参照)。現在も、リベリアとシエラレオネの全地域では、流行開始から少なくとも1例の症例が報告されています。

表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数

国名

症例定義

患者数

7日以内の患者数

7日以内の

患者数の割合

死亡者数

ギニア

確定

1,391

332

24

未報告

可能性

199

19

10

未報告

疑い

316

315

100

未報告

総数

1,906

666

35

997

リベリ

確定

2,515

35

1

未報告

可能性

1,540

363

24

未報告

疑い

2,480

469

19

未報告

総数

6,535

867

13

2,413

シエラレオネ

確定

3,700

1,187

32

未報告

可能性

322

14

4

未報告

疑い

1,213

232

19

未報告

総数

5,235

1,433

27

1,500

13,676

2,966

22

4,910

データは、各国保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は継続されている再分類、遡っての調査、利用できる検査結果の検討によって変わることがあります。


以下の図表は各国が提供する最新のEVDの症例報告の通知と詳細な患者データを組み合わせ、集めて整理したものです。

ギニア
 ギニアでのEVD伝搬は懸念される状態が継続しており、確定例、可能性例、疑い例を合わせて1,906人です。リベリアやシエラレオネとは対照的にギニアのいくつかの地域ではまだ、1人しか発症していないケースや、何週間もEVDが出現しなかった地区がいくつかありました。前回の報告から新たにEVDの症例が報告された地区はありません。
 同国で最も伝播が激しいのは、同国南西部リベリア国境近くのマセンタです。1週間で15人の診断確定例が見られました。4週間にわたってマセンタでの新規患者は減少していますが、それでもギニアでは最も患者の多い地区になっています。ケルワネの周辺に於いても、1週間で22人の診断確定例が見られ、新規患者は3週間で急速に増加しています。マセンタの南東に位置するンゼレコレ州でも確定例がでています。マセンタから西に位置する、流行の中心であったゲケドウでは、過去7週間での新規患者は(最終週に診断確定例が3例)新規患者の発生は少数ですが、持続しています。ギニアとの首都コナクリでは最終週1週間で6人の診断確定例が見られています。首都は現在でも流行における要の都市となっています。コワイヤでは8人の新たな診断確定例を認めています。

リベリア
 リベリアでは診断確定例、可能性例、疑い例あわせて6535人の報告がなされており、相変わらずもっとも患者の多い国になっています。同国のモンセラード郡では激しい伝播が続いており、最終週1週間で30人の可能性例が発生しました。同郡には首都のモンロビアも含まれています。しかし同地域における週単位でみた患者の増加は9月中旬から横ばいの陽です。10月5日を最終日とする週では確定例と、可能性例は減少しており、真の減少かもしれません。しかしこの疑問を解決するためにはさらなるデータが必要です。同国では少数の確定例の報告が続いています。
 最近の確定例の検査データは、深慮な分析の範囲を提供するが現状の発生データにより提供されるものでは無い。リベリアでは確定例は過少報告されており、実情を捉えることは困難な状況です。

シエラレオネ
 シエラレオネでは診断確定例、疑い例、可能性例あわせて5235例と相変わらず伝播が続いています。最終週には田舎の地域で81人の新規発生があり、その地域では6週間連続で患者数が増加しています。首都フリータウンでは感染症週報の最終週で63人の新規患者が発生し、国内で最も患者の発生の多い地域となったままです。西側近隣地域であるボンバリでは最終週で56人、ポ-トロコでは47人の診断確定例が発生しており相変わらず深刻な状態が続いています。これら2地域に接しているトンコリリでは同じ1週間に36人の患者が発生しており、懸念される地域となっています。なお10月23日のデータは欠損しています。


医療従事者
10月27日までで医療従事者521人がEVDに感染しており、272人が死亡しています。リベリアにおける感染者数の増加は、報告の方法や以前報告されていなかった人数を付け加えての報告などが反映されています。WHOは個々の例での感染の原因を調査しています。当初の数値はエボラに対する治療やケアが行われる前のものであって,西アフリカ3か国でのエボラ治療施設ではどこでも感染防御と対策の質が現在では正しく実施されています。同時に最高の個人防護具と,医療スタッフに対するリスクが最小限に減らせるようなガイドラインやトレーニングがどのエボラ治療施設にも十分提供できるように努められています。

医療従事者のエボラ感染者発生数

国名

発生数

死亡数

ギニア

80

43

リベリア

299

123

ナイジェリア

11

5

シエラレオネ

127

101

スペイン

1

0

アメリカ合衆国

3

0

合計

521

272


2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
 マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国の5か国で広範なあるいは深刻な流行が発生している国からの輸入例が発生しています。(Table3)
 ナイジエリアでは20人の患者発生(うち8人死亡)、セネガルでは1人の患者発生(死亡無し)です。両国での対策が奏功し、セネガルとナイジェリアは10月17日と19日にそれぞれ終焉宣言を出しました。最大潜伏期間21日の2倍に相当する42日間が、最終の隔離患者がEVD陰性の結果が出てから経過しました。
 マリでは初めての症例が報告されています。患者は2歳の女児でギニアからマリに祖母と一緒に旅行をしていますが、旅行中の大半において症状を呈していました。10月22日にカイ州のFousseyni Daou病院に収容されましたが、2日後に死亡しています。現在接触者82人のモニターが行われています。内訳はカヤ州で57人、そのうちバマコで27人となっています。さらに接触者の調査が実施されています。WHOの準備チームがマリに滞在し、初発例に対する準備を評価していますがいつでも必要に応じてマリの医療専門家に感染防御やコントロール、接触者の追跡調査、医療従事者のトレーニングなどのサポート等についてできるようにしています。

マリ、スペイン、アメリカ合衆国におけるエボラ患者数(Table3)

国名

症例定義

例数

死亡数

マリ

確定例

1

1

可能性例

0

0

疑い例

0

0

国別総数

1

1

スペイン

確定例

1

0

可能性例

0

0

疑い例

0

0

国別総数

1

0

アメリカ合衆国

確定例

4

1

可能性例

0

0

疑い例

0

0

国別総数

4

1

総数

6

2