(No.231)

エボラ対応のロードマップ関する状況報告11 平成26年11月12日更新

 2014年11月12日、WHO(世界保健機関)は、エボラ対応のロードマップに関する状況報告を更新しました。
要約
11月9日の時点で、合計14,098人のエボラウイルス疾患(EVD)の確定例、可能性例、疑い例が、感染を受けた6か国(ギニア、リベリア、マリ、シエラレオネ、スペイン、アメリカ合衆国)と過去に感染を受けた2か国(ナイジェリア、セネガル)から報告されています。死亡者は5,160人です。
ギニアとリベリアでは、全国的に患者の発生率増加を認めない証拠がいくつもみられますが、シエラレオネでは急激な増加が続いています。行政区域レベルで混ざりあった像を示しています。ギニアのコナクリとマセンタ、リベリアのモンセラード、シエラレオネの西部と北部地域での流行伝播が一貫して高い状態にあります。リベリアのロファ、シエラレオネのケネマとカイラフンでは発生率の減少が続いています。未だに、患者数および死亡者数の過少報告が続いています。
 マリでは4例の確定診断と可能性例が報告され、4人全員が死亡しています。10月24日に死亡した最新の症例は、マリで最初のエボラ陽性患者と関連はありません。
流行が最も深刻な3か国における介入は、患者の隔離と治療、接触者の同定、安全かつ威厳ある方法での埋葬を含んでいます。この3か国では53のうち19のエボラ治療センターが開設されています。訓練を受けた計140の埋葬チームが各地で活躍し、 4,400以上の遺体が流行の発生以来、安全かつ威厳ある方法で埋葬されたと報告されています。53のエボラ発生地区から、24 時間以内に陸路で検体が検査施設に送られることになっています。
現在、発生状況報告はより密に連絡を取りながら、データや地図など、国レベルで詳細な情報を提供するためにウェブベースで提示されています。
概要
エボラ対応ロードマップに関する定期報告です。ロードマップの体系、国別の報告は3つのカテゴリーに分類されます。 (1) 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)、(2) 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国(マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国)、(3) 流行が蔓延する地域に隣接する国、または貿易が盛んな国です。西アフリカにおけるEVDの流行とは関連のない、別のEVDの流行が発生しているコンゴ民主共和国の状況についても示されています(別掲参照)。
1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
現在、合計14,068人のEVDの確定例、可能性例、疑い例と死亡者5,147人が、11月9日の終わりにギニアとシエラレオネ保健省から、11月8日の終わりにリベリア保健省から報告されています(表1参照)。

表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数

国名

症例定義

症例数

21日以内の

発生数

死亡者数

ギニア

確定

1,612

313

934

可能性

208

12

208

疑い

58

未確定

0

国別総数

1,878

325

1,142

リベリ

確定

2,553

335

未確定

可能性

1,682

131

未確定

疑い

2,582

未確定

未確定

国別総数

6,822

466

2,836

シエラレオネ

確定

4,523

,197

960

可能性

79

14

174

疑い

766

未確定

35

国別総数

5,368

1,211

1,169

14,068

2,002

5,147

※データは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。

ギニア
 ギニアでは一部の地域では発生数は安定しているというもののEVDの感染は高い頻度で続いています。患者数に変動はあるものの高い数値のままです。11月9日の週には同国で145人の新たな患者が報告されています。リベリアとの国境に近い同国の南西部にあるマセンタでは感染は高い頻度のまま1週間で33人の新たな診断確定例発生しています。ケルワネでは新たに30人の患者、ンゼレコレとベイラでもEVDの発生は多く、22人と12人の診断確定例がそれぞれ発生しています。首都コナクリでは同疾患コントロールのための取り組みが継続しています。同市では最終週に18人の診断確定例が報告されています。ファラナとコヤでも発生頻度は高くそれぞれ新たに10人と6人の診断確定例が報告されています。マリとの国境にあるシギリでは3人の診断確定例が報告されており、特に警戒が必要です。今回の流行の発祥地であるゲケドウでは新たな患者数は減少して下り、最終週には1人の診断確定例のみでその前週には報告はありませんでした。ギニアの34州で10州はエボラ感染者が発生していません。一方リベリアとシエラレオネでは未発生の州はありません。

リベリア
 リベリアでは9月の中旬から10月の終わりにかけて週報での患者数は低下しています。この傾向は安定していますが変化する可能性もあります。同国では診断確定例、可能性例あわせて11月8日迄の週で97人になっています。疾病コントロール対策は特に首都モンロビアでは重大であり、首都を含むモンセラード郡では同時期に新たな診断確定例、可能性例あわせて44人となっています。患者数は減少しているとはいえマリジブ周辺では高い発生頻度のままです。発生頻度の高いボミ、ボン、ロファの各郡でも患者数は減少傾向です。

シエラレオネ
シエラレオネでは発生頻度は高いままで11月9日の週には421人の診断確定例が報告されていますがそれは同国の西部、北部での発生が高い事によっています。首都フリータウンでも発生頻度は高く最終週に77人の診断確定例が報告されています。発生頻度が高いのはボンバリと西部の田舎の地域で、そこで69人の診断確定例が報告されています。ポルトロコ、トンコリリでは56人の診断確定例が報告されています。コイナダグとカンビアではそれぞれ25人と6人の診断確定例が報告されており、新たに懸念される地域となっています。ケネマ、カイラフンの近くでは発生率が急に低下しています。最終週のカイラフンでの診断確定例は3例のみでした。ケネマでは報告例がなく、11月1日から診断確定例の報告はありません。これは同地域でEVD患者の隔離、接触者の追跡調査、感染予防と、コントロール対策が奏功したためです。

図1:ギニア、リベリア、シエラレオネ、マリにおけるEVD症例の地理的分布



医療従事者の感染について
11月10 日現在、564名の医療従事者がエボラウイルス病に感染し、320名が死亡しています。これは、EVD陽性患者を治療中に感染したスペインの医療従事者とアメリカ合衆国の医療従事者3人(ギニアで感染した1人、テキサス州で患者 の治療中に感染した2人)が含まれます。11月9日の週に、ギニアのケルワネで3人の医療従事者が感染しました。

表6: 医療従事者の患者数および死亡者数

国名

患者数

死亡者数

ギニア*

92

51

リベリア*

329

162

シエラレオネ*

128

102

総数

549

315


※データは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。11月7日までのデータです。
WHOはそれぞれの症例における感染原因を検索するために広範囲な調査を実施しています。初期徴候のほとんどが、治療施設やセンター以外の場所で発生したということです。これは、エボラ関連施設だけでなく、全ての医療施設で感染予防と制御の対策強化の必要性を強調します。WHOは医療従事者に対する個人用防護具のガイドラインの検証を行ってあり、現在のエボラ流行の状況に合わせたガイドラインも更新しています。個人用防護具を使用する際の必須の総合訓練と、医療を行う前に個人用防護具の全ての使用者を指導することが、医療従事者と患者を保護する基本になると考えられています。WHOは個人用防護具100万セット以上をギニア、リベリアおよびシエラレオネには運び、各国保健省とその支援者とともに 防護具調達の作業を続け、もっとも必要とされる処へ防護具を配備させています。
2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
 マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国の5か国では広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国から流入してきた症例が報告されています。
 マリで4人の確定例および可能性例(全員死亡)が報告されています。最も新しい症例はバマコからです。10月24日にカイで死亡した最初の症例とは関連はありません。
 スペインでは、マドリッドで患者の治療中に感染した医療従事者が2度の検査陰性を終了し、退院してから22日が経過しました。この患者の接触者83名は既に21日の健康監視期間を完了しています。
 アメリカ合衆国では、1人の死亡を含む4人の感染がありました。ニューヨークの医療従事者1人、テキサスの医療従事者2人は、2度目のエボラ検査陰性の結果を確認し、既に退院しています。全ての接触者は21日間の経過観察期間を完了しました。

表7 マリ、スペイン、米国におけるエボラウイルス病症例の患者数および死亡者数

累積数

接触者調査

国名

診断確定例

可能性例

疑い例

死亡数

医療従事者

監視中の人数

21日間の監視修了者

エボラ陰性の判定日2回検査員性あるいは死亡による

2回目検査陰性からの経過日数

マリ

2

2

0

25

67 Kayes

28

Bamako

41

11/11/2014

0

スペイン

1

0

0

0

100

0

83

21/10/2014

22

アメリカ合衆国

4

0

0

75

0

177

11/11/2014

0


別掲. コンゴ民主共和国におけるエボラ流行
 2014年11月9日現在、コンゴ民主共和国(DRC)で医療従事者8人を含む66人のエボラウイルス疾患(確定診断例38人、可能性例28 人)が報告されています。また、死亡者49人が報告されています。この中には8人の医療関係者の中での死亡も含まれています。新たな接触者の追跡はありませ ん。
 最後に2回目の検査で陰性を確認した症例が病院を退院した日から31日が経ちました。42日が経てば、この国は終息を宣言することができます。この流行は、ギニア、リベリア、マリ、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネでの流行との関連はありません。