(No.232)

南スーダンとマダガスカルにおけるワクチン関連ポリオウイルス循環

南スーダン
 南スーダンでは2型のワクチン関連ポリオウイルスの循環(cVDPV2)が確認されています。ユニティ州で2人の急性弛緩性麻痺患者から同株が分離されました。患者は2014年9月9日と12日に発生しています。同州では子供のワクチン接種率は33%程度です。2人とも同州の国内難民キャンプの住人です。ユニティ州は政情不安定の影響を受けて人の移動が起こっており、ワクチン接種率の低下が多くの地域で起こっています。今年、南スーダンはアフリカの角におけるアウトブレイク対策に参加していましたが、同地域をおそった1型のポリオウイルスの拡がり(ソマリアとエチオピアでの今年の発生)の影響をうけていました。2回の国家ポリオワクチン接種日(NIDs)として4月の経口3価ワクチン接種と5月の2価ワクチン接種が実施されました。ワクチン株由来ポリオウイルスの循環をうけてNIDsとして11月4日に3価経口ワクチン接種、準国内ワクチン接種日(SNID)として3つの州(ユニティ、上ナイル、ジョングレイ)12月2日、2015年1月に経口3価ワクチン接種が予定されています。目的はcVDPV2の国内難民キャンプでの循環を早期にくい止めこれ以上の拡がりを防止すること、1型に対する免疫を強化し、アフリカの角の他の地域からもちこまれるリスクを最小限にすることです。

マダガスカル
マダガスカルでは1型のcVDPVが2014年9月29日に急性弛緩性麻痺を発症した1人と接触者の3人から同定されています。マダガスカルで最終に実施された補完免疫活動は2011年12月と2012年1月です。準国家ワクチンデーは,2015年1月実施の国家ワクチンデーと共に12月に予定されています。同国では推定で25%の子供がポリオウイルスに対する免疫を持っていません。マダガスカルでは2001年から2002年にかけて2型のcVDPVがあり5人の患者が発生しました。2005年にも5人の患者が発生しています。ワクチン由来のポリオウイルスは、2011年にトゥリアラでも見つかっています。計画的対策により、その都度終息しました。しかし、繰り返し互いに関連性のないcVDPVが発生する事実は、十分な免疫のない人の間でまた同様の事が発生する事、あるいは高い割合での免疫獲得率が大切であることを強調しています。

WHOによるリスク評価
 ポリオワクチン関連株の循環はまれなことですが、免疫が不十分な人の集団で発生する事は良く知られています。そのリスクを下げるためには経口ポリオワクチンの使用をやめ、ポリオ撲滅状態を維持しなければなりません。経口ポリオワクチンは段階的に使用中止されていきます。まずは2型ポリオウイルスを含んだ経口ワクチンの中止からはじめていきます。2型のポリオウイルスを含んだ経口ワクチンによってcVDPVの90%が発生しているからです。
 南スーダンでは免疫付与が可能な国内難民キャンプで症例が発生していることから、世界保健機関(WHO)は南スーダンから国際的にcVDPVが拡がる可能性は低いとみています。しかしながらその他の地域で発生すれば問題は別です。マダガスカルに関しては、過去のcVDPVからもわかるように国際的な拡がりとなる可能性は低いと考えています。

WHOの推奨事項
 全ての国、特にポリオ発生国や、地域との交易や渡航の多い国では、急性弛緩性麻痺例のサーベイランスを強化することが大切です。それにより新たなウイルスの侵入を見つけ、緊急の対策をたてることができるからです。国あるいはもっと小さな単位の集団においても等しく、新たなウイルスの侵入を防御できる程度の高い免疫獲得率を維持しなければなりません。
 WHOのInternational Travel and Healthではポリオ汚染地域に渡航するすべての旅行者はワクチン接種を十分にするべきとしています。ポリオ感染のある地域の居住者(および1ヶ月以上滞在者)が旅行するときは追加の経口ポリオ生ワクチンか不活化ワクチンを1~12ヶ月前に受けるべきであるとしています。