(No.239)

マダガスカルにおけるペスト 2014年11月21日更新情報

 2014年11月4日WHO(世界保健機関)は、マダガスカルの保健省よりペスト発生の報告を受けました。最初の症例はTsiroanomandidy地区Soamahatamana村の男性で8月31日に診断され、9月3日に死亡しました。
 11月16日までに死亡者40人を含む119人のペスト患者が確認されました。肺ペスト症例は2%のみです。
症例は7地方16地区で報告されました。マダガスカルで最大の都市・首都アンタナナリボでは2人のペスト患者のうち一人が死亡しました。ここでは人口密度が高い都市であること、医療システムの脆弱さにより病気が急速に蔓延するリスクがあります。この国におけるデルタメトリン(ノミ用殺虫剤)の薬剤耐性が高いことにより、状況はさらに悪化(困難に)しています。

公衆衛生の対応
 アウトブレーク対策の為、国家レベルでの活動(タスクフォース=統合任務部隊)が設立されています。WHO、マダガスカルのパスツール研究所、アンタナナリボ市議会、赤十字といった関係機関の支援をうけ、マダガスカル政府は流行を制御するために効果的な戦略を立てました。アフリカ開発銀行から20万USドルの財政支援を受け、対応計画は展開されました。ペスト流行の制御及び予防策は、影響をうけた地区(流行地)で徹底的に実施されています。個人防護服、殺虫剤、スプレー剤や抗生物質がこれらの地区で用意されています。

背景
 ペストはYersinia pestisによる細菌感染症であり、野生のげっ歯類に感染します。ノミを介してげっ歯類から拡がります。感染したノミにかまれたヒトは通常腺ペストで発症します(リンパ節の腫大が特徴的)。菌が肺に達すると肺炎(肺ペスト)を引き起こし、咳によってヒトからヒトへ伝播します。早期に診断できれば、腺ペストは抗生剤による治療効果が得られます。肺ペストは、感染して24時間以内に死亡する可能性が高い、致死率の高い疾患です。如何に早く治療を始められるかにかかっていますが、それでも致死率は高いです。

WHO推奨
 WHOは現在利用できる情報から判断して、いかなる渡航、貿易の制限を推奨していません。アンタナナリボのような都市部においては、媒介動物のコントロールのために流行の危険性の指標を調査することが必要です。