(No.242)

中東呼吸器症候群コロナウイルス感染症確定例報告(119)-サウジアラビア
                                2014年12 月2日更新情報

 2014年11月3日から11月19日の間、サウジアラビア(KSA)の国際保健規則(IHR)担当窓口は世界保健機関(WHO)に死亡者4人を含む、中東呼吸器症候群(MERS-CoV)感染確定例18人を追加で報告しました。
症例の詳細は以下の通りです。

1.Alkharj出身の99歳男性は11月10日に発症し、14日に入院しました。患者はラクダとの接触歴はありましたが、発症14日以内に、他の感染曝露歴は知られていません。集中治療で治療を受けましたが、19日に死亡しています。

2.Alkharj出身の84歳女性は11月1日に慢性疾患の治療のために入院し、15日に発症しました。以前に報告のあったMERS-CoV診断確定例と同時期に入院していましたが、その患者との接触歴はありません。発症14日以内に、他の感染曝露歴は知られていません。危篤状態で集中治療室に入院していましたが、19日に死亡しています。

3.リヤド出身の58歳男性は11月12日に発症しています。患者は合併症があり、ラクダとの頻繁な接触歴がありました。発症14日以内に、他の感染曝露歴は知られていません。現在状態は安定し、自宅療養(隔離)しています。

4.Skaka出身の53歳男性は11月8日に発症し、10日にJoufの病院に入院しました。患者は合併症があり、ラクダとの接触歴や非加熱ラクダ製品の喫食歴があります。発症14日以内に、他の感染曝露歴は知られていません。現在状態は安定し、隔離病棟に入院中です。

5. Skaka出身・外国籍の29歳男性は11月2日に発症し、10日にJoufの病院に入院しました。患者に基礎疾患はありません。無症状の妻は看護師として医療施設で働いていますが、今までにSkakaのその施設でMERS-CoV陽性者の報告はありません。発症14日以内に、他の感染曝露歴は知られていません。集中治療室に入院しましたが、11月13日に死亡しています。

6.ターイフ出身・外国籍の22歳男性は11月8日に発症し、10日に入院しています。患者に基礎疾患はありません。以前に報告のあったMERS-CoV診断確定例との接触歴がありますが、発症14日以内に、他の感染曝露歴は知られていません。現在、危篤状態で集中治療室に入院中です。

7.ターイフ出身の70歳女性は、慢性疾患のために10月21日に入院し、11月10日に発症しています。11月2日から4日の間、同じ病院にMERS-CoV診断確定例が入院していました。2人は直接接触していませんが、症状を呈していない特定(一人の)の家政婦が2人の患者の部屋を掃除しています。発症14日以内に、他の感染曝露歴は知られていません。

8.Alkharj出身の70歳女性は、11月4日に発症し入院しました。患者は合併症がありましたが、発症14日以内に、他の感染曝露歴は知られていません。危篤状態で集中治療室に入院していましたが、13日に死亡しています。

9.リヤド出身・外国籍の45歳女性は、慢性疾患の治療のため11月1日に入院し、3日に発症しています。MERS-CoV診断確定例を治療している医療施設を訪れましたが、直接患者には接触していません。発症14日以内に、他の感染曝露歴は知られていません。彼女の症状は回復し、11月10日に自宅に戻りました。

10.リヤド出身の45歳男性は10月28日に発症し、11月4日に入院しています。患者は合併症があり、MERS-CoV診断確定例との接触歴があります。発症14日以内に、他の感染曝露歴は知られていません。現在状態は安定し、隔離病棟に入院中です。

11.ジェッダ出身・外国籍の49歳男性は10月29日に発症し、11月3日に入院しています。患者に基礎疾患はありません。発症14日以内に、他の感染曝露歴は知られていません。現在、集中治療室に入院中です。

12.ターイフ出身・外国籍の75歳女性は10月28日に発症し、11月1日に入院しています。患者は合併症があります。発症14日以内にハトとの接触歴はありますが、他の曝露歴は知られていません。現在、集中治療室に入院中です。

13.リヤド出身・外国籍の32歳女性は10月28日に発症し、11月2日に入院しています。患者に基礎疾患はなく、MERS-CoV診断確定例との接触歴もありませんが、MERS-CoV陽性患者が発生している医療機関で働いています。発症14日以内に他の曝露歴は知られていません。現在状態は安定し、隔離病棟に入院中です。

14.リヤド出身の33歳男性は10月31日に発症し、11月3日に入院しています。患者は合併症があり、発症14日以内にハトとの接触歴はありますが、他の曝露歴は知られていません。現在状態は安定し、隔離病棟に入院中です。

15.リヤド出身・外国籍の33歳男性は10月18日に発症し、11月2日に入院しています。患者に基礎疾患はなく、MERS-CoV陽性患者が発生している医療機関を訪問していますが、MERS-CoV診断確定例との接触歴はありません。症状が出現する14日前に、他の曝露歴は知られていません。現在、状態は安定しており、隔離病棟で入院しています。

16.リヤド出身の31歳女性です。10月18日に発症し、10月29日に入院しています。患者は基礎疾患を持っていません。症状が出現する14日前に、他の曝露歴は知られていません。現在状態は安定し、隔離病棟に入院中です。

17.リヤド出身の41歳男性は10月29日に発症し、30日に入院しています。患者に基礎疾患はなく、MERS-CoV診断確定例との接触歴もありませんが、MERS-CoV陽性患者が発生している医療機関を訪れています。症状が出現する14日前に、他の曝露歴は知られていません。現在状態は安定し、隔離病棟に入院中です。

18.リヤド出身の75歳の男性は10月30日に発症し入院しています。患者は合併症があります。症状が出現する14日前に、他の曝露歴は知られていません。現在、重篤な状態で集中治療室に入院しています。
患者家族や濃厚接触した医療従事者の追跡調査は継続中です。
サウジアラビア(KSA)の国際保健規則(IHR)担当窓口は以前WHOに、MERS-CoV診断確定例と報告した3人の死亡を報告しました。
世界中では、少なくとも338人の関連死を含む、927人のMERS-CoV感染診断確定例をWHOに報告しています。

 現在の状況と入手可能な情報に基づいて、WHOは全ての加盟国に対して重症急性呼吸器感染症(SARI)への監視を継続することと、通常とは異なる呼吸器感染症について再調査するように勧めています。
 医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を押さえるには、感染予防および管理方法が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、早い時期に患者をMERS-CoVであると診断することは常にできるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準予防策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者を世話する場合には、標準予防策に加えて飛沫予防策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確診症例を世話する場合には、接触予防策および目の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防策を行う必要があります。
 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考えられます。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという、一般的な衛生手順を厳守すべきです。
 食品衛生の習慣は遵守しなければなりません。ラクダの生乳あるいは尿を飲まないように、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。
 WHOは、この事例に関して、入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。