(No.255)

エボラ対応のロードマップに関する状況報告20 平成26年12月31日更新

 2014年12月31日、WHO(世界保健機関)は、エボラ対応のロードマップに関する状況報告を更新しました。

 12月28日の時点(第52週)で、合計20,206人のエボラウイルス疾患(EVD)の確定例、可能性例、疑い例が、感染を受けた4か国(ギニア、リベリア、シエラレオネ、マリ)と過去に感染を受けた4か国(ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国)から報告されています。死亡者は7,905人です。12月29日、英国は初めて同国でのEVD診断確定例を報告しました。過去15週間でみると、ギニアでは診断確定例が70から160人/週で変動しています。リベリアでは過去6週間患者発生は減少しています。シエラレオネでは発生数の増加の割合は鈍化しています。ただし同国の西部ではすべての発生国の中でもっとも強い伝播が起こっています。これら3か国における患者すべての致死率は71%です。これらの国々への対応活動は、国連エボラ緊急対応ミッション(UNMEER)1の目標である安全かつ尊厳ある埋葬を100%実施すること、2015年1月1日までにEVD患者を100%隔離することに沿って継続・進展してきました。国レベルでは、EVD患者を隔離して治療する収容能力は、緊急対応の開始以来、3か国すべての国で改善されました。各国が患者を隔離するための収容能力を十分に有している一方で、ベッドや症例数の地理的分布の不均等が、いくつかの地域で持続的な不足をもたらしています。過去1ヶ月でリベリアでは患者1人当たりのベッド数は6.6から13.9へ、シエラレオネでは1.4から3.6へと上昇しました。ギニアでは診断確定例と可能性例患者の増加により、2.3から1.9へと減少しました。 エボラで死亡したすべての人々を埋葬するための能力は十分に有していますが、死亡数の報告が少ない可能性もあるため対策が引き続き必要です。訓練された埋葬チームの数は、過去数か月間で大幅に成長しています。(ギニアで34から64、リベリアで56から89、シエラレオネで50から101)、地域レベルでの相違はありますが、3か国すべてでこれまでに報告されたEVD症例の接触者の90%以上が追跡調査されており、いくつかの地域では、EVD症例の接触者の追跡割合が低い状態です。効果的な対策には社会的動員が不可欠です。安全でかつ文化的に受け入れ可能な埋葬、EVD症状のある患者の適切な治療を進めています。

1.広範囲に及ぶ申告な感染伝播が発生している国
 現在、合計20,171人のEVDの確定例、可能性例、疑い例と死亡者7,890人が、12月28日の終わりにギニア,リベリア、シエラレオネ保健省から報告されています(表1参照)。このデータは、WHOの各国事務局から報告されたものです。

表1:ギニア、リベリア、シエラレオネでの診断確定例、可能性例、疑い例の数

国名

症例定義

症例数

21日以内の症例数

死亡者数

ギニア

確定例

2,397

346

1,433

可能性例

276

*

276

疑い例

34

*

0

国別総数

2,707

346

1,709

リベリア§

確定例

3,110

91

未報告

可能性例

1,776

*

未報告

疑い例

3,132

*

未報告

国別総数

8,018

91

3,423

シエラレオネ

確定例

7,354

979

2,392

可能性例

287

*

208

疑い例

1,805

*

158

国別総数

9,446

979

2,758

総数

20,171

1,416

7,890

※表1のデータは、WHOの各国事務所を通じて、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。 これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。 *は再分類された疑い症例と可能性の高い症例の割合が高いために報告が見送られています。

 人口割合で症例数を考えた場合、ギニアは人口10万人あたり症例数25・死亡数16、リベリアは人口10万人あたり症例数203・死亡数86、シエラレオネは人口10万人あたり症例数164・死亡数203となっています。
 確定例と可能性例における蓄積された層別化分析では、男女比はほぼ同じです。人口10万人あたり、男性の症例数は74、女性の症例数は76でした(表2参照)。
 全体にわたって、15~44歳の人は、小児と比較して感染を受ける可能性が3倍高く(0-14歳:人口10万人対33、15-44歳:10万人対96)、45歳以上は小児と比較して感染を受ける可能性が4倍高いです(人口10万人対122)。

表2:ギニア、リベリア、シエラレオネにおける確定例と可能性例の男女数、年齢別数

症例数

性別*

(人口10万人当たり)

年齢別

(人口10万人当たり)

男性

女性

0-14

15-44

45歳以上

ギニア

1,156

(21)

1,218

(22)

371

(8)

1,360

(29)

622

(40)

リベリア

2,538

(128)

2,444

(124)

831

(48)

2,653

(155)

1,015

(190)

シエラレオネ

3,900

(137)

4,161

(143)

1,659

(68)

4,580

(177)

1,808

(240)

総数

7,594

(74)

7,823

(76)

2,861

(33)

8,593

(96)

3,445

(122)

※人口数値は国連経済社会局に基づくものです。
 *性別のデータがないものは除きます。 ‡年齢のデータがないものは除きます。

ギニア
 新たに114人の診断確定例が12月28日の週に報告されました。9月からの患者数は変動があり、はっきりとした増加減少傾向はつかめません。かつてEVDが発生していた3地域で第52週には一人の確定例も可能性例も報告されていません。その前週には今回のアウトブレイクで最大数となる156人の診断確定例が発生しました。これは特にキシドゥグの南西地域における急な患者数の急増によるものでしたが週間発生数は58人から14人に減少しています。第51週より前には週当たりの平均的な患者発生は5人を超えていませんでした。患者発生のない地域や少ない地域でも警戒が必要なことを物語っています。首都コナクリでも伝播は続いています。先週には26人の診断確定例が有り、近隣のコワイヤでは12人の診断確定例が有りました。コナクリ北部のドゥブレカでは先週には17人の患者が報告され,急に増加しています。高い伝播率のコワイヤやキンディア州が近いこの地は過去には6人/週を超える報告は有りませんでした。他の地域で伝播が続いているのはキンディア(確定例16人)、ロファ(確定例7人),テリメレ(確定例4人)等です。南東部ではかつて伝播率の高かったマセンタや、ケルワネ(それぞれ確定例4人)、ンゼレコレ(確定例2人)で減少傾向です。エボラ対策に対する抵抗と、国内での人の移動が同国でのアウトブレイクの封じ込めの大きな問題点となっています。

リベリア
 過去4週間患者の発生率は、国家レベルから見て11月中旬から減少しています。先週は患者数の微増がありました。4地域で12月28日の週に診断確定患者は31人となっています。その前の週は5地区で21人でした。首都モンロビアのあるモンセラード郡では、19人の診断確定例が報告されており16人の可能性例が報告されています。シエラレオネとの国境に近いグランドケープマウント郡や他の郡では10人の確定例が報告されており、EVDの発生は多くなっています。他にはシノエ郡とボン郡で1人ずつの診断確定例が報告されています。11の郡では今週には診断確定例はありませんでしたので地理的には限局されているといえます。

シエラレオネ
 EVDの発生は相変わらず高いままで、12月28日の週には337人の診断確定例(他の2国の合計の2倍以上です)が報告されています。しかし患者数はさらに増加することは無く、同国で伝播の高いのは西部と北部の地域となっています。もっとも患者の多い地域は首都フリータウンで149人の診断確定例であり4週間内で最大数となっています。近隣のポートロコでもEVDの発生は多く、先週1週間で69人の診断確定例が報告されています。ボンバリ、西部地域地方地区など他の西部地域ではそれぞれ22人の診断確定例が報告されており、カンビアでは先週5例の診断確定例が報告されています。シエラレオネ政府、WHO、国連のパートナーなどによって行われている対策WAS(The Western Area Surge)が現在も継続されています。同国西部地域特に首都フリータウンとその近隣地域におけるEVDの抑制、伝播の鎖を断ち切ること、早期に患者を発見し,隔離治療すること、安全な埋葬を行う事などに力を注いでいます。この対策は社会的動員による対策で支えられています。同国の東部に位置するコノ地区では39人の診断確定例が報告されており今回のアウトブレイクでもっとも発生例数が多くなっています。EVDの発生はこの地域では過去7週間高くなっています。近隣のトンコリリ地区では過去15週間で発生が多く、先週も13人の診断確定例が発生しています。南部のボー地区では前週は2人でしたが今週は6人の診断確定例が報告されています。この発生数の少なさは過去15週間継続していました。 南部と東部のボンテ、カイラフン、ケネマ、プシフェンの4地区では新たな診断確定例は認めていません。リベリアとの国境に近いプシフェンでは過去4週間診断確定例は発生していません。

図1:ギニア、リベリア、マリ、シエラレオネにおけるエボラウイルス病の新規および累積の診断確定および可能性の高い患者数の分布図

※図1のデータは、各国からの状況報告に基づいています。地図上で使用される境界と表示されている名称および呼称は、いかなる国、領土、都市や地域についてもその統治状況に関して、あるいはその国境や境界の境界設定に関してWHOが見解を発表しているものではありません。また、地図上の点線と破線は、その国々あるいはその国境および境界の範囲が完全な合意にいたっていない可能性があるためにおおよその境界線を表しています。ギニア、シエラレオネ、マリからのデータは過去21日間の診断確定症例によるものです。

医療従事者の感染
 12月28日までに、合計678人の医療従事者がエボラウイルス病に感染しました。このうち382人が亡くなっています。この合計数には、マリで2人、ナイジェリアで11人、スペインで1人、シエラレオネで感染したイギリス人1人、米国で3人(1人はギニアで感染、2人はテキサスで患者治療中に感染)の感染した医療従事者が含まれています。12月28日の週には2人(リベリアのモンセラードで1人、ギニアのKerouneで1人)の医療従事者の感染が報告されています(表3参照)。

表3:3か国における医療従事者の患者数および死亡者数

国名

症例数

死亡数

ギニア

148

87

リベリア*

369

178

シエラレオネ

143

110

総数

660

375

※表3のデータは、保健省により報告された公式情報に基づいています。これらの数値は継続して行われている再分類、遡っての調査、利用できる検査結果の検討によって変わることがあります。


2. 初期の症例が生じた国、あるいは限局的な伝播が生じている国
 現在、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、イギリス、米国の5か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。イギリスではスコットランドのグラスゴーで公衆衛生当局が2014年12月29日にEVD感染例を確定しました。患者はシエラレオネのEVD治療センターでボランティアをして帰国した医療従事者です。患者は隔離され、ロンドンで治療を受けています。公衆衛生当局は現在、すべての接触者を調査中です。
 マリでは、6人の死亡者を含む合計8人の患者が報告されました(表4参照)。直近の患者7人は、首都バマコからの報告であり、10月24日に死亡した初発患者との関連はありません。最後に診断確定された患者は、12月6日に2回目の検査で陰性が確認され、12月11日に退院しました。カイで発生した患者とバマコで発生した患者との接触者は、全員が21日間の健康監視を終了しました。

表4:マリ、米国におけるエボラウイルス病症例の患者および死亡者数

累積患者数

接触者追跡調査

確定例

可能性例

疑い例

死亡例

医療従事者

接触者

21日間の健康監視期間を終了した者

最後に陰性になった日

最後に陰性になった日からの日数

マリ

7

1

0

6

25%

0

433

2014126

24

英国

1

0

0

0

100%

調査中

※表4のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。