(No.124)

エボラ出血熱の流行状況(50)
平成27年7月29日更新

 2015年7月29日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。

要約

1.7月26日末の週に、合計7人のEVD確定例(ギニア4人、シエラレオネ3人)が報告されました。連続8週間で20~30人/週の症例報告が続いた後、過去1年間で週間の新規患者数が最低となりました。新規患者数の
減少は良い傾向にありますが、維持できるかどうかを見極めるには時期尚早と考えられます。過去14日間で
ギニア・シエラレオネ両国では各々危険性の高いイベントを経験しており、過去の経験から1人のハイリスク症例や取り逃した接触者から新たな集団感染を引き起こすことが示唆されます。さらに、ギニア・リベリア・シエラレオネの3か国合わせると21日間の監視対象者が2,000人以上おり、確定例となる可能性があります。
 ここ数週間の対策改善で監視対象者からの患者発生率が高まり、以前と比較して死後にEVD陽性と診断
される割合は低くなりました。しかし、継続的にハイリスク症例が発生した場合、短期間で患者発生率が
増加する可能性が強くなります。

2.ギニアでは、コナクリから3人と隣接するコヤ県から1人の患者が報告されました。今年に入ってから
広範囲な伝播を続けているフォレカリア県では未だに700人以上の健康監視が実施されていますが、
2015年1月以来初めて症例報告がありませんでした。流行開始以来、ギニアから報告された4人は全て
健康監視中でした。コナクリからの3人はデュブレカ県の症例に関連する監視対象者でした。コヤ県からの
1人はフォレカリア県の症例に関連しています。2014年9月以来初めて、EVD陽性例からの死亡例は報告
されませんでした。

3.リベリアでは、7月26日末の週に新たな患者は報告されませんでした。6月29日以降に6人の確定例が
報告され、うち2人は死亡、残り4人全ては退院しました。33人の接触者が21日間の健康監視中であり、
新たな確定例が発生しなければ、8月2日に全員の健康監視が終了する予定です。

4.シエラレオネでは、フリータウンから2人とトンコリリから1人の患者が確認されました。フリータウンから報告された2人は健康監視中であり自発的に隔離施設に滞在しており、症状出現時に迅速に個室隔離
しました。フリータウン東側のトンコリリからの1人は、さらなる感染の重大なリスクと警告されています。患者は7月16日にフリータウンのマガジンワーフ周辺付近からトンコリリに旅行し、23日に地域の病院で
死亡し、死後の検査でEVD陽性と診断されました。患者は19日から21日の間に少なくとも2つの病院を受診しており、これまでに500人以上の接触者が同定されています。感染源の特定と接触者追跡調査は継続中
です。
5.7月26日末の週に、ギニアのコナクリから新たに1人医療従事者の感染が報告されました。ギニアでは
医療従事者の感染報告は過去6週間の報告のうち5週の報告でありました。シエラレオネからの報告は
ありませんが、トンコリリで患者と接触した何人かの医療従事者が健康監視となっています。流行が始まって以降、ギニア、リベリア、シエラレオネから880人の医療従事者の感染が報告されており、うち510人が死亡しています。


1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国

1.ギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、確定例、可能性例、疑い例を合わせて27,748人のEVD患者が発生しており、11,279人が死亡(多くの患者の検査結果は不明ですが、この総計には可能性の高い患者
および疑い患者から報告された死亡者を含みます)しています(表1)。7月26日末の週に、ギニアでは4人、
シエラレオネでは3人の新たな確定例が報告されました。

2.診断確定例と疑い例の男女比はほぼ同じです(表2)。14歳以下の小児と比べると、15~44歳の成人は
ギニアとリベリアでは4倍感染しやすく、シエラレオネでは3倍感染しやすくなっています。

3.7月26日末の週に、ギニアのコナクリから1人の医療従事者の感染が報告されました。流行が始まって
以降、医療従事者の感染者数は流行3か国で合計880人となっており、うち510人が死亡しています。

国名

症例定義

症例数

21日以内の

症例数

死亡者数

ギニア

確定例

3,326

39

2,062

可能性例

451

未報告

451

疑い例

9

未報告

データなし

国別総数

3,786

39

2,520

リベリア※

確定例

3,151

0

データなし

可能性例

1,879

未報告

データなし

疑い例

5,636

未報告

データなし

国別総数

10,666

0

4,806

リベリア※2

確定例

6

3

2

可能性例

0

未報告

データなし

疑い例

データなし

未報告

データなし

国別総数

6

3

2

シエラレオネ

確定例

8,694

20

3,585

可能性例

287

未報告

208

疑い例

4,309

未報告

158

国別総数

13,290

20

3,951

総数

確定例

15,177

62

データなし

可能性例

2,617

未報告

データなし

疑い例

9,954

未報告

データなし

総数

27,748

62

11,279

※ 表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、
再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
※2リベリアは2015年5月9日にEVD流行の終息が宣言されました。継続されている調査と患者と死亡者を遡って行う確定調査によって、これらの数字は改訂されることがあります。2015年5月9日以降に報告された患者数と死亡者数は、5月9日に終息が宣言されたものとは独立した集団発生を構成していると考えられて
います。


国名

症例数

性別*

(人口10万対)

年齢別♯

(人口10万対)

男性

女性

0-14

15-44

45歳以上

ギニア

1,588

1,732

527

1,891

857

(29)

(32)

(11)

(41)

(55)

リベリア§

1,911

1,838

561

2,060

703

(96)

(93)

(33)

(121)

(132)

シエラレオネ

4,792

5,081

1,978

5,592

2,129

(168)

(175)

(82)

(216)

(288)

※ 表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。
§データは2015年5月9日までのものです。


2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国

1.リベリアでは、42日間連続で新たなEVD確定例が発生しなかったことを受けて、2015年5月9日にEVD流行の終息が宣言されました。リベリアは3ヶ月間の高警戒期間に入り、その期間に、EVD感染が疑われる
患者から、約45検体の血液検体と口腔スワブが毎日採取され、EVDの検査が実施されていました。高警戒
期間中の6月29日にマージビ郡でEVD陽性例の死亡例が発見され、3月20日以降で初めての確定例と
なりました。患者は17歳の男性で、6月21日に発症して6月28日に死亡し、同日にEVD陽性が検出
されました。7月12日末の週に、最初の確定例の接触者5人からEVD陽性が確認されました。6月29日以降に
6人の確定例が報告され、うち2人は死亡、残り4人は退院しました。7月29日の時点で、今回の感染連鎖に
関連した接触者33人が健康監視されています。マージビ郡の16人の接触者が8月1日、モンセラード郡 の
17人の接触者が8月2日に健康監視が終了する予定です。感染の起源は調査中です。最も高い可能性として、リベリアの生存者に由来したウイルスではなく、ギニアやシエラレオネからの輸入による再出現で
あることが、ウイルスのゲノム配列の前段階の解析で示唆されています。

2.イタリア、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の7か国において、
広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。


【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report - 29 July 2015
http://apps.who.int/ebola/current-situation/ebola-situation-report-29-july-2015