エボラ出血熱の流行状況(62)
2015年10月21日更新
要約
10月18日末迄の1週に新たに3人のEVD患者がギニアから報告されています。同国ではそれ以前2週間、
新規患者発生はありませんでした。3人の新規患者のうち1人は首都コナクリから、残り2人はカリア、
フォレカリアからの報告です。注目すべきことに2人は登録された接触者ではなかったことです。うち1人は
死後の検査で診断が確定しています。現在ギニアには246人の接触者が監視中(内70人はハイリスクの
接触者)ですがさらに過去42日間に追跡されていなかった接触者が新たに253人見つかりました。そのため
監視されているあるいはされていない接触者のいずれからも近いうちに新たな患者が発生する危険性が
あります。シエラレオネは5週間続けて新たな患者発生はありません。
12週間連続して診断確定患者数は毎週5人かそれ以下の数値となっています。同時期のウイルスの拡がりは
西ギニアとシエラレオネのいくつかの地域に限局しており、流行の第3期に移行しています。
EVDに対する政府官庁間の協力制の調整が図られて第3期の取り組みが洗練されたものになれば、
患者発生数をゼロへ向かわせる現在の対策をより大きく発展させ、EVD感染伝播の持続的な終了が確保
されます。ウイルスの再侵入(活動性の感染伝播が発生している地域、もしくはウイルスを保有した
宿主動物から)や生存者からの ウイルス再出現を早期に発見するためのより強化された対応能力、
生存者の快適な生活を守る包括支援の一部としての検査やカウンセリングの対応能力、ワクチン接種から
迅速診断までの革新的な技術使用の増加が、第3期の対策における枠組みの中心です。
コナクリの患者は21歳の男性で同市のラトマ地区からの報告です。患者は過去の既知の患者との接触者
として知られていませんでした。また遺伝子診断においても最近のコナクリやフォレカリアの患者の原因と
なっているエボラウイルス株に感染してはいなかったとのことです。感染源の調査は実行中です。
フォレカリアで診断された35歳の女性も登録された接触者ではありませんでした。市中での死後の検査で
感染が判明しています。しかしながら地理的分析からはラトマ地区での感染の連鎖に繋がっていると
思われます。この地区の感染では2015年9月27日末の週にフォレカリアの同地区から4人の患者が報告
されています。フォレカリアの2番目の患者は彼女の3ヶ月の子供であり、接触者として登録されて
いました。10月18日の時点で246人の接触者が居り、43人はコナクリに、残りはフォレカリアにいます。
シエラレオネでは全ての接触者は同国における最直近の感染連鎖と関連しており、ボンバリとカンビア
では21日間の監視が終了しました。さらに治療を受けていた最後の患者も9月25日に2回連続する検査で
エボラ陰性が確定しました。同国は11月7日には終息宣言が行われる予定です。しかしながらボンバリと
カンビアの1人ずつのハイリスク接触者は追跡されていないままとなっています。これらの接触者の追跡は
それぞれの地域で最終のケースが報告されてから42日間継続される予定です。
EVDの再興や、再侵入が現在EVDの発生していない地域で起こらない様にするためには強力な
サーベイランスが必要です。ギニアにおける9ヶ所の検査機関では新たに654検体が10月18日末の週に
持ち込まれています。リベリアでは新たにあるいは再検査として1278検体が同期間に同国の4ヶ所の
検査機関で検査されています。シエラレオネでは8ヶ所の検機関で1,592の新たな検体が集積されています。
1.広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
今回のアウトブレイクの始まりから2015年10月18日現在までに診断確定例、疑い例、可能性例が
あわせてギニア、シエラレオネ、リベリア3国で28476人の報告がなされています。死亡者は11,298人
(診断確定例、疑い例、可能性例を含むが多くの例では予後について不明)となっています(表1)。
10月18日末の週に3人の新規発生患者がギニアで報告されています。診断確定例の男女比はほぼ
同じです(表2)。14歳以下の小児と比べると、15~44歳の成人はギニアとリベリアでは4倍感染
しやすく、シエラレオネでは3倍感染しやすくなっています。45歳以上の成人ではギニアで約5倍、
リベリアとシエラレオネで約4倍となっています。
10月18日末の週に、医療従事者の新たな感染例は報告されませんでした。流行が始まって以降、
医療従事者の感染者例は流行3か国で合計881人となっており、うち513人が死亡しています。
2.初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国
リベリアは2015年9月3日に同国で最後の診断確定患者の治療が終了し、ウイルスが陰性になったことが
確認されてから42日が経過したために終息宣言がなされました。現在最終患者が発症してから99日に
なります。現在リベリアは現在90日間の強化監視期間に入っています。国内の15の地区すべてから
10月18日末の週に1278検体が集積され、4ヶ所の検査機関で検査されました。
イタリア、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の7か国において、
広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。2014年12月29日に
報告された英国における既報患者が、回復した後の2015年10月6日に、EVDに関連した後期の合併症を
発症して入院しました。10月13日の時点で、総計62人の濃厚接触者が健康監視のために英国内で
同定されており、26人がrVSV-ZEBOVワクチンを接種しています。
表1.ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数
※ 表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、
再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
※2リベリアは2015年9月3日にEVD流行の終息が宣言されました。現在90日間の監視強化期間に
はいっています。2015年5月9日以降に報告された患者数と死亡者数は、5月9日に終息が宣言されたもの
とは独立した集団発生を構成していると考えられています。
表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における性別・年齢別症例数
※ 表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。
§ リベリアのデータは2015年5月9日までのものです。
【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report – 21 October 2015
http://apps.who.int/ebola/current-situation/ebola-situation-report-21-october-2015
10月18日末迄の1週に新たに3人のEVD患者がギニアから報告されています。同国ではそれ以前2週間、
新規患者発生はありませんでした。3人の新規患者のうち1人は首都コナクリから、残り2人はカリア、
フォレカリアからの報告です。注目すべきことに2人は登録された接触者ではなかったことです。うち1人は
死後の検査で診断が確定しています。現在ギニアには246人の接触者が監視中(内70人はハイリスクの
接触者)ですがさらに過去42日間に追跡されていなかった接触者が新たに253人見つかりました。そのため
監視されているあるいはされていない接触者のいずれからも近いうちに新たな患者が発生する危険性が
あります。シエラレオネは5週間続けて新たな患者発生はありません。
12週間連続して診断確定患者数は毎週5人かそれ以下の数値となっています。同時期のウイルスの拡がりは
西ギニアとシエラレオネのいくつかの地域に限局しており、流行の第3期に移行しています。
EVDに対する政府官庁間の協力制の調整が図られて第3期の取り組みが洗練されたものになれば、
患者発生数をゼロへ向かわせる現在の対策をより大きく発展させ、EVD感染伝播の持続的な終了が確保
されます。ウイルスの再侵入(活動性の感染伝播が発生している地域、もしくはウイルスを保有した
宿主動物から)や生存者からの ウイルス再出現を早期に発見するためのより強化された対応能力、
生存者の快適な生活を守る包括支援の一部としての検査やカウンセリングの対応能力、ワクチン接種から
迅速診断までの革新的な技術使用の増加が、第3期の対策における枠組みの中心です。
コナクリの患者は21歳の男性で同市のラトマ地区からの報告です。患者は過去の既知の患者との接触者
として知られていませんでした。また遺伝子診断においても最近のコナクリやフォレカリアの患者の原因と
なっているエボラウイルス株に感染してはいなかったとのことです。感染源の調査は実行中です。
フォレカリアで診断された35歳の女性も登録された接触者ではありませんでした。市中での死後の検査で
感染が判明しています。しかしながら地理的分析からはラトマ地区での感染の連鎖に繋がっていると
思われます。この地区の感染では2015年9月27日末の週にフォレカリアの同地区から4人の患者が報告
されています。フォレカリアの2番目の患者は彼女の3ヶ月の子供であり、接触者として登録されて
いました。10月18日の時点で246人の接触者が居り、43人はコナクリに、残りはフォレカリアにいます。
シエラレオネでは全ての接触者は同国における最直近の感染連鎖と関連しており、ボンバリとカンビア
では21日間の監視が終了しました。さらに治療を受けていた最後の患者も9月25日に2回連続する検査で
エボラ陰性が確定しました。同国は11月7日には終息宣言が行われる予定です。しかしながらボンバリと
カンビアの1人ずつのハイリスク接触者は追跡されていないままとなっています。これらの接触者の追跡は
それぞれの地域で最終のケースが報告されてから42日間継続される予定です。
EVDの再興や、再侵入が現在EVDの発生していない地域で起こらない様にするためには強力な
サーベイランスが必要です。ギニアにおける9ヶ所の検査機関では新たに654検体が10月18日末の週に
持ち込まれています。リベリアでは新たにあるいは再検査として1278検体が同期間に同国の4ヶ所の
検査機関で検査されています。シエラレオネでは8ヶ所の検機関で1,592の新たな検体が集積されています。
1.広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
今回のアウトブレイクの始まりから2015年10月18日現在までに診断確定例、疑い例、可能性例が
あわせてギニア、シエラレオネ、リベリア3国で28476人の報告がなされています。死亡者は11,298人
(診断確定例、疑い例、可能性例を含むが多くの例では予後について不明)となっています(表1)。
10月18日末の週に3人の新規発生患者がギニアで報告されています。診断確定例の男女比はほぼ
同じです(表2)。14歳以下の小児と比べると、15~44歳の成人はギニアとリベリアでは4倍感染
しやすく、シエラレオネでは3倍感染しやすくなっています。45歳以上の成人ではギニアで約5倍、
リベリアとシエラレオネで約4倍となっています。
10月18日末の週に、医療従事者の新たな感染例は報告されませんでした。流行が始まって以降、
医療従事者の感染者例は流行3か国で合計881人となっており、うち513人が死亡しています。
2.初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国
リベリアは2015年9月3日に同国で最後の診断確定患者の治療が終了し、ウイルスが陰性になったことが
確認されてから42日が経過したために終息宣言がなされました。現在最終患者が発症してから99日に
なります。現在リベリアは現在90日間の強化監視期間に入っています。国内の15の地区すべてから
10月18日末の週に1278検体が集積され、4ヶ所の検査機関で検査されました。
イタリア、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の7か国において、
広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。2014年12月29日に
報告された英国における既報患者が、回復した後の2015年10月6日に、EVDに関連した後期の合併症を
発症して入院しました。10月13日の時点で、総計62人の濃厚接触者が健康監視のために英国内で
同定されており、26人がrVSV-ZEBOVワクチンを接種しています。
表1.ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数
国名 |
症例定義 |
症例数 |
21日以内の 症例数 |
死亡者数 |
ギニア |
確定例 |
3,347 |
3 |
2,082 |
可能性例 |
453 |
未報告 |
453 |
|
疑い例 |
3 |
未報告 |
データなし |
|
国別総数 |
3,803 |
3 |
2,535 |
|
リベリア |
確定例 |
3,151 |
- |
データなし |
可能性例 |
1,879 |
- |
データなし |
|
疑い例 |
5,636 |
- |
データなし |
|
国別総数 |
10,666 |
- |
4,806 |
|
リベリア※2 |
確定例 |
6 |
0 |
2 |
可能性例 |
未報告 |
未報告 |
データなし |
|
疑い例 |
データなし |
未報告 |
データなし |
|
国別総数 |
6 |
0 |
2 |
|
シエラレオネ |
確定例 |
8,704 |
0 |
3,589 |
可能性例 |
287 |
未報告 |
208 |
|
疑い例 |
5,010 |
未報告 |
158 |
|
国別総数 |
14,001 |
0 |
3,955 |
|
総数 |
確定例 |
15,208 |
3 |
データなし |
可能性例 |
2,619 |
未報告 |
データなし |
|
疑い例 |
10,630 |
未報告 |
データなし |
|
総数 |
28,476 |
3 |
11,298 |
※ 表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、
再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
※2リベリアは2015年9月3日にEVD流行の終息が宣言されました。現在90日間の監視強化期間に
はいっています。2015年5月9日以降に報告された患者数と死亡者数は、5月9日に終息が宣言されたもの
とは独立した集団発生を構成していると考えられています。
表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における性別・年齢別症例数
国名 |
症例数 |
||||
性別* (人口10万対) |
年齢別♯ (人口10万対) |
||||
男性 |
女性 |
0-14歳 |
15-44歳 |
45歳以上 |
|
ギニア |
1,596 |
1,743 |
532 |
1,902 |
861 |
(29) |
(32) |
(11) |
(41) |
(55) |
|
リベリア§ |
1,911 |
1,838 |
561 |
2060 |
703 |
(96) |
(93) |
(33) |
(121) |
(132) |
|
シエラレオネ |
4,823 |
5,118 |
1,992 |
5,636 |
2,140 |
(169) |
(176) |
(82) |
(218) |
(290) |
※ 表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。
§ リベリアのデータは2015年5月9日までのものです。
【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report – 21 October 2015
http://apps.who.int/ebola/current-situation/ebola-situation-report-21-october-2015