(No.119)

ナイジェリアにおけるラッサ熱
2016年5月27日更新

 2015年8月から2016年5月17日までの間に、ナイジェリアにおいてラッサ熱患者が273人発生し、その内
149人が死亡していることが世界保健機関(WHO)に報告されました。患者はナイジェリアの23州から
報告されており、このうち検査結果により165人の患者で診断確定しており、89人が死亡(致死率53.9%)
しています。
 2015年8月以来、10人の医療従事者(HCW)がラッサ熱ウイルスに感染しており、うち4人が院内感染し
2人が死亡しました。
 2016年5月17日現在、8つの州からラッサ熱患者(疑い例、可能性例、診断確定例)が報告されており、
接触者の死亡または追跡調査が最大21日間行われています。現在248人の接触者が経過観察されて
おります。以前感染が見られた他の15州において最後に確認された感染伝播の可能性例から42日間の
経過観察期間が終了しました。

公衆衛生上の取り組み
 現在、2つの国立の研究所がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によるラッサ熱の確定診断を支援して
います。全ての検体においてエボラウイルス、デングウイルス、黄熱ウイルスの検査も行い、今までの
ところ全て陰性でした。現在検査を行っている2つの研究所は以下の施設です。
・ラゴス大学附属病院 ウイルス学検査室
・イルア スペシャリスト病院 ラッサ熱研究&制御センター
 WHOは他のキーとなるパートナーと共にラッサ熱流行に関する接触者追跡や経過観察、コミュニティに
おける動員を含めたサーベイランスと対応において保健省を支援しています。ラッサ熱の流行が始まって
以来、懸念することの1つとして現在調査中である症例の致死率の高さがあります。

WHOのリスク評価
 全体的にナイジェリアにおけるラッサ熱の流行は減少傾向を示しています。過去の年における季節性の
ピークを考慮すると、地域社会と医療従事者の意識改善、流行の備えや一般的な対応活動の改善により、
大規模な流行の危険性は低いです。それでも綿密な監視、積極的な症例検索、接触者追跡、研究所による
支援、病気に対する意識向上(地域社会における一般的なトレーニングと医療従事者における専門的な
トレーニングの両方)をし続けるべきです。

WHOからのアドバイス 
 今年のこの時期における季節性の感染流行を考えると、ラッサ熱が流行している西アフリカ各国には、
それぞれに関連する調査活動を強化することが勧められます。
 ラッサ熱が疑われる又は確定した患者の治療に当たる医療従事者は、患者の血液や体液、ウイルスの
付いた物品や衣類や寝具などの物資と接触することを防ぐために、さらに厳重な感染防御対策を適用する
必要があります。ラッサ熱患者と緊密(1メートル以内)に接触する必要のある医療従事者は顔面の保護
(フェイスシールドまたは医療用マスクとゴーグル)、清潔な滅菌までは必要としない長袖のガウン、
(いくつかの操作では滅菌の)手袋などを着用しなければなりません。
 検査施設で働く技師にもリスクがあります。ラッサ・ウイルス感染症を調査するために人および動物から
採取された検体並びに試料は訓練を受けた技師が取り扱い、最も厳しい生物学的な封じ込め条件が備えられた
検査施設で適切に取り扱われる必要があります。
 ラッサ熱が流行している地域からの帰国した発熱患者では、ラッサ熱を鑑別診断にあげる必要があります。
ラッサ熱であることが疑われる患者を見つけた医療従事者は助言を受け検査体制を整える必要があるので
直ちに地元と国の専門機関に連絡するべきです。
 WHOは、入手可能な情報に基づく限り、ナイジェリアへの渡航や貿易のいずれも制限することを推奨
していません。

【出典】
WHO, Emergencies preparedness, response.
 Lassa Fever – Nigeria 27 May 2016
http://www.who.int/csr/don/27-may-2016-lassa-fever-nigeria/en/