(No.94)

アメリカ合衆国におけるサルモネラ症
2016年4月28日更新

 2016年4月20日、アメリカ合衆国(米国)の国際保健規則(IHR)担当窓口は、汎アメリカ保健機構/
世界保健機関(PAHO/WHO)に対し、小さなカメ(甲羅長4インチ〈10cm〉未満)もしくはその生息環境
(例えば生息域の水など)への曝露を誘因とする、多州に渡るヒトに対するサルモネラ症の4つのアウト
ブレイクの調査が継続中であることを報告しました。
 今回のアウトブレイクに伴う合計124人の感染者は、米国の22州から報告されています。これらの感染者
のうち、33%が入院していますが、死亡者は報告されていません。全感染者の41%に当たる51人は5歳未満
です。この4つのアウトブレイクに関する最初の疾患は、2015年1月1日に始まりました。初期調査により、
これら2015年のアウトブレイクに関連したカメの発生源である可能性がある場所として、ルイジアナ州の
4つのカメ農場が特定されました。4つの農場から採取された池の水を調査した結果、アウトブレイクを
引き起こしていないサルモネラ菌が新たに分離されました。

公衆衛生上の取り組み
 米国疾病予防管理センター(CDC)は、これらのアウトブレイクと共に、サルモネラ菌を保菌したカメを
国外に輸出した可能性のあるこの特定されたカメ農場を調査しています。疫学調査、室内実験および環境
調査の結果により、カメもしくはその生息環境(例えば生息域の水など)への曝露がこれらのアウト
ブレイクの原因であることが示唆されました。

WHOのリスク評価
 米国では小さなカメの販売や流通が1975年以来禁止されているにもかかわらず、ペットとしてのカメに
関連したサルモネラ症のアウトブレイクが記録されています。同国では、特に幼児や小児にとって、カメは
ヒトにおけるサルモネラ症のよく知られた原因であり、今回のアウトブレイクでもほとんどの感染者は幼児や
小児でした。
 今回の感染は小さなカメに対する曝露が関連しており、それは国外にも輸出されているので、その他の
国の小児集団にも危険があります。発病や死亡の危険性は、重篤な免疫抑制患者において更に高くなります。
PAHO/WHOは、引き続き疫学状況の監視と最新の利用できる情報に基づくリスク評価を行っていきます。

WHOからのアドバイス
 小さなカメを含む爬虫類や両生類のペットを輸入する国々は、感染しているペットを輸入する可能性や、
地域のカメの個体群においてサルモネラ症の集団感染が発生する可能性に注意を払い、特に小児集団に発生
したサルモネラ症の調査を行う際に、小さいカメやその他の爬虫類あるいは両生類のペットへの曝露を原因
として考慮するよう、地方の保健当局に対して周知すべきです。

【出典】
WHO, Emergencies preparedness,response.
Salmonellosis - United States of America
28 April 2016
http://www.who.int/csr/don/28-april-2016-salmonellosis-usa/en/