(No.5)

中国における鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例
2017年1月17日更新

 2017年1月5日、香港特別行政区(SAR)の保健局は世界保健機関(WHO)に対して鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染確定例1例を報告しました。また1月9日に中国国家衛生出産計画委員会(NHFPC)は
新たに106人の同ウイルス感染確定例を報告しました。

症例の詳細情報
 2017年1月5日、鳥インフルエンザA( H7N9)のヒト感染例がSARの保健局から報告されました。患者は62歳の男性で基礎疾患を有しています。昨年の12月15日に広州市の増城区に旅行しており、滞在中の本年
1月1日にインフルエンザ様症状を発症しました。翌日、東莞市の病院に入院しましたが3日に香港にもどり、翌日さらなる治療のために入院しました。全身状態が悪化し、集中治療室に転室しましたが1月6日に死亡
しました。患者の検体から5日に実施された逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法による検査の結果、インフルエンザA(H7N9)陽性と診断されました。患者には最近の家禽との接触や生きた家禽市場への訪問歴はありません。接触者の追跡調査が実施されています。
 2017年1月9日NHFPCは鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例106人を報告しました。患者の発生は
昨年11月26日から12月29日までの期間です。106人中36人は女性で、年齢分布は中央値が54歳(23から91歳)となっています。患者の報告は江蘇省52人、浙江省21人、広東省14人、上海2人、福建省2人、湖南省
1人となっています。報告の時点で35人が死亡しており、57人が重篤な状態であるとのことです。80人に
家禽との接触や生きた家禽市場への訪問歴があります。

2つの集団発生の報告
第1集団
 江蘇省蘇州市在住の66歳男性。昨年11月25日に発症し、同月28日に入院しており、12月12日に死亡しています。患者には生きた家禽市場での接触歴があります。
 江蘇省蘇州市在住の39歳女性。昨年の12月8日に発症し、同日入院となりました。患者は上記患者の子供です。報告時点で重篤な肺炎症状を呈しています。
 上記2人の患者間でヒトーヒト感染を起こした可能性については除外できません。

第2集団
 安徽省合肥市在住の66歳男性。昨年12月16日に発症し、翌日入院しましたが12月20日に死亡しています。患者には生きた家禽市場での接触歴があります。
 安徽省合肥市在住の62歳男性。昨年12月22日に発症し、同日上記の66歳男性と同病棟に入院しています。現在重篤な状態です。
 上記2人の患者間でヒトーヒト感染を起こした可能性については除外できません。
2013年はじめから現在まで、国際保健規則(IHR)には鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染確定例が916例報告されています。

公衆衛生対策
 2016年12月における鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染確定例の増加を受けて中国政府は対策を
強化しています。
・NHFPCは流行のサーベイランス、適時のリスク評価、流行状況のいかなる変化に対する調査を強化して
 います。
・NHFPCは地域のNHFPCに対してアウトブレイクの発生源をコントロールする効果的な対策実施と患者を
 最小限に抑えるように要請してします。
・早期診断、早期治療、重症例の治療、重症例の発生数と死亡例数の抑制を強化すること
・更に治療を強化すること
・NHFPCと農業部、工業信息化部、商務部の合同調査団が患者発生の多い浙江省、安徽省、広東省を訪問
 し、地方におけるサーベイランスと医療、感染予防と制御についての、合同での監督と監視、指導を行い、
 家禽の市場管理と生きた家禽の地域を越えた移動に焦点をあてた防疫対策の奨励を実施しています。
・江蘇省の該当する県では生きた家禽の市場が去年の12月遅くに閉鎖されています。また、浙江省、広東
 省、安徽省では生きた家禽市場の管理が強化されています。
・住民におけるリスクコミュニケーションの実施と住民との情報の共有を行う事。

香港特別行政区は以下の様な対策を行っています。
・住民に対して、同地域内に滞在中および他地域に渡航中は、食品衛生および環境衛生を各個人が厳密に
 維持することを強く要請。
・医師、病院、学校およびその他の公共施設に対して、最新の状況に関する警告を発出。

WHOによるリスク評価
 過去にも12月から1月にかけての時期には同様な鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例の急な増加が観察されています。しかし疫学的状況の詳細なモニタリングと直近のウイルスの特徴について調べることは、関連したリスク評価やリスクマネージメント対策の調整を遅滞なく行うためには必須です。
 多くの患者は、生きた家禽市場での接触を含め、汚染された環境や感染した家禽との接触を通して鳥インフルエンザA(H7N9)に曝露される事により発症しています。家禽や環境からウイルスが継続して分離されていることから更に人感染例が発生する事が予測されます。医療従事者を含めて人での小集団発生がみられていますが、現時点での疫学的、ウイルス学的エビデンスによると、このウイルスは持続的にヒト-ヒト感染を起こす能力は獲得していないと考えられます。入手可能な情報に基づき、ヒト集団内での拡大は起こっていないと思われます。
 鳥インフルエンザA(H7N9)へのヒト感染は稀なうえ、公衆衛生上の重大なインパクトを生じる可能性があるので詳細なモニタリングが必要です。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Human infection with avian influenza A(H7N9) virus – China
Disease outbreak news
17 January 2017
http://www.who.int/csr/don/17-january-2017-ah7n9-china/en/