(No.16)

中国における鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例
2017年2月22日更新

 2017年2月4日、台北の疾病予防管理センター(CDC)が、新たに1人の鳥インフルエンザA(H7N9)の検査によるヒト感染確定例を報告しました。この患者は、台北CDCから報告された鳥インフルエンザA(H7N9)ヒト感染例として5人目となります。

症例の詳細情報

 患者は69歳の男性で、2016年9月18日から2017年1月25日まで中国の広東省陽江市を訪問していました。また、この患者は2017年1月23日、広東省滞在中に発熱と悪寒を発症しました。2017年1月25日、患者は台湾に帰還し救急室を受診しました。医学的な診察を行っている間は、発熱や肺炎は発見されず、口腔咽頭検体によるインフルエンザ迅速検査は陰性でした。翌日、追加検体により鳥インフルエンザA(H7N9)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を行いましたが陰性でした。
 2017年2月1日、患者は発熱、湿性咳、呼吸困難を呈して、救急室を再度受診しました。両側の肺炎と診断され、呼吸不全により気管内挿管されました。2017年2月2日、追加の痰検体が採取され、鳥インフルエンザA(H7N9)が検査により陽性となりました。
 この事象の発覚に伴い接触者の追跡調査を行ったところ、中国にいるこの患者の同僚6人のうち2人において、治療により回復したものの上気道炎症状があったことが明らかになりました。この患者の家族2人については、報告時点において無症状のままです。
 この患者において、これまでのところ鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスへの曝露源は明らかになっていません。また、患者は広東省滞在中に生鳥や生きた家禽を扱う市場へ接触したことも否定しています。さらに、病気が疑われる人との接触も否定しています。現在、患者は台湾へ帰還後に在宅あるいは病院にて過ごしています。
 これまでのところ、2013年初頭以降、国際保健規則(IHR)担当窓口をとおして、鳥インフルエンザA(H7N9)の確定診断患者が総計で1,223人報告されています。
 この患者総数には、台北CDCからの5人、香港衛生防護センター(CHP)からの20人、マカオ特別行政区(SAR)からの1人、カナダからの2人、マレーシアからの1人が含まれています。

公衆衛生上の取り組み

 台北CDCは次のような対策をとっています。

• 疫学調査、濃厚接触者の追跡調査、管理、医学的な観察を行いました。
• インフルエンザや鳥インフルエンザのウイルス学的なサーベイランスと同様に、原因不明の肺炎のサーベ
 イランスや通常のインフルエンザ定点観測調査を強化しました。
• 更なる調査のため、感染者の渡航歴を中国の国家衛生・計画出産委員会(NHFPC)へ送信しています。

 台湾の農業省は、通常の業務として1997年以来、鳥インフルエンザに対する野生の鳥や家禽へのサーベイランスを行っています。鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスが2015年に野生の鳥から検出されましたが、系統学的な分析を踏まえますと、これらのウイルスは、現在中国本土で家禽に感染しており、これらの感染した鳥に曝露することでヒトへ感染が流出している、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスとは異なります。

WHOのリスク評価

 ウイルスの侵淫地域での感染者が国際的な往来を行った場合、その渡航中や訪問後に別の国でその感染が発覚する可能性があるでしょう。もし、そのようなことが起こった場合でも、このウイルスがヒトの間で容易に感染伝播する能力を獲得していないため、地域レベルでの更なる感染の拡散の可能性は低いと考えられています。

【出典】
Emergencies preparedness, response Human infection with avian influenza A(H7N9) virus – China Disease outbreak news 22 February 2017
http://www.who.int/csr/don/22-february-2017-ah7n9-china/en/