(No.22)

ベナン、トーゴ、ブルキナファソにおけるラッサ熱
2017年3月10日更新

ベナンおよびトーゴの感染例(ベナンからの輸出感染例)
 2017年2月20日、ベナン保健省が世界保健機関(WHO)に対して、ベナンのナイジェリアとの国境に
近接する、ボルグ県Tchaourou地区においてラッサ熱感染例が発生したことを報告しました。この患者は、
ナイジェリアのベナンとの国境に近接する地域に居住している妊婦でした。
 2017年2月11日、この患者は入院のうえ帝王切開で新生児(未熟児)を出産した後、2017年2月12日に
死亡しました。ベナンの首都コトヌの検査機関において検体が検査により陽性であることが判明し、その後、ナイジェリアのラゴス大学病院ラッサ熱研究所で陽性が再確認されました。新生児とその父親は断りなく
退院し、トーゴ北部のMango市内の病院に入院しました。
 トーゴの国立衛生研究所において、新生児は検査でラッサ熱陽性、父親は陰性であることが判明しました。新生児はリバビリンによる治療を受け現在は状態が落ち着いていますが、早産児のためトーゴ北部地域の病院に入院したうえで全身モニタリングを受けています。
 患者とその新生児に関連した、合計68人の接触者がベナンで、29人の接触者がトーゴで経過観察されています。

トーゴの感染例(ブルキナファソからの輸出感染例)
 2017年2月26日、トーゴからの情報を受け、ブルキナファソ保健省がWHOに対して、トーゴ北部地域の
病院においてラッサ熱診断確定例が発生したことを報告しました。この患者は、ブルキナファソ南東部に位置するクルペロゴ県Ouargaye地区で発症しました。
 この患者は妊婦で、ブルキナファソの病院に入院していました。その後退院し、自宅で流産しました。
ブルキナファソにおける2回目の入院の後、トーゴ北部のMango市内の病院に転院し、2017年3月3日に死亡しました。
 トーゴの国立衛生研究所において、この患者の検体がラッサ熱陽性であることが判明しました。
 この患者に関連した、合計7人の接触者がトーゴで特定されておりますが、引き続き接触者の追跡調査が
行われています。また、135人の接触者がブルキナファソで特定されており、引き続き接触者の追跡調査が
行われています。

トーゴの感染例
 2017年3月2日、男性患者が発熱と下血でKpendial保健行政区にある保健センターに入院し、2017年3月
3日に州立病院に転院しました。
 この患者の検体はトーゴの国立衛生研究所に送付され、ラッサ熱陽性であることが検査で判明しました。
その後、3月6日に退院していますが、調査は継続中です。この患者とその親族は、在宅にて経過観察されています。
 この患者に関連して、合計18人の接触者が特定されています。

公衆衛生上の取り組み
 ベナン、ブルキナファソ、トーゴの保健当局は、これらのラッサ熱感染例に対して次のような対策手段を講じています。
・疫学的調査のため、感染が発生した地域に緊急対応チームを派遣すること。
・接触者を特定し経過観察を行うこと。
・医療施設における感染予防および管理手段を強化し、医療従事者に概要を説明すること。
・トーゴ、ブルキナファソ、マリ、ベナンの間で、国境を越えた協働と情報交換を促進すること。 
               
WHOのリスク評価
 ラッサ熱は急性のウイルス性出血熱感染症です。ラッサウイルスは、げっ歯類の尿または糞で汚染された
食物や家庭内の物品との接触をとおしてヒトへ感染します。また、ヒト-ヒト感染や検査室内での感染伝播も起こり得ます。
 ラッサ熱は、近隣のナイジェリアやその他の西アフリカ諸国で地域内流行が発生し、ほとんど毎年にわたり同地域の異なる場所でアウトブレイクを引き起こしており、年間の感染のピークは12月から2月の間に見られます。ベナンにおける最近のラッサ熱のアウトブレイクは2016年1月から5月の間に、今回と同じ地域において発生しています。国家レベルにおいて、28人の死亡者を含む少なくとも54人の感染例が報告されています。ブルキナファソとトーゴは過去において孤発例を報告しています。
 ナイジェリア、トーゴ、ブルキナファソの間において持続的で大きな人々の移動が起こっていることを考えると、西アフリカにおけるラッサ熱孤発例の発生が予測され、同地域の近隣国においても更なる孤発例の発生があり得るでしょう。
 しかし、ベナン、トーゴ、ブルキナファソにおける継続した対策手段を行うことで、これらの診断確定例からの更なる感染拡散の危険性は低いと考えられます。前年の季節性変動のピーク、この感染症に対する意識の高まり、全体的に準備や対策手段が強化されていること、地域の協働が進んでいること、等を考慮しますと、広範囲におよぶアウトブレイクとなる危険性は中等度であると考えられます。

WHOからのアドバイス
 ラッサ熱の予防ができるかどうかは、げっ歯類の家内への侵入を防ぐために地域レベルでの衛生の向上を
促進できるかどうかに依存しています。医療環境においては、推定された診断病名にかかわらず、医療従事者は患者を看護する際に常に標準的な感染防御管理手段を適用すべきです。
 まれな状況ではありますが、ラッサ熱が流行している地域への渡航者がその他の国々にこの感染症を輸出
します。その他の熱帯感染症の方がより多く見られますが、西アフリカから帰還した発熱患者において、特にラッサ熱が流行していることが知られている国々の僻地や病院に対する暴露歴がある場合、ラッサ熱の診断を考慮すべきです。ラッサ熱の感染が疑われる患者を診察した医療従事者は、すぐに地域および国家の専門家に意見を求めるために連絡をとり、臨床検査の段取りを整えるべきです。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Lassa Fever – Benin, Togo and Burkina Faso
Disease outbreak news
10 March 2017
http://www.who.int/csr/don/10-march-2017-lassa-fever-benin-togo-burkina-faso/en/