(No.27)

中国における鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例
2017年3月23日更新

  2017年3月17日、中国の国家衛生・計画出産委員会(NHFPC)は世界保健機関(WHO)に対し、同国において新たに合計22人の鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例が検査で確認されたことを報告しました。

症例の詳細情報
 発症日は2017年2月28日から3月13日の範囲です。この22人の感染例のうち2人が女性でした。年齢は33歳から77歳で中央値は52.5歳でした。症例は次の地域から報告されています;重慶市(1人)、福建省(1人)、広東省(3人)、広西チワン族自治区(6人)、貴州省(3人)、河南省(2人)、湖南省(5人)、江西省(1人)。広西チワン族自治区から報告された6人のうち5人が同じ河池市からの報告でした。
 報告時点で3人が死亡し、17人が肺炎(6人)か重症肺炎(11人)のいずれかの診断を受けています。その他2人の臨床症状が現時点では不明です。19人が家禽か生鳥市場への曝露歴があると報告されており、3人について曝露の可能性は不明で現在調査中となっています。集団感染例は報告されておりません。  2013年初頭以来、現在までに鳥インフルエンザA(H7N9)の確定診断患者が合計1,329人報告されています。

公衆衛生上の取り組み
 2016年12月以来のヒト感染例の増加を考慮し、中国政府は国家レベルと地方レベルで以下のような強化策を講じています。
• 生鳥市場の管理と地域間輸送に焦点を絞った感染対策の強化をし続けています。
• 省内の感染制御方法を指導するために鳥インフルエンザA(H7N9)流行の傾向を評価、分析しています。
• 広西チワン族自治区や湖南省において流行の制御と予防のための注意と指導の強化を行いました。
• 一般住民に対し自己防衛を指導するためにリスクコミュニケーションを実施し、情報公開の強化を行いました。

WHOのリスク評価
 2016年10月1日以来に発症した5番目の鳥インフルエンザA(H7N9)の流行におけるヒト感染例の総数は、流行早期の急増と比較しても多くなっています。
 鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染は、通常では起こり得ない状況のままです。疫学的状況の緊密な観察や、最近のヒトウイルスの特徴を更に明らかにすることは、関連する危険性を分析し適時に危機管理手段を適応させていくために大変重要です。
 ほとんどのヒト感染例は、生鳥市場への曝露を含む、感染した家禽あるいは汚染された環境を通じて、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスに曝露されています。ウイルスは引き続き動物や環境から検出されており、生きた家禽の販売が引き続き行われていることから、更なるヒト感染例の発生が予測されます。同じ病棟の患者間などの上記事例を含む、鳥インフルエンザA(H7N9)のヒトにおける小規模な集団感染事例が報告されていますが、現在の疫学的およびウイルス学的な証拠より、このウイルスはヒトの間で持続的に感染伝播する能力を獲得していないことが示されています。そのため、コミュニティレベルにおける更なる感染拡散の可能性は低いと考えられます。

WHOからのアドバイス
 WHOは、鳥インフルエンザの発生が確認されている国への渡航者に対し、可能な限り養鶏場への立ち入り、生鳥市場における動物との接触、家禽を解体する場所への立ち入り、家禽や動物の排泄物で汚染されているとみられるあらゆる物品との接触を避けることを勧めています。渡航者は石鹸と水で手をよく洗い、食品の安全と衛生習慣の維持に努めるべきです。
 WHOは、この事象に関連して、特別な入国スクリーニングおよび渡航や貿易の制限を行うことを推奨してはいません。鳥インフルエンザが考えられる地域を渡航する、または帰国した直後に、渡航者が重症の急性呼吸器症状を発症した場合には、常に鳥インフルエンザウイルスへの感染を鑑別診断として考えておくべきです。
 WHOは各国に対して、重症急性呼吸器感染症(SARI)およびインフルエンザ様疾患(ILI)のサーベイランスを含むインフルエンザのサーベイランスの強化を継続し、通常と異なる症状がないか慎重に調査し、国際保健規則(2005)に基づきヒト感染例は必ずWHOに報告し、各国の健康に備える活動を続けていくことを求めています。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Human infection with avian influenza A(H7N9) virus – China
Disease outbreak news
23 March 2017
http://www.who.int/csr/don/23-march-2017-ah7n9-china/en/