(No.61)

ナイジェリアにおける急性E型肝炎の流行
7月18日更新

 2017年6月18日ナイジェリア連邦保健省は、同国の北東州においてE型肝炎が発生したことを世界保健機関(WHO)に報告しました。5月3日にニジェールとの国境地域にある(ボルノ州)Damasakにおいて1人目の患者が特定されました。1人目の患者から検体を採取し、確定診断のために研究所に送りました。のちにカメルーンとの国境地域にあるボルノ州の地方自治区の一つであるNgalaから報告されています。7月2日時点で21人の診断確定例を含む146人の診断確定例と疑い例が報告されています。
 Ngalaにおいて25人の妊婦女性(21%)が感染していることが報告されており、うち2人が死亡しました(死亡率8%)。患者数は3つの地方自治区(Ngala から112人、Mobbar から19人、Monguno から14人)が 報告されています。NgalaにおいてE型肝炎の報告数が最も多く、6月19日から7月2日までの間に29人が報告されています。更なる診断のために27検体がラゴスのウイルス研究所に輸送されました。収集され検査された検体のうち、21検体(10検体がNgalaから、7検体がMobbarから、4検体がMongunoから収集されたもの)が陽性、6検体が陰性でした。現在23検体が収集され検査中です。
 ナイジェリア北東部において不安定な治安状況にあり、人道危機が現在も続いているため、このE型肝炎の流行は急速に拡大し、長い間持続する可能性があります。ナイジェリアにおけるこの紛争は8年間続いており、その結果190万人が国内避難民となりました。同地域においてチャドやニジェールとの国境地域の難民キャンプや避難所から来る人の激しい動きに直面しています。さらに近隣諸国からの帰国民の新たな波が現在の人道的援助能力を圧倒しています。帰還民は2017年1月から町に戻り初め、赤十字国際委員会(ICRC)と移民局によると、これまでのところこの町の人口は90,000人と推定されています。町には非公式のキャンプが一つあり、放浪者や同地域に定住した先住民のどのコミュニティにも属さない人達がいます。その結果、同地域において既に弱ったシステムを圧倒する人口の過密状態が起こっています。生活に必要な水、下水設備、衛生設備、保健サービスの利用が不足すると、この病気が非常に急速に拡大する可能性があります。

公衆衛生上の取り組み
 WHOや国連児童基金(UNICEF)、Oxfam(水、下水、衛生設備(WASH)分野において)、国境なき医師団(MSF)、FHI360、ICRC(ナイジェリア赤十字と共に活動)、北東地域企業団(NERI)を含む加盟団体がこの問題に対応しています。この流行に対し、以下の活動を行っています。
・WHOとMSFは患者に対し無料の症例管理を支援します。これには必要な者の入院、入手可能な薬、保健要
 員なども含まれます。症状のある患者の管理は地域レベルでMSFから支援をうけています。
・地元のパートナーの支援を受け保健施設において疫学的サーベイランスシステムが実働しています。
・WHOや他の加盟国から技術的支援が供給されています。
・6月15日時点でWASH(健康/水と衛生の環境を整備する活動)が現在の水源の評価と地図表記を行い、水
 の塩素化で迅速な対応を行うため接触を確立しています。
・州保健省やナイジェリア疾病予防センター、水と環境省との間で多分野からのアプローチが強調され、調整
 される必要があります。
・モスクや他の公共の場における地方自治体の保健教育者による指導や広報活動を通じて公衆衛生意識が高
 まっています。さらに現地の保健スタッフが8つのボランティアコミュニティ動員(VCMs)や医療スタッ
 フ、MSF、UNICEF、FHI360などから指導されています。

WHOのリスク評価
 ナイジェリアは、東はチャド、カメルーン、北はニジェール共和国、西はベナン共和国、これら4つの国々と国境を共有しています。ニジェール共和国やカメルーン、チャドとの国境であるナイジェリア北東部は政情が不安定で、同地区でE型肝炎の流行が起こっています。
 この地域において近隣のチャドやニジェール共和国でE型肝炎が流行する特徴があります。現在、紛争があり政情が不安定のため、多数の国内避難民(IDP)や難民や安全な水へのアクセス不足が病気の拡大につながっています。元々いた地域に戻っていく帰国民の数も増えてきています。さらに国境を越えて感染が拡大する可能性やニジェール共和国や他の近隣諸国に感染が拡大するリスクも考慮される必要があります。多くの難民キャンプやIDPキャンプが混在して、衛生状態が悪いためE型肝炎のリスクが高まっています。そのため国レベルで監視するリスクが高いです。
 特にナイジェリア北東部の人道的危機を抱える地域において地域レベルでのリスクは中程度です。グローバルレベルでのリスクは低いです。

WHOからのアドバイス
 WHOは 家庭用浄水器の使用を含む様々な方法を通じて安全な飲料水へのアクセスや飲料水の改善を推奨しています。そして流行地において定期的に水質を監視する必要があります。
 またWHOはヒトの排泄物を正しく処理、分別することによって個人の衛生管理を改善し、安全で清潔な食品を用意することを推奨しています。屋外で排便するように呼びかけるために異なるキャンプ内においてトイレの数を増やす必要があります。
 妊婦の出産前のカウンセリング、難民やIDPの住居環境の改善、医療施設や治療方法の改善においてパートナーによる支援、これらの確立を通じてリスクのある人々を対象として介入していくべきです。
 疑い例を適宜確認するために地域及び国の検査室能力を改善する必要があります。現在の流行を管理するためにチャド湖への地域別のアプローチを通じて、国境を越えた介入を強化するべきです。
 WHOは現在起こっている出来事に対する入手可能な情報に基づき、ナイジェリアへの渡航および貿易において、いかなる制限も推奨しません。

【出典】Emergencies preparedness, response 
Acute hepatitis E – Nigeria
Disease outbreak news
12 July 2017
http://www.who.int/csr/don/12-july-2017-hepatitis-e-nigeria/en/