(No.62)

ナイジェリアにおけるコレラの流行
7月18日更新

 2017年7月7日に世界保健機関(WHO)はナイジェリアのクワラ州においてコレラの流行が発生し、現在も流行中であることを発表しました。2017年4月最後の週に1人目の患者が急性下痢症で報告され、5月1日以降、患者数と死亡者数の急激な増加が観察されました。しかし新たな患者報告数は最近の4週間以内は減少しています。

 6月30日時点で11人の死亡者(死亡率0.7%)を含む1,558人のコレラ疑い例が報告されています。これらのうち13人が検査室での培養により診断確定されています。疑い例の50%が男性で49%が女性です(疑い例の1%が性別不明です)。疾患は全ての年齢層で見られ、5月1日から6月30日までの間にクワラ州の次の5つの自治体からコレラ疑い例が報告されています。Asaから18人、東Ilorin から450人、南Ilorinから215人、西Ilorinから780人、Moroから50人(地方自治体からの情報45人分が不明です)

 流行を起こしているコミュニティで観察される劣悪な下水の状態が、このコレラ流行を起こしやすくさせている要因の一つです。きれいな水へのアクセスの欠如や衛生状態の悪さが重要なリスク要因の一つです。

公衆衛生上の取り組み
 州の健康局はナイジェリア疾病予防センター、ナイジェリアフィールド疫学及び検査トレーニングプログラム、国家プライマリヘルスケア開発庁、Ilorin大学付属病院、WHO、加盟国の支援を受けてアウトブレイクへの対応を調整するために、緊急対策実施本部(Emergency Operation Center)を立ち上げました。以下の対策が実行に移されています。

・国レベルの学際的なチームが技術支援提供のためにクワラ州に動員されました。
・症例はクワラ州の地域保健施設で対処されています。能動的な症例探査が流行しているコミュニティと周囲
 のコミュニティで行われています。これらの活動は、上述したパートナーによるサーベイランスチームの形
 成と自治体領域の疾病サーベイランスと報告官(Disease Surveillance and Notification Officers)の動員
 で強化されています。
・照合とデータの入力は現在進行中です。
・検査室での調査を改善する目的で、コレラの迅速診断テストが選ばれた施設に配布され、使用方法について
 医療従事者が研修を受けました。
・症例管理改善のための努力も続けられています。2017年6月15日に三カ所の最も影響を受けている自治体
 領域の臨床医がコレラ症例の管理と感染予防と制圧について研修を受けました。現在の感染予防と制圧に関
 する能力は十分に開発されておらず、そこには安全な水への乏しいアクセス、貧弱な下水設備と衛生環境
 が、感染予防と制圧の標準規則を遵守させることの非常な困難さとともに存在しています。
・社会的動員活動、ヨルバ語放送の「ジングレス(jingles)」を使ったり、病気の知識の普及や医療機関の
 早期受診を勧めるために、流行州の宗教指導者を病気に対して敏感にしたりことで継続しています。
・環境調査は継続して行われていて、水のサンプル(地域の井戸や家庭の飲み水)がコレラ菌(Vibrio
  cholerae)陽性かどうか検査されています。
・検査室レベルの対応としては、二カ所の医療施設における迅速診断キットの使用に関して事前研修や仕事を
 しながらの研修を含んでいます。コレラ菌に対する感受性検査の結果はテトラサイクリンとアンピシリン耐
 性を示しています。また、追加の迅速診断キットが到着することが期待されています。
・多セクターアプローチが強調される必要があり、参画が奨励されます。これは州保健局による適正な医療廃
 棄物管理の確認と水資源局によるきれいな運搬可能な水へのアクセスを含みます。

WHOによるリスク評価
 現在のアウトブレイクは、ナイジェリアが深刻な人道的状況に直面し、大きな髄膜炎のアウトブレイクから回復しつつあるときに起きています。
 このアウトブレイクに関する潜在的な問題は、現在も続いている雨期、州レベルのアウトブレイク管理能力上の困難とベニン共和国との国境も含む5つの他の州との境界を共有していることを含みます。
 サーベイランスシステムはいかなるアウトブレイクの拡大の可能性も早期に検出するために、隣接する州において強化されるべきです。

WHO によるアドバイス
 WHOは、新しい症例を発見するためのサーベイランスの強化と医療施設レベルの記録の保管とデータ管理の改善を勧告します。WHOは、最も流行している地域にコレラ治療センターを設立すること、適切な物流が所定の場所で行われること医療物資が備蓄されていることを確かなものにすること勧告します。
 WHOは現在の事象に関して得られる情報に基づいて、ナイジェリアへのいかなる旅行も貿易の制限も勧告しません。

【出典】Cholera – Nigeria
Disease Outbreak News 12 July 2017
http://www.who.int/csr/don/12-july-2017-cholera-nigeria/en/