(No.65)

ケニアにおけるコレラの流行
7月24日更新

 2017年始めからケニアにおいてコレラ患者が急増しています。同国における2017年初めてのコレラの流行はタナ・リバー郡から報告されています。この流行は2016年10月から始まっており2017年4月に管理下に置かれました。
 2017年2番目のコレラの流行はガリッサ郡で4月2日から始まり、のちにナイロビ郡、Murang’a郡、モンバサ郡、トゥルカナ郡、Kericho、ナクル、Kiambu郡、ナロク郡を含む他の9つの郡からも報告されています。主にダダーブの難民キャンプにおいて流行しておりHagaderaやDagahaleh、IfoⅡキャンプからも死亡者が報告されています。トゥルカナ郡のKakumaやKalobeyeiの難民キャンプにおいても流行しています。
 さらに一般住民からも流行の報告があり、ナイロビ郡の2か所においてコレラの流行が発生しています。一つ目はナイロビのホテルで6月22日に行われた会議の参加者の中から発生しており、146人の患者がナイロビの異なる病院で治療を受けています。二つ目は7月10日から12日の間に KICC Tsavo Ballにおいて中国見本市が開催され、そこから136人の患者と1人の死亡者が報告されています。
 現在、ガリッサ郡とナイロビ郡の2つの郡において流行しています。7月17日時点で今年初めから14人の死亡者(致死率1.2%)を含む1,216人の疑い例が報告されています。7月16日までの1週間で死亡者は0人、患者が38人報告されています。
 標準検査機関で検査したところ合計124人の患者がコレラ菌陽性でした。また6月25日までの1週間でナイロビにある国立公衆衛生研究所で培養したところ25検体中18検体において小川型コレラ菌陽性でした。
 現在の流行の主な原因としてマスギャザリング(Karen地区で開催された結婚式やホテルで行われた国際会議など)、安全な水や適切な下水処理へのアクセスの悪さ、国内と周辺諸国における大規模な人口移動など、その病気の伝播や拡大を助長する人口密度の高さが含まれます。
 2014年12月以来、ケニア共和国はコレラの継続的な大流行を経験しており、累計17,597人(2015年は10,568人、2016年は6,448人)の患者が報告されています。

公衆衛生上の取り組み
 ケニア共和国は流行への対応を調整するために国家対策本部を立ち上げました。2017年1月から世界保健機関(WHO)と加盟国は流行のコントロールのために技術支援を行っています。同国は流行のさらなる拡大を防ぐために準備介入に焦点を当てた対応計画を策定しています。WHOの地域事務所はこの流行の迅速なコントロールを支援するために、アフリカの角と呼ばれる地域でのエルニーニョ現象の後のマネージメントのためナイロビに配置されたスタッフと専門家を再編成する予定です。またWHOは最もリスクの高い5つの郡において疾病のサーベイランスと対応の調整を支援する予定です。加盟国は国際連合児童基金(UNICEF)によるプライマリ・ヘルスケアと社会的動員活動を含む継続的な対応努力を支援することを約束しています。

WHOのリスク評価
 コレラは糞便で汚染された水や食品の中に存在するコレラ菌の摂取によって起こる急性腸管感染症です。安全な水や適切な下水処理へのアクセス不足が主な原因です。コレラは常に潜在的で重篤な感染症と考えられており、高い罹患率や死亡率を引き起こす可能性があります。また曝露頻度や曝露されたヒトや環境によっては急速に拡大する可能性があります。
 同国において毎年コレラの流行が報告されており、5年から7年おきに大きな流行が発生しています。
 現在の流行のリスクは国家レベルおよび地域レベルにおいては高く評価され、世界レベルにおいては中程度と評価されています。この流行はアフリカの角と呼ばれる地域で、干ばつ、紛争、政情不安定などの状況下で発生しました。また、この流行は人口密度の高い首都ナイロビと国内と周辺諸国で大規模な人口移動が起きている2つの難民キャンプ(Kakuma とDadaab)がある地域で発生しています。これまでの同国における大規模な流行は同様の状況が起因しており、同国の他の地域と同様、流行地におけるコレラ蔓延のリスクは高いです。同国において限られた対応能力と安全な水へのアクセス不足が確認されています。流行を食い止め拡大を抑えるための早期の準備と対応を実施するチャンスはあります。
 またマスギャザリング活動と関連した現在の流行により食品安全性のリスクを高め、レストランやホテルの衛生検査が必要となります。

WHOによる推奨
 WHOはコレラの流行に対する早期発見と対応、ならびに調整と多部門からのアプローチの強化のために、郡と保健施設の準備を改善することを推奨しています。さらに家庭やレストラン、ホテル、難民キャンプ、保健施設における衛生習慣を改善し、食品安全に関する介入を強化する必要があります。
 WHOはこの現在の流行に関する入手可能な情報に基づき、ケニア共和国の渡航および貿易において、いかなる制限も推奨しません。

【出典】Emergencies preparedness, response 
Cholera – Kenya
Disease Outbreak News
21 July 2017
http://www.who.int/csr/don/21-july-2017-cholera-kenya/en/