(No.82)

セーシェル-ペスト疑い例
10月19日更新

 2017年8月以来、マダガスカルは主要都市と他の非流行地域における大きなアウトブレイクを経験しています。このアウトブレイクは近隣のインド洋諸島へと広がっていく中等度のリスクをもたらします。このリスクは肺ペストの潜伏期(曝露から発症までの時間)が短いことと、空港及び他の主要な港湾における出国時スクリーニング対策によって緩和されています。

Plague outbreak situation reports

 2017年10月10日セーシェル保健省は、世界保健機関(WHO)に対して肺ペストの可能性の高い感染例を報告しました。患者は、マダガスカルを訪問し、2017年10月6日にセーシェルに戻った34歳の男性です。2017年10月9日に発症し、地域の保健センターを受診しました。診察と報告された最近のマダガスカルへの渡航歴にから肺ペスト感染が疑われ、直ちに隔離され、治療を受けられる病院へと紹介されました。
 10月11日に国内で実施された喀痰の迅速診断検査は弱陽性でした。それ以来、WHOのペストの標準検査機関(WHO reference laboratory)による確認が完了するまで、彼は肺ペストに感染した可能性の高い症例として扱われています。検体は、確定のためフランス、パリのパスツール研究所に送られています。抗生剤治療が完了するまで、患者は引き続き病院に隔離されます。患者は、現在症状はなく、安定した状態にあります。
 2017年10月9日から11日にかけて、8人の接触者が軽度の症状を呈し、隔離されました。この可能性の高い感染例と疫学的に無関係な2人の疑い例が、特定され隔離され、治療を受けています。
 合計10の検体が、可能性の高い感染例(34歳男性)とその接触者、そして2人の疑い例から採取され、検査のためにフランスのパスツール研究所に送られているところです。
 10月13日は、搭乗機の乗客41人と乗員7人、近親者12人と可能性の高い感染例が受診した保健センターのスタッフと患者18人を含む320人を超える接触者に対する健康監視の最後の日でした。発症予防ために、全員に予防服用の抗生剤が提供されました。
 さらに、接触者追跡によって特定された個人と接触した可能性のある子共577人と教師63人に、予防策として抗生剤が提供されました。このように、接触者追跡は徹底的になされました。
 現在、の濃厚接触者11人と、可能性の高い感染例との接触はないが最近マダガスカルから到着したの外国籍1人のみが、予防策として入院しており、呼吸不全の徴候を呈していませんが、治療のため病院に留まることになります。

公衆衛生上の取り組み

 危機緊急委員会(Crisis Emergency Committee)が10月10日に立ち上げられ、以後、サーベイランス、接触者追跡、症例管理、隔離及び物品の供給を調整するため、毎日会議が開かれていました。

 ホットラインは10月12日に復活しました。

 政府は、委員会の介入をサポートするために臨時隔離病棟の設置、(一方で既存の病棟の拡充)、主要な物品の調達、接触者追跡と次週の接触者追跡要員のための拡大研修などに予算を配分しています。

 セーシェル航空のマダガスカル便は、マダガスカルからの更なる感染例の輸入の可能性を減らすために、10月8日から運行中止となりました。

 WHOは、現在入手可能な情報から渡航と貿易の制限を推奨していません。

 2017年10月10日、マダガスカル保健省は、WHOからの支援を得て、国際的な拡散を防ぐためにアンタナナリヴォ(Antananarivo)の国際空港における出国時スクリーニングを実施しました。WHOとパートナーのさらなる支援により、国際的な拡大を回避するための入国地点における対策強化が計画されています。

 WHOは、現在の状況への対応として、WHOの国レベルの事務所(country office)と公衆衛生省を支援するために、3人の疫学者と1人のリスク・コミュニケーションの専門家を派遣しました。

WHOによるリスク評価

 ペストはエルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)という、通常小さなほ乳類やそれらの動物に付くノミに見いだされる人獣共通感染を起こす細菌によって起きる感染症です。ノミによって動物間で感染伝播します。ヒトは感染ノミに咬まれるか、感染動物への直接接触、吸入によって汚染されます。

 ペストには感染経路により3つの形態があります。腺ペスト、敗血症型ペスト、肺ペストです。
 肺ペストは最も病原性が強いペストの病型で、飛沫によりヒトからヒトへと深刻な感染を引き起こす可能性があります。潜伏期間は24時間以内まで短くなります。典型的には、肺ペストの病型は進行した腺ペストが肺まで広がったものです。しかし二次性の肺ペスト患者はエアロゾル化した感染飛沫を形成し、飛沫感染によりペストを他のヒトへ感染させます。未治療の肺ペストは通常致死的です。

 ペストはセーシェルにおいてかつて一度も報告されたことはなく、現段階において、厳密には確定された患者はいません。上述の症例は、パリのパスツール研究所において実施される検査の結果に従って最終的に類別がなされるまでは、ペストの可能性が高い症例として考慮されています。
 セーシェル政府は、強化されたサーベイランス、隔離、疑い例への治療、接触者追跡と接触の可能性のある者への予防的治療を含む予防対策を確立しました。
 セーシェルで件の患者が確定診断されたとしてもさらに拡大するリスクは低く、地域全体及び世界レベルでのリスクは極めて低いと考えられます。

WHOからの旅行アドバイス

 現段階では、セーシェルにおいて国際旅行者がペストとの接触に至るリスクは非常に低いです。WHOは、入手可能な情報に基づいて、セーシェル又はマダガスカルへの渡航や貿易のいかなる制限を推奨しません。
 2017年10月3日、マダガスカルにおけるペストのアウトブレイクに関連して国際旅行者のためのアドバイスを公表しましたが、それはセーシェルへの旅行者にとっても従うべきものです。

Plague - Madagascar
国際旅行者のための情報

 10月11日、保健省はそのウェブサイト上のプレスリリースにおいて、肺ペストに対するいくつかの対策を発表しました。これらの対策の多くは国際的な交通を著しく阻害するものであるため、10月13日保健省は、国際保健機側(IHR,2005)の43.3条項によって求められていることが、これらの対策の科学的な実証と公衆衛生上の根拠を提供するであろうとWHOに通知しました。

Measures reinforced to contain pneumonic plague
 セーシェル共和国保健省

International Health Regulations (2005)

予防対策を含むペストに関するさらなる情報について、WHOのペストのウェブサイトをご覧下さい。

Ÿ ・Plague

【出典】 Emergencies preparedness, response
     Seychelles
     Disease outbreak news  15 October 2017
     http://www.who.int/csr/don/15-october-2017-plague-seychelles/en/